「足を洗う」という表現は日常会話の中で使われることがありますが、語源を知っているの人は少ないのではないでしょうか? この機会に正しい意味を確認し、成り立ちと適切な使い方について学んでいきましょう。
足を洗うとは? 意味や語源をわかりやすく解説
まずは「足を洗う」の意味と語源を確認していきましょう。
「足を洗う」の意味とは?
「足を洗う」という表現は、辞書では次のように定義されています。
足(あし)を洗(あら)・う
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
悪い仲間から離れる。好ましくない生活をやめる。職業・仕事をやめる場合にも用いる。「やくざな稼業から―・う」
もともとは、不適切な環境や望ましくない習慣を断ち切ることを意味する言葉ですが、現在では必ずしも悪いことをやめる場合に限らず、人生の大きな転機を表す際にも使われることがあります。

足を洗うの語源は?
この表現の語源には諸説あります。一説には、大坂・新町の遊女が身請けされる際や年季を終えて郭を出る際に、東西両門の外にある井戸で足を洗ったことに由来するというもの。
もう一つの説としては、インドで托鉢僧が裸足で各地を巡り、庵に戻ると足を洗ってから法談を行ったからというものなどがあります。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「足を洗う」の使い方と具体的な例文
「足を洗う」は、単に何かをやめるという意味ではなく、過去の関係を断ち切り、新たな道を歩むことを表す言葉です。適切な場面で用いることで、言葉の持つ力をより効果的に生かすことができるでしょう。
「もう夜遊びからは足を洗った」
以前は頻繁に夜遊びをしていた人が、結婚や仕事の都合などで生活スタイルを変える際に使われる表現です。単に遊びを控えるというよりも、意識的に習慣を改めたことを強調するニュアンスがあります。
「彼は営業の仕事から足を洗って、IT業界に挑戦している」
長年続けていた仕事を辞め、新しい分野へ進む場合に使われます。特に、業種が大きく変わる場合に適している表現です。

「彼は裏の仕事から足を洗い、まっとうな職に就いた」
これまで関わっていた環境を完全に断ち切り、新しい人生を歩み始める場面で使われます。過去の選択から離れ、社会的に安定した生活を目指すことを強調する際に用いられますよ。
「足を洗う」の類語や言い換え表現は?
状況によっては「足を洗う」ではなく、別の言葉に置き換えた方が伝わりやすい場合があります。特に、フォーマルな場面やビジネスの文脈では、より適切な表現を選ぶことで、意図が正しく伝わるでしょう。ここでは類語や言い換え表現を紹介します。
足抜け
「足抜け」は、よくない仕事や悪い仲間から離れることを意味します。特に、裏社会からの離脱を意味することが多いでしょう。そのため、一般的な日常会話ではあまり使われないかもしれません。小説や映画のセリフなどではよく見聞きしますね。
手を引く
「手を引く」は、続いていた関係を断ち切るという意味を持ちます。ビジネスの場面では、「その事業から手を引く」というように、関与していたプロジェクトや取引から撤退する際に使われることが多いでしょう。
人間関係においても、何らかの関与を終える場面で用いることができます。
身を退く(みをひく)
「身を退く」は、これまでの立場や役職を辞することを意味します。特に、ビジネスシーンでは、「第一線から身を退く」というように、責任のある立場から退く際に使われますね。
足を洗うの英語表現は?
ここでは、「足を洗う」に対応する英語表現を紹介しましょう。

wash one’s hands of
“wash one’s hands of”は、「足を洗う」だったり「関係を断つ」という意味で使われます。
例文:”I’ve decided to wash my hands of that business deal.”
(私はその取引から手を引くことにした。)
kick
“kick”は、特に麻薬やタバコ、悪習を断ち切る際に使われる表現です。「kick the habit(習慣をやめる)」のように使われ、依存性のあるものから離れることを意味します。カジュアルな表現のため、フォーマルな場面では別の表現を選ぶ方が適切です。
例文:”He finally managed to kick his smoking habit.”
(彼はついに喫煙の習慣から足を洗った。)
最後に
「足を洗う」という表現には、過去の関係や習慣を断ち切り、新たな人生を歩むというニュアンスがあります。正しい使い方を理解し、日常生活の中で活用してください。
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