妊娠した際、「安定期までは言わない」という話を、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか? 妊娠をいつ報告するかは、悩むところですよね。また、「なぜ安定期まで言わないの?」という疑問の声もあるでしょう。
そこで、本記事では、妊娠を安定期まで言わない人の理由や、安定期前に報告した方が良いケース、職場での伝え方で気をつけたいポイントなどを解説します。
妊娠を安定期まで言わないのはなぜ?
妊娠16週~27週を妊娠中期と言い、一般的に「安定期」と言われる時期になります。妊娠は、「安定期になってから、妊娠を報告するもの」というイメージをお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
もちろん人によってタイミングは様々ですが、「早すぎると不安」という方もいらっしゃることでしょう。実際に、「安定期までは不安定なので、何かあると周りに気を遣わせてしまうのでは」と心配する声や、「過去に流産をしたことがあり、慎重になっている」という話も耳にします。
たしかに、周りに早めに知らせた場合、何かあった時に辛いという思いもあるでしょう。そのため、「安定期までは言わない」という人もいらっしゃるようです。
早すぎるのはだめなの?
「妊娠報告が早すぎる人はどうなの?」などの声を耳にしたことがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか? 中には、妊娠したと思ったら、気のせいだったというケースも。周りが「おめでとう!」と祝福ムードの中、「実は妊娠していませんでした」というのは、たしかに気まずいですよね。そのため、できれば病院で検査をしてから報告する方が、無難かもしれません。
安定期前に言った方が良いケースも
職場では、安定期に入る前に報告することが、早すぎるとは言えないこともあるのをご存知でしょうか? ここからは、安定期前に妊娠を報告しておいた方が良いケースを見ていきましょう。
例えば、妊娠初期は、つわりなど、体調に異変があることも多いため、仕事に影響が出ることもあり得ます。また、「妊娠初期は体調が不安定な状態のため、無理をしないように」など、安定期までの過ごし方を、病院でアドバイスされることもあるでしょう。
ちなみに、労働基準法では、妊娠中の女性や出産後1年経っていない女性を、「妊産婦」と言います。妊産婦には、法律上、様々な権利があることをご存知でしょうか? 例えば、妊産婦は残業(時間外労働)や、休日出勤などをしないよう、会社に請求することができますよ。また、夜10時から朝5時までの深夜の仕事をしないよう、求めることもできます。
参考:厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」
体調が不安定な中、残業や深夜までの仕事は、身体にさらに負担がかかってしまいますよね。特に、安定期に入る前の妊娠初期は、体調が急に変化することも。早めに報告しておくことで、体調が優れない時に配慮もしてもらいやすいでしょう。
妊娠を報告したところ、上司や同僚たちから「体調が悪い時は、無理せず休んでね」と声をかけてもらい、「精神的にも助かった」という声もあるようですね。
また、妊娠での体調不良と、単なる体調不良は、周囲からの見え方が違うのではないでしょうか? そのため、安定期になる前でも、会社への報告を検討してみるのが良いかもしれませんね。
職場で倒れてしまう人も
実は、妊娠を会社に報告せずに、無理をしてしまった結果、限界がきてしまうというケースも少なくありません。例えば、妊娠を言わずに、ハイヒールで立ち仕事をしていたところ、ひどい腰痛になり、接客中に倒れてしまったという人も…。また、飲食店で調理中に、強い吐き気に襲われてしまったなどのケースもあります。
妊娠中は、腰痛や、吐き気などの他、においに敏感になるなど、様々な変化が出ることが多いため、仕事をするのが辛いこともあるでしょう。くれぐれも、無理は避けるようにしたいですね。
職場での注意点は?
ここからは、職場に妊娠を伝える際、気をつけた方が良い点を一緒に見ていきましょう。
1:伝える順番に注意
職場での妊娠報告の順番は、重要なポイントです。まずは、直属の上司に伝えることが一般的ですよ。というのも、産休や育休中の人員配置の考案や、引継ぎ先の決定など、上司が考える必要があることが多いからです。
また、注意したいのは、仲良しの同期などに先に言ってしまうこと。同期とランチに行った時に、先に報告してしまった結果、噂が広まってしまっていたなんてこともあるようですよ。ある日突然、上司から「妊娠したと聞いたけれど、本当ですか? だとしたら、上司である私に先に話してほしかったです」などと言われて、気まずい思いをしたという話も耳にします。
管理職は、「部下のことを、きちんと把握しておくように」と会社から言われているケースも多いため、まずは直属の上司に話をしておくのが安心ですよ。また、「課内には、定例のミーティングの終わりに、報告しましょう」など、会社内に報告する方法や、タイミングも含めて相談をしておくと、さらにスムーズでしょう。
2:引継ぎ準備は早めに
妊娠中は、体調が不安定になりがちですよね。そのため、引継ぎの準備は早めにしておくと安心ですよ。もちろん、上司と「この業務は、この人に引き継ぐ」などの相談をして、しっかりコミュニケーションを取っておくのも重要です。ですが、誰に引き継ぐかが未定の段階でも、簡単なマニュアルを作っておくことや、今の担当業務の進捗状況などを資料にまとめておくなど、できることがあるかもしれませんよね。
例えば、自分が同僚から仕事の引継ぎを受けると考えてみましょう。その時、何も資料を準備せず、口頭で一気に説明されたら、どうでしょうか? 一度聞いて完璧に理解できる人もいらっしゃるかもしれませんが、恐らく多くの場合、混乱してしまいますよね。また、説明の抜け漏れや誤解も生じやすくなってしまいます。後から、「そんなことは聞いていません」など、思わぬトラブルに発展する可能性も。
もちろん、口頭での説明も重要ですが、あとから見返すことができる資料があると、引継ぎを受ける側も安心するのではないでしょうか? 急に休まざるを得ない時も、代わりの人が対応しやすくなりますよね。とはいえ、資料の作成や業務のまとめ作業は、一定程度時間がかかるもの。早めに準備しておくとスムーズでしょう。
最後に
この記事では、妊娠の報告を安定期まで言わない主な理由や、職場での報告のタイミング、伝え方の注意点などを解説しました。妊娠の報告は、デリケートな点も多く、悩む方も多いのではないでしょうか? そんな方はぜひチェックしてみてくださいね。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサルの傍ら、ポジティブ心理学をベースとした研修講師としても活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン