この記事のサマリー
・「好事、魔多し」は、「いいことには邪魔が入りやすい」という意味です。
・中国元代の戯曲『琵琶記』が由来です。
・類語には、「月に叢雲」や「花に嵐」などがあります。
順調に進んでいた仕事や、大切に温めていた話が、おもわぬ邪魔でストップしてしまった… そんな経験はありませんか?
日本語には、まさにそうした状況を的確に表す言葉があります。それが、「好事、魔多し」です。
この記事では、辞書に基づいて「好事、魔多し」の意味や由来、正しい使い方、似た表現との違いまで整理します。言葉の背景をり、大切な場面での、「慎重な一歩」につなげていきましょう。
「好事、魔多し」とは?
まずは「好事、魔多し」の読み方と意味、そして由来を整理していきましょう。
読み方と意味
「好事、魔多し」の読みは「こうじまおおし」または「こうずまおおし」と読みます。意味はいいことはとにかく邪魔が入りやすいということ。
辞書には以下のように定義されています。
好事(こうじ)魔(ま)多(おお)し
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「琵琶記」幾言諫父から》よいことにはじゃまが入りやすい。
いいことが起こっているときに限って、予想外の邪魔や問題が起きやすいという意味のことわざです。

「好事魔多し」の語源と由来
「好事魔多し」は、中国元代の戯曲『琵琶記』に記載があります。
作中には、「誰知道好事多磨起風波(誰かは知らないが、好事には多くの磨があって風波を起こす)」という一節があり、「磨(ま)」の字を用いています。ここでは、困難や妨害が生じることを意味していました。
日本に伝わる中で、この「磨」が「魔」に置き換わり、「邪魔」の意からさらに「災難」へと意味が広がったとされています。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「好事、魔多し」の使い方
「好事、魔多し」は、「悪いことが起きる」のような、不吉な予言ではありません。主に次の2つの意図で使います。
・自分への戒め:順調なときこそ慢心せず、気を引き締めたいとき。
・相手への配慮:成功を喜びつつも、「最後まで油断しないでね」とやんわり注意を促したいとき。
具体的な例文で、その使いどころを確かめましょう。
「A社との契約は順調に進んでおりますが、『好事、魔多し』とも申しますので、最終確認は慎重に進めてまいります」
成功を目前にして、引き締める姿勢を示すことができます。
「このプロジェクト、いまのところ問題なしだけど、『好事、魔多し』って言うし、気を抜かずに進めよう」
チームの士気を下げずに、緊張感を保つための合言葉として機能します。
「面接うまくいったと思ったけど、連絡が来ない…。まさに『好事、魔多し』、ってやつかもしれない」
自分の期待値をコントロールし、冷静さを取り戻そうとする心の動きを表現できます。

使い方の注意点
「好事、魔多し」の使い方において注意したいのは、この言葉が相手にとって「不吉な予言」のように聞こえてしまう可能性がある点です。
相手の成功を祝うべき場面では使用を控え、「この成功を確実なものにするために、最後まで並走しよう」という、温かなトーンで用いることを心がけましょう。
「好事、魔多し」の類語
「好事、魔多し」と似た意味を持つ言葉を紹介します。
「月に叢雲(むらくも) 花に嵐」
月を隠す雲や、桜を散らす嵐など、美しいものにはとかく邪魔が入りやすいという比喩から、「いい状態は長続きしない」という意味で使います。「月に叢雲」だけで使うこともありますよ。
例文:「長年の夢だった独立を果たした直後に大不況が来るなんて、まさに『月に叢雲 花に嵐』だ」
「花に嵐」
「月に叢雲 花に嵐」を短縮した表現で、意味は同じです。より口語的で、日常のちょっとしたトラブルを指して使うことも多い言葉です。
例文:「あんなにうまくいってたのに、急にダメになっちゃって…。まさに『花に嵐』よね」
「寸善尺魔(すんぜんしゃくま)」
世の中は、いいことが少なくて、悪いことばかり多いという意味です。
「好事、魔多し」が「好調への警戒」を含んだ表現であるのに対し、こちらは「世の中は思い通りにいかないものだ」という悲観的な響きを含みます。
例文: 「やっと昇進が決まったと思ったら異動を命じられるとは、『寸善尺魔』という言葉が身に染みるよ」
「好事、魔多し」の英語表現
「好事、魔多し」と同じ教訓や、意味を含む、英語のことわざを紹介します。
“The haps and mishaps of life are next-door neighbors.”
意味は、「人生の幸運と不運は隣り合わせにある」です。「好事、魔多し」の意味に近い英語ことわざのひとつです。
例文:”Don’t celebrate too early. You know, the haps and mishaps of life are next-door neighbors.”
(あまり早く喜ばないでね。人生の幸運と不運は隣り合わせなんだから。)
“Every rose has its thorn.”
「とげのないバラはない」ということわざで、美しいものには必ず欠点や困難があることを示します。
例文:”Getting that promotion sounds great, but every rose has its thorn—you’ll have more stress now.”
(昇進はすごいことだけど、とげのないバラはないよ。今後はもっとストレスが増えるだろうし)

参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
「好事、魔多し」に関するFAQ
ここでは、「好事、魔多し」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「好事、魔多し」は「こうじまおおし」の読み方で合っていますか?
A. はい、合っています。「こうずまおおし」とも読みますよ。
Q2. 対義語はありますか?
A. 辞書に記載のある明確な対義語はありませんが、「順風満帆」などが対照的な表現だといえるでしょう。
Q3. NGな使い方はありますか?
A. 祝いの席やポジティブな報告に対して不用意に使うと、冷や水を浴びせた印象になります。TPOを考えて使いましょう。
最後に
「好事、魔多し」は、順調なときこそ気を引き締めることの、大切さを思い出させてくれる表現です。
意味や由来、類語との違いを理解しておけば、ビジネスや日常のさまざまな場面で、相手に配慮しつつ的確な言葉を選ぶ力になりますよ。言葉の背景を知ることは、あなたの表現力を豊かにしてくれる一歩。ぜひ今日から活用してみてください。
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