弔事と慶事とは?
まずは弔事と慶事の言葉の意味から確認しましょう。
弔事(ちょうじ)とは、「弔(とむら)う行事」の意味合いがあり、亡くなった方の供養をする通夜や葬儀、告別式を経て、四十九日法要までの行事を指します。
仏教では、亡くなった後、49日間はまだ故人は成仏していないとされています。葬儀が終わっても、まだ供養は続いているのです。49日目になって、無事に極楽浄土に行くことができて仏様になるとされているため、供養も終わります。1周忌やお彼岸も故人をしのぶ行事ですが、もう供養は終わっていることから弔事には含めないのが一般的です。
慶事(けいじ)は、結婚式や出産祝い、入学祝い、長寿のお祝いなどのお祝いごと全般を指します。
弔事と慶事が重なったとき、どちらを優先させる?
偶然にも、弔事と慶事の日が重なってしまったとき、どちらを優先するかを迷うこともあるかもしれません。基本的には弔事が優先です。日本には喪に服すなど、不幸があったときにはお祝いごとを控える習慣があるからです。例えば、葬儀と結婚式が重なってしまったら、葬儀を優先します。
ただし、相手との関係性によって、またはそれぞれの家や個人の考え方によって変わってきます。例えば、それほど親密ではない知人の葬儀と自分の兄弟の結婚式の日が重なってしまったら、一般的には兄弟の結婚式に参列するでしょう。しかし自分の親の葬儀と友人の結婚式が重なったら、当然、親の葬儀が優先されます。
このように、一般的には、相手との関係が近いほうが優先されると考えられています。
忌中は優先される
日本では喪中や忌中という考え方があり、この期間は基本的にお祝いごとを控えます。そのため弔事と慶事が重なったときには、喪中や忌中の期間であれば、慶事は控える必要があります。
喪中は身内の方が亡くなった後、3か月から1年にわたって、喪に服す期間です。故人との関係性や家の考え方によって期間は変わります。
忌中は、仏教では四十九日法要が終わるまでの期間を指します。忌中は、喪中よりも強い意味合いを持っているため、忌中の期間であれば家族や親族の結婚式や七五三などのお祝いごとは何があっても控えます。友人の結婚式も控えたほうが良いでしょう。
香典と祝儀の違い
弔事に持参する香典は、「供養のためにお線香をそえてください」という意味合いを持ちます。対して、祝儀はお祝いの気持ちを伝えるお祝い金です。
香典袋と祝儀袋の違い
香典は香典袋(不祝儀袋)を、祝儀は祝儀袋を用います。それぞれ水引の結び方や色、折り方などに違いがあります。
香典袋の水引は白黒か白黄で、「何度もあってはならない」という意味からほどけない、片結びの「結び切り」を用いるのが通例です。
祝儀袋の水引は紅白か金銀で、結婚式だけは「一度きりであってほしい」との意味から、ほどけない「結び切り」を用います。それ以外のお祝いごとには、「何度あっても良い」との意味から引っ張ればすぐにほどける「蝶々結び」を選びます。
一番外側の包み紙を「外包み」と呼びますが、香典袋と祝儀袋とでは折り方が異なります。さまざまな考え方があり、地域によっても異なりますが、よくいわれるのが外包みの裏面の折り返しの向きです。
祝儀袋の場合には、下側の折り返しが上になるように、つまり先に上側を折ってから下側を折り重ねます。これには「上向き」という縁起をかつぐ意味合いがあります。香典袋は逆向きで、上側の折り返しが上になるように、つまり下側を折ってから上側を折り重ねます。
新札か古札か
香典袋に入れるお札には古札を選びます。弔事は、突然の訃報に驚き、あわてて通夜や葬儀に駆けつけたという意味合いから、香典もあわてて用意したということで古札を用います。新札は「前もって準備しておいた」ような感じがあるため、控えるのが通例です。
もし、新札しか持ち合わせていなかった場合には、わざと一度折るなどして古札にしてから入れる方もいます。
祝儀袋には、お祝いの意味を込めて、真新しく縁起の良い新札を入れます。
お札の枚数
入れるお札の枚数について、香典も祝儀も共通しているのが1万円を4枚入れる4万円は避けること。4(シ)は「死」を想起させるからです。
また、祝儀は特に結婚式の場合、偶数は避けます。偶数は「分けられる」ことから「別れ」を想起させるためです。よって2万、4万、6万などは避け、3万、5万、7万などの奇数を包みます。
香典は「別れ」は関係ないため偶数枚でも構いません。4以外の1万、2万、3万、5万、6万、7万などを包みます。
香典も祝儀もそれぞれ細かなマナーありますが、マナーとは先方への気遣いです。単なる決まりごとではなく、弔事の故人をしのぶ気持ちや、慶事のお相手へのお祝いの気持ちをもとに考え、行動しましょう。
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弔事と慶事の違いとして、行事の優先度や香典と祝儀の違いを紹介しました。どちらも大切な行事です。それぞれの意味をしっかり理解して、先方への気遣いや心遣いを忘れずに対応しましょう。
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メモリアルアートの大野屋 終活・仏事アドバイザー 川島敦郎
1956年東京都出身。大学卒業後ブライダル会社に勤務。企画やプランナー育成に携わり、業界資格の試験官も務めたエキスパート。ブライダルの世界から2005年にメモリアルアートの大野屋に入社。葬儀ディレクター、生前相談アドバイザー、セミナー講師としても活躍し、現在「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーとして年間5000件以上の相談に答える。
大野屋テレホンセンター著「もう悩まない! 葬儀仏事お墓ズバリ! 解決アンサー」(二見書房)、監修「小さな葬儀とお墓選び・墓じまい」(自由国民社)
お電話窓口:0120-02-8888
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