「野次」の意味は?
野次(やじ)は、日常的に用いられる熟語です。一般的には、あまりポジティブな意味で用いられる言葉ではなく、ネガティブなニュアンスを含んでいるといえます。
ここでは「野次」という熟語の意味や「怒号」との違いについて解説。ネガティブな言葉は正しい意味を理解して使用しなければ、相手に対して失礼な表現になり得るため、本章で確認しておきましょう。
「野次」とは読んで字のごとく「やじること」
「野次」の意味は、読んで字のごとく「相手をやじること」を表した言葉です。やじるとは、大声で非難したり、からかったりする行為のことです。やじるという行為そのものや、相手に投げかける言葉のことを「野次」と表現します。また、「野次馬」の略として「野次」というケースも。
やじ・る
出典:小学館 デジタル大辞泉
[動ラ五(四)]《名詞「野次」の動詞化》他人の言動に、大声で非難やひやかしの言葉を浴びせかける。「演説者を口ぎたなく—・る」
「怒号」との違いは?
野次と同じように、相手に対して大声をあげることを「怒号」と表現することもあります。一見すると似た意味に感じられる「野次」ですが、両者は意味が異なります。怒号とは、相手に対して、怒りを込めて言葉をぶつける行為のこと。不満や反発を表現する言い回しです。
特定の行動に対する強い怒りや不満をぶつける怒号に対して、野次は「からかい」のニュアンスが強い表現といえるでしょう。
ど‐ごう
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 怒って、大声でどなること。また、その声。「議場に—がとびかう」
2 風や波が荒れて激しい音をたてること。
「脚下数十丈の深きに、海水衝盪—せり」〈中村訳・西国立志編〉
「野次」に関連する言葉
「野次」と関連深い言葉としては、野次馬や野次を飛ばす、野次馬根性などが挙げられます。いずれも「野次」と非常に似た意味を持っており、あまりポジティブな意味ではないといえるでしょう。
ここでは野次に関連する3つの言葉について、それぞれ解説。日常で使用する際の参考にしてください。

野次馬
野次馬は、「野次」とは読んで字のごとく「やじること」という章で解説したように「野次」のもととなった言葉です。自分とは無関係な出来事であるにもかかわらず、興味本位で騒ぎ立てる様子を表しています。また、このような心理から見物する行動を指す言葉です。
俗説としては「やんちゃ馬」や「おやじ馬」の略という説もあり、このことから、上記の他にも「父馬」や年老いたオスの馬という意味でも用いられます。また、気性の激しい馬を指す言葉とも。一般的には前者の意味で使われることが多いでしょう。
野次を飛ばす
野次を飛ばすとは、やじる・からかう行為のことを指す言葉です。単に「野次」と使う場合は、からかう言葉そのものを指すこともあります。しかし「野次を飛ばす」の場合は、言葉そのものではなく、発言する行為を指すケースがほとんどといえるでしょう。野次を飛ばすと似た意味を持つ言葉には、冷やかす、ふざけるなどの言葉が挙げられます。
野次馬根性
野次馬根性とは、物見高い気質のことを指す言葉です。そして「物見高い」とは、何でも物珍しがって、見たがるさまのこと。好奇心が強いという意味で用いられることもあります。
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「野次」と似た意味を持つ言葉
「野次」と似た意味をもつ言葉には、以下の5つが挙げられます。
- バッシング
- 冷やかし
- 嘲笑
- 茶化し
- 揶揄
いずれの言葉も相手をからかう、冷やかす、罵倒するといった意味をもつ言葉です。そのため「野次」と同様に、使うシチュエーションには、十分に注意しなければなりません。また、それぞれの言葉は意味が似ているものの、ニュアンスにやや違いがある語句もあります。どのような点で異なるのかにも注目してみてください。

バッシング
バッシング(bashing)は、野次と同様に相手を攻撃する意味を持つ言葉です。しかし、バッシングは「相手を打ちのめすこと」「厳しく非難すること」といった意味で用いられます。からかったり冷やかしたりするよりも、悪意がこめられている印象を受ける言葉といえるでしょう。
また英語で「bussing」と書くバッシングの場合は、飲食店などで空になった食器を片付ける行為を指します。「野次」とは全く異なる意味を持つため、間違えないように注意してください。
冷やかし
野次と似た意味の言葉には、冗談などを言って相手をからかうことを意味する「冷やかし」という語句も挙げられます。「冷やかしを言う」のような使い方をする言葉です。
また、店頭で買うつもりがないにもかかわらず商品を見て回ることを「冷やかし」と表現することも。また、このような行動をする人自身を指す言葉として用いられるケースもあるでしょう。この場合は「素見(すけん)」と表現することもあります。
嘲笑
「嘲笑(ちょうしょう)」とは、相手のことを嘲(あざけ)り、笑うことを指す言葉です。たとえば「人の失敗を嘲笑する」といった使い方をします。嘲笑の類語として知られているのは、冷笑(れいしょう)や物笑いです。
また、自分自身のことを嘲笑する場合は「自嘲(じちょう)」と表現します。自分を「つまらぬもの」と卑下する言葉です。
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茶化す
「茶化す」とは、本来は真面目な話であるにもかかわらず、あえて冗談めかして、面白おかしく話すことを表した言葉です。「先生の話は、茶化さないで真剣に聞きましょう」などの使い方をします。
他には、だます/一杯食わせるといった意味で用いられることもあります。この場合は「化かす」と似た意味と認識するとわかりやすいでしょう。
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揶揄
揶揄(やゆ)とは、相手をからかうことやなぶることを意味する言葉です。「日本社会のありさまを揶揄した表現」といった使い方をします。同様の意味をもつ言葉には「嘲弄(ちょうろう)」があります。揶揄のおもな類語は、嘲(あざけ)りや愚弄(ぐろう)などです。
「野次」はネガティブ表現なので注意して使おう
「野次」は相手のことをからかったり、大声で非難したりする行為またはその言葉を指す語句です。野次の意味を深く理解するためのポイントは、非難のなかに「からかう」といったニュアンスが含まれていること。そのため、単に怒鳴りつける「怒号」とはニュアンスが異なるといえます。野次と関連した言葉には、野次馬や野次馬根性、野次を飛ばすといった表現も。ぜひこの機会に整理しておきましょう。
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