巧言令色とは?
巧言令色は「こうげんれいしょく」と読みます。ここでは、巧言令色の意味や言葉の由来を解説します。
言葉の意味
巧言令色は、口先だけでうまいことをいったり、うわべだけ愛想よく取り繕ったりするという意味です。「巧言」は相手が気に入るように巧みに飾られた言葉という意味で、「令色」は媚びへつらった顔つきという意味があります。
相手に気に入られようとして作り笑顔をしながら、心にもないお世辞をいう様子を表しています。
こうげん‐れいしょく〔カウゲン‐〕【巧言令色】
出典:小学館 デジタル大辞泉
言葉を飾り、心にもなく顔つきを和らげて、人にこびへつらうこと。
「—ならざるを愛し」〈織田訳・花柳春話〉
論語の「巧言令色鮮し仁」が由来
巧言令色は、中国の古典「論語」に出てくる孔子の言葉「巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」が由来とされています。
巧みな言葉を用い、表情を取り繕って相手に気に入られようとする者には、思いやりの心が欠けているという意味合いです。
巧言令色の使い方・例文
ここでは、巧言令色の例文を紹介します。文脈を通して、巧言令色の意味を押さえましょう。
・彼は会う人ごとに褒め言葉を並べるが、陰では違うことをいっている。巧言令色とはこのことだ
・巧言令色を見極めないと、騙されてしまうかもしれないから気をつけなさい
・世の中をうまく渡っていくためには、ある程度の巧言令色が必要なのかもしれない
・彼の言葉には真心が伝わってこない。どうしても巧言令色に感じてしまう
巧言令色の類義語・言い換え表現
巧言令色には、次のような類義語・言い換え表現があげられます。
・美辞麗句(びじれいく)
・舌先三寸(したさきさんずん)
いずれも、巧言令色と同じく、口先だけで心にもないことをいっている様子を表しています。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
美辞麗句
美辞麗句とは、うわべだけ飾った真実味のない言葉を指します。「美辞」は美しい言葉という意味で、「麗句」は美しい語句という意味です。同じような意味を重ねて強調しています。
「美しい言葉」という文字の並びだけをみれば、ポジティブな意味にとれるかもしれません。しかし、本心ではないうわべの言葉というニュアンスがあり、皮肉の意味が込められているケースが多いです。
(例文)
・彼はいつも美辞麗句を並べていて、あまり信用できない
・彼女は美辞麗句をどれだけ並べられても、相手の話にのることはなかった
舌先三寸
舌先三寸とは、うわべだけの言葉で、心のこもっていないことを指します。「口先三寸」と間違えやすいため、注意しましょう。「三寸」は長さが短いという意味で、短いのは「舌」のことです。
三寸は10センチほどで下の長さとしては決して短くはありませんが、具体的な長さにはとくに意味がなく、短さや薄さを表すたとえとして使われています。
(例文)
・彼は口がうまく、舌先三寸で大勢の人を騙してきた
・舌先三寸の営業トークをまともに聞いていると、高い買い物をしてしまうよ
巧言令色の対義語
巧言令色には、次のような対義語も。
・質実剛健(しつじつごうけん)
・剛毅木訥(ごうきぼくとつ)
うわべだけで取り繕う巧言令色に対し、どちらも飾り気のない様子を表す言葉です。それぞれの内容を解説します。
質実剛健
「質実剛健」とは、心身ともに強く、充実感にあふれているという意味です。「質実」は飾り気がなくまじめなことを表し、「剛健」は心や体が強くたくましい様子を指します。
うわべだけ愛想よくふるまう巧言令色とは、反対の意味になる言葉といえるでしょう。
(例文)
・彼は質実剛健な気質があり、周囲から信頼されている
・質実剛健は多くの人が理想の姿と考えており、座右の銘にしている人もたくさんいる
剛毅木訥
剛毅木訥とは、強い意志を持ち、無口で飾り気のないことを指す言葉です。「剛毅」は意志が強いという意味で、「木訥」には飾り気がなく無口という意味があります。
論語に出てくる「巧言令色鮮し仁」に対する言葉であり、「剛毅木訥、仁に近し」という言葉を語源としています。「巧言令色」には仁(思いやりのある心)がないが、「剛毅木訥」である人物は仁があるという意味合いです。
うわべを飾る巧言令色に比べて「剛毅木訥」は無口で地味にみえるかもしれないが、中身はしっかりしており、美徳のひとつだとしています。
(例文)
・彼は口数は少なくて地味にみえるが、いつも真面目で仕事熱心である。まさしく剛毅木訥の人物といえるだろう
・結婚相手は、口がうまいだけの巧言令色な人物ではなく、剛毅木訥な人を選ぶようにしたいと思っている
巧言令色はうわべだけを取り繕うこと
巧言令色は、相手に気に入られるため、うわべだけを取り繕うことです。語源となった論語において、孔子はそのような人物を仁(思いやりの心)がないと論じています。
語源と同じく、「巧言令色鮮し仁」という言葉で使われることも少なくありません。「剛毅木訥、仁に近し」という、対義語にあたる言葉と一緒に覚えておくとよいでしょう。
巧言令色の類義語として、美辞麗句や舌先三寸という言葉があります。どれも、言葉はいいが心がこもっていないという意味です。あわせて確認しておけば、巧言令色の理解が深まるはずです。
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