「鯉の滝登り」ということわざ、聞いたことはありますか? あまり馴染みがなく、使ったことがないという方も多いかもしれませんが、実はビジネスシーンで使うこともできる言葉なんですよ。そこで本記事では、「鯉の滝登り」の意味や使い方、「うなぎのぼり」などの類語を解説します。
「鯉の滝登り」の意味
「鯉の滝登り」の読み方は、「こいのたきのぼり」。意味を辞書で確認してみると、
1 鯉が滝をのぼること。また、勢いのよいことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 《黄河の上流にある滝、竜門を登ることのできた鯉は竜になるという「後漢書」党錮伝の故事から》立身出世することのたとえ。
と記載されています。「勢いがいいこと」と「立身出世すること」という2つの意味があるようですね。事業に成功して出世を果たした人や、学業で良い成績を残した時などに、「鯉の滝登りのようだ」と表現することができます。
由来
「鯉の滝登り」の由来は、中国の歴史書『後漢書』より。黄河の上流にある竜門という滝を登ろうと多くの魚が試みたが、わずかな魚だけが登り龍になることができたという故事によるものとされています。
日本では、古くから縁起のいいモチーフとして「鯉の滝登り」を描いた掛け軸を飾る風習があります。立身出世の他にも、商売繁盛や金運上昇などのご利益も含まれているのだとか。この「鯉の滝登り」の図柄から、5月の節句飾りとして有名な、「鯉のぼり」が生まれたという説もあるようです。
使い方を例文でチェック!
立身出世を意味する「鯉の滝登り」は、学業やビジネスシーンで使われることが多いでしょう。代表的な例を一緒にチェックしていきましょう。
1:我が社の優秀な社員である斉藤さんは、まるで鯉の滝登りのように出世している。
「鯉の滝登り」は、多くの場合「鯉の滝登りのように出世している」というように使われます。数々の難しい課題を乗り越えて昇進していく姿は、傍目から見ても「勢いがあるな」「実力を発揮しているな」と感じるはず。基本的に、前向きでポジティブな意味として用いられます。
2:そのベンチャー企業は、鯉の滝登りのごとく急成長している。
AI技術などでイノベーションを生み出すベンチャー企業は、まさに鯉の滝登りのように勢いに乗っている会社もあるのではないでしょうか? 各界から注目され、将来的に大企業へと発展する可能性もありえますね。
3:兄は、全国模試でどんどん成績が上がっている。まるで鯉の滝登りみたいだね。
資格の試験や全国模試などの学問の分野でも、「鯉の滝登り」が使われます。試験を受けるたびに点数が高くなり、順位が上がってくるとやる気もみなぎりますよね。どんな逆境にも負けない姿は、鯉が滝を登る姿にも重なるところがあるでしょう。
「及ばぬ鯉の滝登り」ということわざも!
「鯉の滝登り」とは別に、「及ばぬ鯉の滝登り」ということわざがあるのをご存知ですか? 「鯉」を「恋」にかけて、成就しない恋愛を指す言葉なのだとか。多くは、身分などが釣り合わず、叶う望みのない恋のことを表し「及ばぬ鯉の滝登りだというのに困ったものだね…」というように使います。
江戸時代の川柳の句集『柳多留(やなぎだる)』に見られることから、古くからある洒落言葉のようですね。
類語や言い換え表現は?
「鯉の滝登り」の類語には、同じ魚に関連した「うなぎのぼり」や、由来が似ている「登竜門」などがあります。詳しく意味をチェックしてみてください。
1:うなぎのぼり
「うなぎのぼり」を会話の中で耳にしたことがある方も多いのでは? 「鯉の滝登り」と響きがよく似ていますがどのような意味でしょうか。
気温・物価・評価などが見る間に上がったり、物事の件数・回数が急激に増えたりすること。ウナギをつかもうとすると手からすべりぬけて上へのぼるからとも、ウナギが川をまっすぐにのぼる姿からともいう。「―の人気」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ビジネスシーンでは、会社の業績や商品の売り上げなどが一気に上がった時に使います。「最近、御社の売り上げはうなぎのぼりですね!」などと褒め言葉として使うこともできますよ。売上が好調で、勢いに乗っていることがすぐにわかる慣用句です。
(例文)
・W杯でゴールを決めたA選手の人気はうなぎのぼりだ。
・最近物価がうなぎのぼりで、スーパーでは主婦が悲鳴を上げている。
2:登竜門
「登竜門(とうりゅうもん)」の意味は以下の通りです。
《「竜門」は中国黄河の中流にある急流で、ここをさかのぼることのできる鯉(こい)は竜になるという「後漢書」李膺(りよう)伝の故事から》立身出世の関門。「芥川賞は文壇への―だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「登竜門」も、中国の『後漢書』に由来のある言葉です。立身出世を得るための重大な関門のことで、有名女優を輩出したオーディションや、漫画家デビューにつながる新人賞などが、代表的な「登竜門」と言えるでしょう。華々しいキャリアを築く道の入り口とも考えられますね。
(例文)
・歌手になるという夢を持っている弟は、人気オーディション番組への出演が決まった。
・その大学の法学部に入ることは、エリート弁護士になるための登竜門だ。
最後に
「鯉の滝登り」の由来が中国の故事にあり、現代の鯉のぼりにも通じているとは驚きでしたね。仕事で良い成績を残して勢いに乗っている時には、「鯉の滝登り」や「うなぎのぼり」などのことわざを使ってみてはいかがでしょうか?
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