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「言わなくても伝わる」と思うような場面は少なくありません。しかし、思いを明確に伝えることが必要なときもあります。「意思表示」は、そうした“伝えること”にまつわる大切な考え方を含む言葉です。今回は、「意思表示」に込められた意味と使い方をたどってみましょう。
「意思表示」とは? 基本の意味をやさしく整理
多くの人が一度は見聞きしたことのある「意思表示」という言葉。けれど、改めてその意味を問われると、少しあいまいな部分もあるかもしれません。ここでは辞書で説明されている意味をもとに、ニュアンスを明確にしていきます。

「意思表示」の意味と定義
「意思表示」という言葉には、日常的な使い方と、法律に関わる意味の両方があります。まずは辞書から、その定義を確認してみましょう。
いし‐ひょうじ〔‐ヘウジ〕【意思表示】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名](スル)
1 自分の意思を相手に示すこと。「反対を―する」
2 契約の申し込み・承諾・解除や遺言など、権利・義務に関する法律上の効果を生じさせるために、その意思を外部に表示する行為。
日常の中では、自分の考えや意見を、言葉や行動で相手に伝えることを「意思表示」と呼びます。言葉で伝える場合もあれば、表情や身振りなど、言葉以外のサインによって意思が示されることもあります。どちらの場合も、「相手に伝えたい」という意思が含まれているのが特徴です。
「意思表示をする」とはどんな行動?
「意思表示」は、はっきりと発言することだけを指すわけではありません。「私はこう考えています」と口に出すのはもちろんのこと、静かに首を振ることや、一歩引くような動きでも、相手に意思が伝わる場合があります。
例えば、会議で「この案に賛成です」と発言したり、誘いに対して「今回は遠慮します」と答えたりするのも意思表示の一つです。また、言葉を使いにくい場面で、うなずいたり目をそらしたりする反応にも、その人なりの気持ちが込められていると受け取られることがあるでしょう。
相手とのやりとりの中で、ふとした瞬間ににじみ出るものも、立派な意思表示といえるのかもしれません。
例文でつかむ「意思表示」の感覚
「意思表示」という言葉は少し堅く感じられるかもしれませんが、実際には日常の中でよく使われている行動のひとつです。ここでは、例文を通してそのニュアンスや温度感をつかんでみましょう。
例文:「彼は明確に意思表示してくれたから安心した」
この言葉には、自分の考えをしっかり伝えてくれたことで、まわりが状況を把握しやすくなったという安心感がにじんでいます。気持ちを共有することで、物事がスムーズに進みやすくなる場面といえるかもしれません。
例文:「意思表示がないと、気持ちが伝わりにくいよね」
この一言には、「わかっているつもり」では伝わらないもどかしさが感じられます。黙っているだけでは誤解されることもあるからこそ、どんな形でも少しずつ伝える姿勢が大切だという気づきにつながるかもしれませんね。
場面別に見る「意思表示」の使い方
「意思表示」は日常のあらゆる場面に潜んでいます。どのような場面で、どのように表れるのでしょうか。恋愛や仕事、人との関わりの中での違いを見てみましょう。
恋愛における意思表示
「また会いたい」と素直に伝えたり、いつもより丁寧なLINEを送ったり。そんなちょっとした行動にも気持ちはにじみ出るものです。言葉にせずとも何かを伝えたいという姿勢が、安心や信頼につながることもあります。

仕事における意思表示
職場では、誤解を避けるためにも意思表示がとても重要になります。例えば会議で意見を述べたり、メールで自分の立場を示したり。丁寧な表現を心がけながら、自分の考えを伝えることで、仕事の進め方がスムーズになることもあるでしょう。
人間関係での意思表示が苦手な人との接し方
中には、自分の気持ちを言葉にするのが得意ではない人もいます。そんなときは、すぐに答えを求めずに少し時間を置くことが、思いやりにつながるのかもしれません。沈黙の中にも、その人なりの意思がにじみ出てくる場面もあるのではないでしょうか。
類語や言い換え表現も知っておこう
「意思表示」という言葉には、少し堅めの印象があるかもしれません。伝える相手や場面によっては、もう少しやわらかい表現を選ぶことで、気持ちが伝わりやすくなることもあります。
表明
「表明」は、自分の考えや立場、決意などを明確に伝えるときに使われます。例えば「意思を表明する」といった形で、公の場や文章の中でも用いられることがあります。
気持ちを伝える
もっと日常的で親しみのある言い回しとして使えます。相手に寄り添うようなトーンがあり、「伝えること自体に意味がある」という気持ちも込めやすくなります。
意思通知
「意思通知」は、主に法律的な文脈で使われる表現です。例えば契約の解除や請求など、一定の効果を持たせるために、相手に意図を正式に伝える行為を指します。日常会話よりは、専門的な場面で使われることが多いでしょう。
英語ではどう表現される?
英語にも「意思表示」を表す言葉は多くあります。ここでは2つ紹介しましょう。

“an expression of one’s intentions”
“an expression of one’s intentions”は、「自分の意図や考えを言葉にして伝える」という意味です。丁寧で落ち着いた印象があり、ビジネスやフォーマルな場面でも違和感なく使うことができます。
“a declaration of intent”
“a declaration of intent”は、やや法律的な文脈で使われる表現です。契約や申し出など、何らかの意思をはっきりと示す必要がある場面で選ばれることが多いでしょう。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「意思表示カード」って何?
「意思表示カード」は、本人が自らの意思を直接伝えられない状況で、その意向を周囲に示すための手段です。特に医療や福祉の分野で活用されています。
例えば、急な病気や事故で延命治療が必要になった際、事前に「延命治療に関する意思表示カード」を用意しておくことで、自分の希望が医療従事者に伝わりやすくなるでしょう。
また、発語が難しい方が自分の気持ちや要求を伝える手段として、イラストや写真を用いたカードが使用されることもあるでしょう。
最後に
「意思表示」は、ただの言葉のやりとりにとどまらず、人と人との間にある信頼や思いやりに通じるものかもしれません。
はっきり伝えることが難しいときもありますが、少しずつでも伝えようとする姿勢が、周囲との関係をゆっくりと築いていく手がかりになるように思われます。焦らず、自分なりの方法で向き合ってみてはいかがでしょうか。
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