「弱り目に祟り目」ということわざ、聞いたことはありますか? あまり馴染みのない方も多いかもしれませんが、意味を知ると、「そういう目に遭ったことがある!」という人もきっとたくさんいるはずです。本記事では、「弱り目に祟り目」の意味や使い方、類語を解説します。
「弱り目に祟り目」の意味
「弱り目に祟り目」は、「よわりめにたたりめ」と読みます。一体どんな意味でしょうか?
弱ったときに、さらに災難にあうこと。不運が重なること。泣き面に蜂。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
気持ちが弱っているときに、さらによくないことが起きることを「弱り目に祟り目」といいます。「弱り目」とは「弱った状態」。「祟り目」とは、災いに遭ったことを語呂を合わせていった言葉です。
使い方を例文でチェック!
悪いことが重なって起きることは、その時の運とも言えるものですから、誰にでも起こりうる可能性がありますよね。ここでは、日常生活からビジネスシーンにおける、「弱り目に祟り目」のケースを見ていきましょう。
1:風邪をひいた上に、つまずいて足を骨折してしまうなんて、弱り目に祟り目だよ。
病気をした上に、怪我までしてしまうという不運の連続は、まさに「弱り目に祟り目」ですね。ただでさえ困っているところに追い打ちをかけるように、不幸なことが重なるのは勘弁してほしい… というのが本音ではないでしょうか?
体が不調になると、気持ちまで落ち込んだり不安になったりするものですから、できることなら悪いことが重ならないように祈りたいですね。
2:旅行中、スリにあったり、パスポートをなくしたりして弱り目に祟り目だった。
旅先では、予測がつかないアクシデントが起きるもの。財布を盗まれてしまったり、大事なパスポートを無くしてしまったりと踏んだり蹴ったりですね。慣れない場所でのトラブルを避けるためにも、あらかじめ対策しておきたいものです。
3:会社で上司に叱られてから、お客様からもクレームの電話が入った。弱り目に祟り目とはこのことだよ。
ビジネスシーンでも、「弱り目に祟り目」が使われることがありますね。仕事で失敗して落ち込んでいるところに、さらなる追い打ちをかけるかのようによくない知らせが入る、といったことはたまに起こるのではないでしょうか。悪いことが重なると弱ってしまいますよね。
類語や言い換え表現は?
「弱り目に祟り目」と同じく、不運なことを意味する言葉は他にもあります。ここでは、「泣き面に蜂」「運の尽き」「梲が上がらない」などがあるので、意味を確認してみてください。
1:泣き面に蜂(なきつらにはち)
「泣き面に蜂」または、「泣きっ面に蜂」の意味を見ていくと、
泣いている顔をさらに蜂が刺す。不運や不幸が重なることのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
となります。痛がって泣いているところで、顔を蜂に刺されて、一層辛い思いをすることから、転じて、困っている上にさらに困ったことが加わることのたとえとして使われます。話し言葉としては、古くから「泣きっ面」と「っ」が入る形で用いられていたようです。
(例文)
・入試には落ちるし、けがはするし泣きっ面に蜂だ。
・上司に叱られるし、恋人にはフラれたし泣きっ面に蜂だよ。
2:運の尽き(うんのつき)
「運の尽き」の意味は以下の通りです。
命運が尽きて最後の時が来たこと。運の蹲(つくば)い。「ここで見つかったのが―」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
運がなくなって、これ以上どうしようもない状況まで追い込まれた時に、「ここで見つかったのが、運の尽き…」などといったりしますね。悪いことをして、警察に追いかけられている犯人などが口にするセリフとして使われることが多いでしょう。
(例文)
・「ここで捕まったのが、運の尽きだ、観念しろ!」
・ここで見つかったのが、運の尽き、もう諦めるしかないか。
3:踏んだり蹴ったり(ふんだりけったり)
「踏んだり蹴ったり」は話し言葉として馴染みのある表現ですよね。意味は以下の通りです。
重ね重ねひどい目にあうこと。「道は混むし雨には降られるし―だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
こちらも、ひどい目に遭った上に、さらに痛めつけられることを意味します。何度もつらい目に遭わされて勘弁してほしいと思った時に、「もう踏んだり蹴ったりだよ」ということも。「弱り目に祟り目」や「泣き面に蜂」よりも会話の中で使いやすい表現かもしれませんね。
(例文)
・電車の遅延のせいで会社には遅刻するし、取引先には怒られるし、踏んだり蹴ったりだよ。
・Aちゃんにはフラれるし、友達からはバカにされるし、踏んだり蹴ったりだよ。
4:梲が上がらない(うだつがあがらない)
「梲が上がらない」の意味は以下の通りです。
地位・生活などがよくならない。ぱっとしない。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
[補説]梲2を設けたのが物持ちの家だったからとも、「梲が上がる」が棟上げをする意の大工言葉から転じて志を得る意となったことからともいう。
「梲」とは、梁(はり)の上に立てて棟木を受ける短い柱のこと。いつも上司から押さえつけられて出世ができない、運が悪くて良い境遇に恵まれないなどの状態を「梲が上がらない」と表現します。
「弱り目に祟り目」のように、重ねて不幸が起きるという意味ではありませんが、不運なことを意味する類語として覚えてみてください。
(例文)
・彼は気のいい男だが、まったく梲が上がらない。
・この会社にいては、一生梲が上がらないよ。
最後に
「弱り目に祟り目」とは、「弱ったときに、さらに災難にあうこと」。重ねて災難に遭うことはそんなに多くはないかもしれませんが、人生の長い時間の中では幾度かそんな事態に見舞われることもあるでしょう。そんなときは、悪いこともあればいいこともあると思って、不運な時期を乗り越えたいですね。
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