内示とは
人事異動の時期になると、気になるのが「内示」でしょう。特に、大規模な異動があるとわかっている時期や、自分に異動の可能性がある時は、「もしかしたら今日、内示があるかもしれない」とドキドキしませんか?
今回は、この「内示」について紹介します。意味や似ている言葉の他に、内示を断れるかどうかにも触れますので、ぜひチェックしてください。まずは、内示の意味をあらためて見ていきましょう。
意味をあらためて確認
「内示」を辞書で調べました。
【内示】読み方:ないじ
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
[名](スル)《「ないし」とも》非公式に通知すること。「—を受ける」「昇進を—する」
内示とは、情報を公表する前に、当事者にのみそれを伝えることを指します。ビジネスシーンでは、人事異動に関連することで使うことがほとんどです。
人事異動の内示は、配置転換や昇格、昇進、転勤などを公表する前に、本人や一部の人にのみ内容を伝えます。正式発表の前段階として、内示を行う企業が多いでしょう。
内示は企業の義務?
実は、内示は義務ではありません。そのような法律は存在しないからです。しかし、引継ぎや転居などの準備、取引先への配慮などが必要になるため、内示をする企業が多いでしょう。全社員ではなく、役職者の異動のみ内示というパターンもありますよね。
内示の時期やタイミングは、企業や状況により異なります。正式発表の〇日前と定めている企業もあれば、決まりはないが、準備などの関係で余裕を持って行うという企業もあるでしょう。
引越しを伴う異動の場合は、住居を探すなどの準備が必要になるため、通常よりも早い段階で伝達することがほとんどです。
内示という言葉の使い方
内示という言葉の使い方を見ていきましょう。例文を用いて紹介しますので、参考にしてください。
例文を紹介
《例文》
・今日、部長から内示があって、福岡支社に異動することになったよ
・念願の昇進を内示された時、うれしくて泣きそうになりました
・配置転換の内示を受けてから、内容に納得できず悶々としています
内示を使う際は、「内示がある」「内示する(される)」「内示を受ける」のような言い方をすることが多いです。内示で一喜一憂するのは、会社員の宿命といえるでしょう。
内示と似ている言葉
内示には、似ている言葉がたくさんありますよね。漢字表記や読み方も似ているため、混同しやすいかもしれません。それぞれの意味を見ていきましょう。
「内定」
「内定」とは、正式発表の前に内々で定まることや、その決定を指します。その企業に採用されることや、昇進、役職就任などが決まった状態で、当事者に内々に伝えることを表す際に用いられています。
内定は「決まったことを伝える」ために行います。内示は異動準備のために行いますので、その点が違いになるでしょう。
「辞令」「発令」
役職などの任免や配置転換、昇進や採用などがあった場合、その旨を書いて本人に渡す文書が「辞令」です。辞令は、企業の公式文書に位置付けられています。
「発令」は、辞令や指示を公式に示すこと。辞令の正式発表は、発令を行う日になり、「辞令を発令する」のように表現します。
「辞令」「発令」ともに、人事異動に関連することを表しますが、内示とは意味が異なります。
内示を受けたら?
ここからは内示を受けた場合、何に注意し、何をしなければならないかを紹介します。特に最初に挙げる「他言無用」は、必ず守るようにしてください。
他言無用を徹底
内示を受けたら、誰かに話したくなるかもしれません。しかし、正式発表前に周りに伝えるのはNG。他言無用を徹底します。
内示は、会社の正式発表ではありません。内示後、内容が変更される可能性もあるのです。また、正式発表前に情報が漏れると、混乱を招いてしまうということもあります。場合によっては、情報を漏らしたことを追求されるかもしれません。
「内緒だと念押ししたのに情報が漏れてしまった」ということにならないよう、注意したいですね。
引継ぎの準備を進める
内示を受けたら、可能な範囲で引継ぎの準備を進めましょう。デスクなどの整理や引継ぎ書の作成などを静かに進めます。取引先への挨拶の準備も、できることから取り組みましょう。ただし、内示の段階であることを忘れてはいけません。他の社員に気付かれることがないよう、配慮してください。
引越しを伴う場合は、転居の準備も
引越しを伴う異動の場合は、転居の準備もはじめます。転居先の住居をどうするか、家族がいる場合は一緒に引越しをするのかどうかなども決めなければなりません。引越しに伴い、発生する手続きが複数ありますので、そのことも調べておきたいですね。
引越しを伴う場合、想定以上の時間や労力がかかることが多いです。特に、遠方地への引越しは、予定通り進まないかもしれません。それを踏まえ、計画性を持って手続きを進めていきましょう。
情報収集
配置転換の内示を受けたら、異動先の情報収集をしていくといいですね。業務の内容や雰囲気などをさりげなくリサーチし、必要な情報を確実に得ておきましょう。
内示を断りたい場合は?
受けた内示を断りたい…。異動の内容によっては、そう考えることもあるでしょう。正式発表前とはいえ、内示を断ることはできるのでしょうか?
理由を明確に
内示は、非公式の通知です。それもあり、内示は断れると考える人もいるでしょう。内示を断れるかどうかは、企業により異なります。内示を断ってもいいとする企業もありますが、多くの場合、内示を断れる可能性はかなり低いといえるでしょう。
特に、就業規則などに「異動や転勤を受け入れなくてはならない」と明記されている場合、特別な事情がある場合を除き、内示を拒否することはできません。
どうしても内示を断りたい場合は、内示のことを知っている上司に相談してみましょう。
理由によっては、内示を断ることができる
やむを得ない事情がある場合は、内示を断ることができます。たとえば、「介護を必要とする家族がいる」「重篤な疾病を抱える家族がいる」などは、やむを得ない事情とみなされ、内示を再考してくれることがあります。また、本人が深刻な体調不良を抱えている場合も、内示を断れるかもしれません。
また、次のケースは、内示を断ってもよいとされています。
・職種や勤務地などを限定しての採用なのに、転居を伴う異動が発生した(雇用契約書の内容と異なる)
・嫌がらせや報復行為といった、正当でない理由での異動(職権乱用とみなされる)
最後に
「内示」について紹介しました。内示があると、つい誰かに話したくなりますが、それはNG。うっかり話してトラブルになってしまったということがないよう、注意してください。
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益田瑛己子
ライター・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー。金融機関の営業職として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)として活動中。3人の子供が自立し、仕事と趣味を謳歌している。
ライター所属:京都メディアライン