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会話をしている時やメールを打っている時に、「大事」と「大切」どちらを使ったら良いのか悩んだことはありませんか? 当たり前に使われる言葉なだけに、意味や違いを曖昧にしたまま使っていることがほとんどかもしれません。そこで、本記事では、同じ意味として使われがちな「大事」と「大切」の意味や使い方、英語表現などを解説します。
大事と大切の違いとは?
「大事」と「大切」は、日常的によく使われる言葉ではありますが、だからこそ意味を調べたことはない方も多いはず。改めて、2つの言葉の意味を辞書でチェックしてみましょう。
大事の意味
「大事(だいじ)」は、「重大な事柄」「大掛かりな仕事」などの意味を持つ名詞と形容動詞があり、複数の意味を持ちます。ここでは、「大切」と似たような意味を持つ、形容動詞の意味を深掘りしていきましょう。
[形動][文][ナリ]
1 価値あるものとして、大切に扱うさま。「―な品」「親を―にする」「どうぞ、お―に」
2重要で欠くことのできないさま。ある物事の存否にかかわるさま。「―な用を忘れていた」「今が―な時期だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
わかりやすく言うと、「重要で価値のあること」を「大事」と言います。「大事」は「おおごと」と読み方もあり、「重大かつ深刻な意味を持つ事柄」を指すため、自分にとって重大な事柄を「大事(だいじ)」と言うこともできるでしょう。
「大事」は、ものや人、時期など広範囲に使用されます。例えば、自分にとってかけがえのない宝物や親しい人は「大事なもの」と捉えることができますね。宝石や車など金額に換算して価値のあるものの他に、値打ちはないけれど自分にとっては価値があるものも、「大事なもの」に含まれます。
大切の意味
続いて、「大切(たいせつ)」の意味を見ていきましょう。
[形動][文][ナリ]
1もっとも必要であり、重んじられるさま。重要であるさま。「―な条件」「―な書類」
2丁寧に扱って、大事にするさま。「本を―にする」「命を―にする」
3急を要するさま。
「―なる事有りて、夜を昼にて上れば」〈今昔・一六・二〇〉
[派生]たいせつさ[名]
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
現代では、1番と2番の意味が用いられますね。「自分にとって最も必要なものや人」のことを「大切」と表現します。「大切」も「大事」と同じように、「人やもの、時期」など広範囲に使用することができます。心から愛している恋人や家族に対してもよく使われますね。
「大事」の使い方を例文でチェック!
意味を確認したところで、続いて正しい使い方を見ていきましょう。「大事」には、大きく分けて2通りの意味があるので、それに合った例文を紹介します。
1:大事な腕時計を落としてしまった。
「大事」の1つ目の意味である「価値あるものとして、大切に扱うさま」の例文です。腕時計やジュエリー、絵画など、文化的・金銭的に価値があるものに使われることも多いですね。落として傷ついてしまうことで、その価値が半減するというニュアンスが伝わってきます。
2:受験生なので、塾で勉強することは何より大事な時間だ。
「大事」の2つ目の意味である「重要で欠くことのできないさま」を表す例文です。受験生にとって、勉強する時間はなにより貴重なもの。特に、試験日が迫ってくるほど、残された時間が惜しく感じられてくるはずです。その人にとって、最も優先度が高いものに対して、「大事」が使われる傾向があります。
「大切」の使い方を例文でチェック!
