「凡庸」という漢字、どう読むかご存知ですか? 「彼はとても凡庸だ」というように、人の様子を表す言葉ですが、一体どのような人物を表す言葉なのでしょうか。そこで本記事では、「凡庸」の意味や使い方、「平凡」などの類語、英語表現などを解説します。
凡庸とはどういう意味?
「凡庸」は、「ぼんよう」と読みます。「はんよう」と読み間違えないよう、注意しましょう。意味は、以下の通りです。
[名・形動]平凡でとりえのないこと。また、その人や、そのさま。「―な(の)人物」『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何もかもが平均的で、特に優れたところがないことを「凡庸」と言います。これといった取り柄のない人のことを「凡庸な人物」と言ったり、優れたところのない商品のことを「凡庸な商品」と表現しますね。
「凡庸」の「凡」には、「なみの、普通の」という意味があり、ごく普通でありふれていることを指します。また、「庸」も、いつまでも変わらないものとして「普通の」という意味があります。このことから、同じ意味を組み合わせた単語であることがわかりますね。
「汎用」とは、まったく違う言葉
「凡庸」は、「汎用(はんよう)」という言葉としばしば混同されがちです。「汎用」とは、「色々な方面に広く用いること」で、「汎用性が高い」などと表現します。主に、ものに対して使われており、「凡庸」のように、人の性格を表すことはありません。字面や読み方が似ているので、間違ってしまいがちですが、意味はまったく異なるので気をつけてくださいね。
使い方を例文でチェック!
「凡庸」は大きく分けて、人に対して使われる場合と、ものに対して使われる場合があります。それぞれの使い方を例文で見ていきましょう。
1:そんな凡庸な考え方では、ヒット商品は生まれないよ。
「凡庸」とは、平凡でありふれていること。ヒット商品を生み出すには時に、発想を転換してみたり、別の視点から物事をみたり工夫がいることもあります。常識にとらわれて、ありきたりな考え方をしていると、息詰まってしまうこともあるでしょう。そのような姿勢を戒める場面のセリフです。
2:彼はいつ会っても凡庸で、これといった取り柄がない。
「凡庸」は多くの場合、他人やものを評価するときに使われます。いつ会っても進歩のない様子を見て、「あの人は凡庸だ」と判断したり、優れた性能のない商品を使って、「あの掃除機の機能は凡庸だ」と言うのがその例です。ただ、「普通」「平均的」であるというより、「優れたところがない」という点に重きが置かれた言葉であると言えるでしょう。
3:他人から見れば凡庸な趣味と思われるかもしれないが、私にとっては癒しの時間だ。
周りからすると、とるに足りないことに思えることでも、本人にとってはとても楽しいことってありますよね。ペットと戯れることやゲームをすることなどは、珍しい趣味とは言えませんが、心が解放される大切な時間です。たとえ凡庸に見えたとしても、自分自身が満足しているならそれでいいのではないでしょうか?
類語や言い換え表現
「凡庸」によく似た言葉には、「平凡」「人並み」「芸がない」などがあります。意味を覚えて、場面によって使い分けてみると、語彙力がアップしますよ。
1:平凡
[名・形動]これといったすぐれた特色もなく、ごくあたりまえなこと。また、そのさま。「―な作品」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何もかもがありきたりで、平均的なさまを「平凡」と言います。飛び抜けた才能がない人物のことを「平凡な人」と言ったりしますね。そのほかにも、「毎日平凡に暮らす」というように使うことも。何かに対して、面白みがなくつまらないと感じた時に使われることが多い表現ですね。特に優れたところがないという点が、「凡庸」と共通しています。
(例文)
・いい加減、平凡な毎日にも飽き飽きしてきた。
・息子は「景色が平凡で面白くない」と愚痴をこぼした。
2:人並み
「人並み」は、日常生活で見聞きする機会の多い言葉ではないでしょうか? 意味は、以下の通りです。
[名・形動]世間一般の人と同じ程度であること。また、そのさま。世間並み。「―な(の)暮らし」『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
他の人と大体同じくらいであることを「人並み」と言います。「普通」や「平均的」と同じようなニュアンスが含まれていると言えますね。「せめて、人並みの生活がしたい」というセリフからは、同じ世代の平均年収は欲しい、満足に食べれる生活がしたい、というような、大多数の人間と同じような暮らしがしたいと考えていることが伝わってきます。
(例文)
・兄は「人並みの生活がおくれたら充分だ」と言った。
・彼は人並み外れて声が大きい。
3:芸がない
「芸がない」の意味を見ていきましょう。
1 遊芸のたしなみがない。
2 平凡でおもしろみがない。工夫がない。「人まねをするとは―・い話だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
人付き合いをしていると、時々誰かが「〇〇君は、芸がないから」などと言ったりするのを耳にすることはありませんか? 「芸がない」は、「歌や踊りの才がない」ということから転じて、今では「センスがなくてつまらない」というような意味で使われます。誰かの振る舞いを見て、「つまらない」と判断した人が、一方的に言うことが多いでしょう。
(例文)
・新入社員のB君とカラオケに行ったけれど、ノリが悪くて全く芸がないね。
・他人の真似をするなんて、芸のない話だよ。
対義語は?
「凡庸」と反対の意味を持つ言葉として、「非凡」「稀有」などがあります。どんな違いがあるのかチェックしてみてはいかがでしょうか?
1:非凡
[名・形動]平凡でないこと。普通より特にすぐれていること。また、そのさま。「―な(の)才能」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「非凡」は、「平凡」の対義語としても用いられますね。ずば抜けた能力を持っていたり、芸術的な才能を持っている人を目にして、「彼女は非凡な才を持っている」と評価することもあるでしょう。特に優れたことがない「凡庸」とは正反対の言葉と言えますね。
(例文)
・弟は音楽スクールに通ってから、瞬く間に非凡な才能を発揮した。
・Aちゃんは先輩の非凡なところに憧れている。
2:偉大
「偉大」の意味は、以下の通りです。
[形動][文][ナリ]すぐれて大きいさま。りっぱであるさま。「―な業績」「―な人物」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
人柄が立派で、優れている人を「偉大」と評することはよくあります。また、歴史的にみても、前例がないような大きな功績を残した場合、「偉大な功績」と表現することも。突出した人物や行ないに使われるため、「凡庸」とは全く意味が異なりますね。
(例文)
・その王様は偉大な人物として称えられた。
・そのビジネスマンは我が社に偉大な功績を残した。
最後に
「凡庸」とは、「平凡でこれといった取り柄のないこと」。他のものを見て「つまらない」と感じた時に、否定的なニュアンスで使われることが多い言葉です。同じような意味を持つ言葉には、「平凡」「人並み」「芸がない」。対義語には、「非凡」「偉大」などがありました。人の特徴や様子を表す言葉として、セットで覚えてみてはいかがでしょうか?
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