最後通牒の意味とは?
最後通牒(さいごつうちょう)とは、交渉が決裂しても構わないという態度で、相手に最終的な要求をすることです。最後とは「物事のいちばん後」、通牒とは「書面で通知すること」や「国際法上、国家の一方的意思表示を内容とする文書」を意味します。
なお、通牒の「牒」はあまり使い慣れない漢字かもしれません。元々は文字を書き表す札を指し、律令時代には公文書の形式のひとつとして使われました。現代では文書による通告や、通告に用いられる文書の意味で使われています。
さいご‐つうちょう〔‐ツウテフ〕
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 紛争当事国の一方が、平和的な外交交渉を打ち切って自国の最終的要求を相手国に提出し、それが一定期限内に受け入れられなければ自由行動をとることを述べた外交文書。
2 交渉の決裂も辞さないという態度で、相手に一方的に示す最終的な要求。「—をつきつける」

意味1. 外交文書のひとつとして
最後通牒は、紛争当事国の一方が平和的な外交交渉を打ち切って自国の最終的要求を相手国に提出し、一定期限内に要求が受け入れられないときは自由行動をとることを宣言する外交文書のことです。
平和的に当事国間の問題を解決するためには、話し合いを続けることが必要といえます。しかし、場合によっては話が平行線をたどり、いつまで経っても解決が見えないかもしれません。そのような場合には自国の要求を記した最後通牒を突きつけ、国交断絶や戦争も辞さない構えを見せることもあるといえるでしょう。
・関税引き下げの要求を記載した最後通牒を突きつけた
・このままでは我が国ばかり不利益を被るため、最後通牒を渡して国交断絶を辞さない意思を見せた
意味2. 決意を示す手段として
最後通牒は国際的な文書とは限りません。国と国との交渉以外においても、話し合いで解決ができないときは、交渉の決裂も辞さないという態度で相手に一方的に最終的な要求を示すことがあります。
ただし、外交文書以外で「最後通牒」という言葉を用いるときは、必ずしも文書を指すとは限りません。「最後通牒を突きつけた」といっても比喩的な意味で、実際には口頭で最終的な要求を主張することもあります。
・何度注意しても改善しないため、最後通牒を突きつけた
・今回の警告は最後通牒と理解してくださって構いません
最後通牒の言い換え表現
最後通牒の言い換えとして、次の表現を用いることがあります。
・最後通告
・最終通告
・最終警告
・最終通達
・最終案内
それぞれ類似する意味の言葉ですが、使用する場面やニュアンスが若干異なるといえます。例文を交えて、各表現の違いを見ていきましょう。

最後通告
最後とは「物事のいちばん後」、通告とは「相手方に決定事項や意向などを告げ知らせること」を意味するため、最後通告も最後通牒と同じく、相手との関係を断ち切ってもいいという強い意志を示す際に使われる傾向にあります。
また通告は、文書などで正式に告げ知らせることを指すことが一般的です。言葉だけでなく書面でも相手に決定事項や意向を告げるときに使うとよいでしょう。
・何度も注意したが無断欠勤が減らないため、解雇の最後通告をした
・約束を守らないなら二度と会わない。これは最後通告よ
最後通告を相手が受け入れない場合は、国家間なら断交、個人間ならば断絶や法的手続きに進むことも。なお、最後通牒と同じく最後通告も、本来は相手にプレッシャーをかけることが目的といえます。相手が適切な対応をとらないときに最後通牒・最後通告を実施し、こちらからの要求に真摯に対応するように迫ります。
最終通告
最後通告の「最後」を「最終」に置き換えて、最終通告とも表現できます。最終とは「いちばん終わり」のことで、最後と同じ意味で使われることもある言葉です。
・彼女はすぐに「最終通告よ」というが、実現したことはない
・家賃の滞納が3か月を超えたため、最終通告を出すことにした
なお、「最終」は「最後」の意味でも使われますが、その日の最後に運行されるバスや電車、飛行機などを指すこともあります。
・今から急げば最終電車に間に合うよ
・最終に乗って帰宅する生活が続いている。ライフワークバランスをとれる職場に転職したい
最終警告
警告とは、よくない事態が生じそうなときに気をつけるよう、告げ知らせることです。何度も警告しても相手が注意をしない場合は、「これで終わり」の意味を込めて、最終警告をすることがあります。
・何度も注意したけど、まだその悪い癖を直さないんだね。これは最終警告だよ
・最終警告です。花を盗まないでください。次に盗んだ場合は、防犯カメラを警察に提出するので注意してください
警告は柔道用語としても使われることがあります。禁止事項を犯したり、2度目の「注意」を与えたりするときは、主審が警告を宣告します。

最終通達
通達とは、告げ知らせることを意味する言葉です。特に行政官庁が、その所掌事務について所管の機関や職員に文書で通知するときに使われます。また、通達が記載された文書を指して、通達と表現することもあります。
話し合いでの解決が難しいときや、何らかの事情で相手にこちらの要求を一方的に伝えるときは、最終通達を実施する必要があるかもしれません。例文から、最終通達の使い方を見ていきましょう。
・出向中の社員に何度も報告書を提出するように要求しているが、一向に送られてくる気配がない。そのため、相応のペナルティを記載した最終通達を出した
・敷地内に勝手に立ち入らないでください。これは最終通達です
最終案内
案内とは、道や場所を知らない人を導くことやある地域を見せて歩くこと、取り次ぐこと、事情や様子などを知らせることなどの意味を持つ言葉です。「最終案内」というときは、「最終的な事情や様子などを知らせること」などの意味で使われるといえるでしょう。
・デパートから「セール価格は今週末で終わる」との最終案内が届いた
・ディベロッパーからの最終案内によれば、駅前に建つマンションの平均価格は1戸あたり1億円だ
最後通牒は切り札! 使用する場面を見極めよう
最後通牒は、相手との関係を絶つ気持ちで突きつける要求のことです。
最後通牒を出しつつも交渉の余地を残している場合は、相手にプレッシャーを与えられず、こちら側の要求も受け入れられない恐れがあります。最後通牒が切り札であることを押さえ、使用する際は場面を見極めましょう。
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