続いて、「大切」の使い方を紹介します。「大切」が持つ、2通りの意味を一緒にチェックしていきましょう。
1:好きな人と過ごすのは、私にとって大切な時間だ。
「大切」の「もっとも必要であり、重んじられるさま」を表した例文です。自分にとって、最も必要な時間と置き換えて考えることもできますね。
2:私は、両親からもらったぬいぐるみをとても大切にしている。
「大切」の「丁寧に扱って、大事にするさま」を表した例文です。両親からもらったぬいぐるみを抱いて眠ったり、洋服を着せたりして、丁寧に扱っていることが伝えられるでしょう。
「大事」と「大切」の共通点と違い
「大事」と「大切」の意味や使い方は理解できましたか? 「大事」と「大切」には、よく似ている点もあれば、異なる意味合いを持つ点も存在します。共通点と違いを理解して、うまく使い分けてみてください。
共通点
「大事」と「大切」には、どちらにも「重要である」という意味が含まれていることが共通しています。例えば、「大切な会議」は「大事な会議」、「大切にしている着物」は「大事にしている着物」と言い換えることができますね。「重要である」点においては、ほとんど似た意味を持つため、文章中で大切と大事を入れ替えても、ほとんど違和感はないでしょう。
違い
「大事」と「大切」の違いについて、特に決まった定義はないようです。ただし、「大切」は丁寧に扱っていることを強調したい場合に使われる傾向があります。例えば、「私は家族と過ごす時間を大切にしている」「彼女は何より大切な人だ」ということができますね。高価であるというような客観的な価値よりも、自分にとって必要な心情的な価値について言う場合に用いられることが多い言葉です。
対して、「大事」は、腕時計やジュエリーなどを価値のあるものとして扱っている時に使われる傾向があります。心情よりも、存在の価値そのものを強調したいときに使うことがポイントです。強調したいことによって、「大切」と「大事」をうまく使い分けてみてくださいね。
「重要」との違いとは?
「大事」や「大切」とよく似た言葉に、「重要」があります。どのような違いがあるのか一緒に見ていきましょう。
[名・形動]物事の根本・本質・成否などに大きくかかわること。きわめて大切であること。また、そのさま。「戦略上―な地域」「―性」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「要(かなめ)」という漢字が使われていることから、物事の根本にかかわる物事のことを「重要」と言います。例えば「上司から重要な話をされた」と聞くと、待遇面や昇進など働く上で欠かせない条件についての話が思い浮かぶのではないでしょうか。
「大切」や「大事」は、個人的に価値を感じるものにも使われますが、「重要」は客観的な価値に対して使われる点が違いと言えるでしょう。
(例文)
・重要な書類を無くしてしまった。
・その事件の重要参考人になってしまった。
英語表現
英語でも、「大切」と「大事」は同じ単語を用いることがあります。最も一般的なのは、「important」と言えますが、より個人的な愛情を伝えたい場合は、「precious」を使うとそのニュアンスが伝わりやすいでしょう。
1:important
「important」は、「(もの・ことが)重要な」「大切な」「重大な」などの意味があります。「重要な」という意味で、最も一般的な単語です。大きな価値や影響力があることに対して使われるので、恋人などに対して「大切な人」というように使うにはやや硬い表現であるとも言えます。
・The important thing is to keep trying. (大切なのは挑戦し続けるということです)
・It is important that a paper be easy to read. (論文は読みやすいことが重要です)
・It’s very important to me that you should be there. (あなたがそこにいることが、私にはとても大切なのです)
・He considered the matter sufficiently important to call her at home. (重大な問題なので、彼女の家に電話すべきだと彼は考えた)
2:precious
「precious」は、「(ものが)非常に高価な」「(精神的に)かけがえのない」「いとしい・最愛の」などの意味があります。宝石や芸術作品など、希少価値の高いものに対して使われることもあれば、大事な思い出を「precious memories」。愛しい我が子を「precious child」と表現することもできます。「precious」を使うことで、心から大切に思っていることが伝わることでしょう。
(例文)
・My family is precious to me.(家族は、私にとってかけがえのない存在です)
・The lovers spent precious time together. (恋人同士、貴重な時間を過ごした)
最後に
「大事」と「大切」の意味や、その違いについてみていきました。「大事」は、「価値があること」、「大切」は「心情や、丁寧に扱っていること」に重きを置いた表現です。「大事」と「大切」の使い分けに悩んだ時は、どちらの意味を強調して伝えたいのか? と考えてみると、わかりやすいでしょう。ぜひ、日々の会話で役立ててみてくださいね。
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