血縁関係がなくても「身内」?
「身内」は自分の家族や親類のことを指しますが、実は血縁関係がなくても「身内」と呼ぶことがあるのを知らない人は意外と多いかもしれません。「身内」というと誰のことを指すのか、どこまでが「身内」なのか、その定義を知らずに使っていることもあるでしょう。
ビジネスシーンやフォーマルな場でも使う言葉ですので、意味や定義をしっかりと把握しておきたいですね。
辞書で意味をチェック
【身内】読み方:みうち
1:ごく親しい血縁関係にある人。家族。親類。「—だけで祝う」
2:同じ親分に属する子分。また、同じ組織に属する者。「暴力団の—どうしの抗争」「—の不祥事を隠蔽(いんぺい)する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
意味から読み取れるのは、血縁関係の有無に関係なく、かかわりの深い人を「身内」と表すということ。また、法的に定められた範囲も「身内」にはありません。
同じ組織でともに働く人や、精神的な結びつきが強い人、関係性が深い人に対しても「身内」と呼ぶことができます。
「身内」の認識は人により異なる
「身内」には、具体的な定義はありません。たとえば、同居している家族だけが「身内」だと思う人もいれば、遠方に住む血縁関係のある人はみんな「身内」と考える人もいます。法的な定義がないため、「身内」の認識は人により異なると考えておくといいですね。
また、かかわりの深い人のことも「身内」と呼びますが、この言葉も定義がありません。個人の価値観によるものが大きいと言えますが、注意したいのは「身内」と呼ばれることに違和感を覚える人もいるということ。信頼関係が築けていない相手に対して使うのは、避ける方がいいかもしれません。
「身内」の使い方を紹介
ここからは、「身内」という言葉の使い方を見ていきましょう。例文とともに紹介します。
血縁関係がある人
《例文》
・身内の不幸により、急に仕事を休まなければならなくなった
・身内のお祝いごとが続いて、自分まで幸せな気持ちになる
「身内の不幸」は、よく登場する表現の一つ。実際に会社などを休む際、この表現を使ったことがある人もいるでしょう。「身内の不幸」は予期せぬタイミングでやってくるもの。だからこそ、冷静に対処することが求められます。
家族や親類の結婚や出産などは、「身内のお祝いごと」として喜びを分かち合いますよね。最近では、「身内だけの結婚式」を選ぶ人が増えているということも。「身内」を大切にしたいという思いの表れなのかもしれませんね。
血縁関係がない人
《例文》
・イベントの打ち上げ後、身内だけで二次会をした
・新卒入社の同期には身内意識もあり、心の支えとなっている
家族や親類と同等、あるいは近いくらいの信頼関係を築いた人に対しても「身内」という表現を使うことがあります。また、同じ会社や部署でともに働く人に対しても「身内」を使うパターンもあるでしょう。
社会に出るとたくさんの出会いがありますが、「身内」と思える存在になる人は少ないかもしれません。深くかかわることができる人や、長くつきあえる人というのは貴重ですから、大切にしたいですね。
血縁関係のある「身内」と似た言葉は?
「身内」と似た言葉について見ていきましょう。まずは血縁関係のある「身内」について紹介します。
「肉親」
読み方は「にくしん」で、親子・兄弟など、非常に近い血縁関係にある人のこと。血のつながりがあり、遺伝的な類似性を持つ人たちのことを指すことが多いでしょう。
《例文》
・肉親だからこそ、相手の気持ちを尊重し、応援したいと考えている
「近親」
血縁の近い親族という意味の言葉で、「きんしん」と読みます。また、極めて親しいさまを表す際にも使われています。血族や血縁関係にある近い親族を「近親者(きんしんしゃ)」と表しますが、この言葉も使われることが多いでしょう。
《例文》
・母の病院から連絡があり、主治医から近親者を集めるよう言われた
「一族」
同じ祖先から出た、血のつながりのある者たちを表します。読み方は「いちぞく」。
《例文》
・彼女の一族はこの里山に100年以上住んでいるそうだ
「親族」
血縁の人々の総称とされる言葉。血のつながった人々や、養親子と言った法的に血族として扱われる人のことを指します。読み方は「しんぞく」。
《例文》
・親族を代表し挨拶をすることになったため、父は緊張して眠れなかったようだ
「親戚」
血縁や婚姻により、結びつきがある人のことを言います。読み方は「しんせき」。家族を除く親類のことを指すと考えてください。
《例文》
・年末年始は祖父母の家に親戚が集まり、いろんな話をするのが恒例だ
「ゆかり」
「ゆかり」とは、血縁関係のある人のことを指します。また、かかわりやつながりがあることに対して「ゆかり」を使うこともあるでしょう。漢字表記は「縁」あるいは「所縁」。人だけでなく物事に対して使うこともあります。
《例文》
・祖母にゆかりのある人がたくさん集まり、祖母の思い出話に花が咲いた
「縁者」
読み方は「えんじゃ」。縁続きの人という意味があり、親戚を表します。
《例文》
・親類縁者が集まるのは、姉の結婚式以来かもしれない
血縁関係のない「身内」の類義語
血縁関係のない「身内」の類義語についてもチェックしましょう。どのような言葉があるでしょうか?
「仲間内」
一緒に何かしらの物事をする間柄や、その人同士のことを指します。特に親しいことを感じさせることから、「身内」の類義語であると言えるでしょう。
《例文》
・仲間内の集まりということもあり、リラックスして飲み過ぎた
「友人同士」
お互いに心を許し合い、対等にかかわりあえる人同士のこと。一緒に遊ぶ、しゃべるなどして過ごす親しい人同士のことを指します。
《例文》
・彼女の結婚式では友人同士で協力し合い、サプライズを仕掛けた
「内輪」
外部の人を交えないことを意味する言葉。家族や親戚、仲間などの親しい者のみを指します。
《例文》
・内輪の者だけで結婚式をしたいと打ち明けたら、両家の親も賛成してくれた
最後に
「身内」について紹介しました。「身内」には法的な定義はなく、誰が「身内」に該当するかは個人の認識で異なります。また、血縁関係にある人だけでなく、特に親しい人や、同じ組織で働く人のことを「身内」と表現することも多いでしょう。人はたくさんの出会いを経験しますが、「身内」と思える人はそう多くないはず。貴重な出会いを大切にしたいですね。
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