「臭い物に蓋をする」とは?
「臭い物に蓋をする」と聞いて、意味がわかるという人は多いでしょう。よく知られているこの言葉は、悪事を隠そうとするたとえとして用いられることが多いです。本記事では、「臭い物に蓋をする」について、意味や使い方などをあらためて調べてみました。類語もあわせてチェックしてくださいね。
まずは意味から見ていきましょう。辞書で調べると、次のような意味があることがわかりました。
意味は
臭(くさ)い物(もの)に蓋(ふた)をする
読み方:くさいものにふたをする
悪事や醜聞などを、他に漏れないように一時しのぎに隠そうとするたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
臭いにおいを放つものがあったら、そのにおいを封じ込めようと蓋をすることがあるでしょう。しかし、悪臭の元を絶たない限り、そのにおいが消えることはありません。このことが転じて、悪い行いやよくない噂が他に漏れないよう、一時的にごまかそうとする態度を表すたとえとして使われています。
問題が生じているのに、それに向き合わず、周りにバレないよう隠してしまおうとするのはよくないという意味で用いられることが多い言葉です。
「臭い物に蓋をする」の使い方
ここからは「臭い物に蓋をする」の使い方を見ていきましょう。特徴や例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。
使い方の特徴
「臭い物に蓋をする」は、忠告や注意の際に用いられることが多い言葉です。問題に向き合うのを避けようとしたり、都合の悪い事実から目を背けようとしたりする人に対して、態度を改めるよう促す場合に、この言葉を用いることが多いでしょう。また、自虐の意味で使うこともあります。
「臭い物に蓋をするような」「臭い物に蓋をするかのように」「臭い物に蓋をするなんて」のような言い回しをすることが多いでしょう。
例文を紹介
ここからは例文を挙げて使い方を紹介します。
《例文1》彼女はいつも臭い物に蓋をするようなことばかりするから、信用ならないと感じている
この例文は、「臭い物に蓋をする」ようなことを常にする人は信用できないと考えていることを表しています。周りにバレないようごまかしたつもりが、バレていないと思っているのは本人だけというのはよくあること。その行為は、他人からの信用や信頼までなくしてしまうでしょう。
《例文2》この会社の臭い物に蓋をするような体質を変えることができないなら、未来はないだろう
「臭い物に蓋をする」は、人だけでなく組織やグループに対しても使うことができます。例文は、会社に「臭い物に蓋をする」ことが根付いていて、それを変えない限り会社の発展はないと考えていることを表現しています。一度根付いた社風を変えるのは、困難を極めることが多いもの。社会人として肝に銘じておきたいことと言えるでしょう。
会話での使い方は?
「臭い物に蓋をする」は、会話の中でも使うことができます。姉と妹が、妹のテスト結果について話しているとイメージして読み進めてください。
妹「数学と物理のテストで、ありえないほど悪い点数をとってしまったよ」
姉「勉強せずにサボっていたからだよ。自業自得だね」
妹「こんなの、親に見せられないよ。テスト用紙を捨ててしまおうかな」
姉「そんなことをしたって、個人懇談会でバレるじゃない。臭い物に蓋をするのは、自分のためにならないよ」
テストや成績が悪くて、どうにかして親に知られないようにしたいと考えたことがある人もいるかもしれませんね。しかし、結局はどこかでわかるもの。テストを捨てたことがバレると、余計に叱られてしまうはずです。
会話例は、ごまかそうとする妹を、姉が「臭いものに蓋をしても、結局自分のためにはならないよ」とさとすさまを表しています。
「臭い物に蓋をする」の類語
ここからは、「臭い物に蓋をする」の類語を見ていきましょう。それぞれの言葉の意味や例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。
「御茶を濁す」
「御茶を濁す」とは、いいかげんに言ったりしたりして、その場をごまかすことを表す言葉です。「おちゃをにごす」と読み、「茶を濁す」「お茶をにごす」のように表記することもあります。望ましくない状況をごまかすために、いいかげんなことを言ったり、言い訳をしたりすることのたとえとして使われています。
「冗談を言って御茶を濁す」「御茶を濁しておく」「御茶を濁した」のように用いることが多いでしょう。
《例文》お見合いの席で聞かれたのは答えたくないことばかり。相手がしつこかったので、御茶を濁しておいた
「その場しのぎ」
あとのことは考えずに、その場だけをとりつくろうことや、そうした態度、口実のことを表すのが「その場しのぎ」です。「その場しのぎで切り抜ける」「その場しのぎに過ぎない」のように使うことが多いでしょう。
《例文》プレゼン中にいろいろな質問をされたが、その場しのぎの回答しかできなかった…
「当座しのぎ」
「当座しのぎ」とは、とりあえずその場だけを間に合わせるという意味の言葉。「とうざしのぎ」と読みます。「その場しのぎ」と近い意味を持ち、同じような使い方をすると考えてください。
《例文》当座しのぎで融資を受けたが、事業再建の根本解決にはならない
「におい」に関する慣用句
「におい」に関する慣用句は他にもあります。2つピックアップしましたので、意味や使い方を見ていきましょう。
「におい」の慣用句2選
◎「臭い物身知らず」
自分のにおいには気づかないように、欠点はなかなか自覚できないということをたとえる際に用いられる言葉です。「くさいものみしらず」と読みます。
◎「栴檀は双葉より芳し」
栴檀は、発芽のころから香気(よい香り)を放つという意味の言葉。これが転じて、大成する人(すぐれた人になること)は、幼少のときからすぐれているということを表すようになりました。「せんだんはふたばよりかんばし」と読みます。
栴檀とは、常緑樹のこと。サンダルウッドや白檀(びゃくだん)とも呼ばれ、さわやかな甘い香りがする香木として知られています。
最後に
「臭い物に蓋をする」について、言葉の意味や読み方、使い方、類語などをまとめました。生じた問題をなんとかごまかそうとする態度を意味します。その態度を改めるよう促したり、忠告したりする場合に使われることが多いでしょう。「臭い物に蓋をする」ことは、信用や信頼を失うことにつながります。問題と向き合う大切さを教えてくれる言葉と言えるでしょう。
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