教育や芸術的な分野でときどき聞かれる「感性」という言葉。「感性が豊かだね」などと、褒め言葉として使われることもありますが、そもそもどのような意味なのでしょうか? そこで本記事では、「感性」の意味や感受性との違い、「感性」が豊かな人の特徴などを解説します。
「感性」とはなに?
感覚にまつわる言葉は、何となくあいまいなまま使われがちです。まずは、「感性」の意味を確認します。その後、よく似た言葉「感受性」との違いについてチェックしてみましょう。
「感性」の意味
1 物事を心に深く感じ取る働き。感受性。「―が鋭い」「豊かな―」
2 外界からの刺激を受け止める感覚的能力。カント哲学では、理性・悟性から区別され、外界から触発されるものを受け止めて悟性に認識の材料を与える能力。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
見たり聞いたりすることで起きる、心の動きのことを「感性」と言います。他にも、触ったり、匂いを嗅ぐなど、五感で感じたことを深く感じ取る能力ということもできそうです。2つめの意味である、哲学用語としての「感性」は、「知性」や「悟性」の対義語でもありますね。
「感受性」との違い
続いて、「感受性」の意味についても辞書で見ていきましょう。
1外界の刺激や印象を感じ取ることができる働き。「―の強い人」「―が豊かだ」
2病気にかかりやすいこと。例えば、麻疹(はしか)や風疹などの感染症に対する免疫ができていないため、感染した場合に発症する可能性が高いことをいう。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「感性」と「感受性」の意味を辞書で見比べてみると、「外界からの刺激を感じ取る心の働き」という点において、共通していますね。しかし、例えば、他人から聞いた話を自分ごとのように受け止めて、怒ったり悲しんだりする人のことを「感受性が強い人」と表現することはあっても、「感性が強い人」とは言いません。
このことから、「感受性」には、物事を情緒的に受け取る能力があるというニュアンスが。「感性」には、「物事をより深く感じ取る能力がある」という点に重きが置かれた表現であると言えるでしょう。
使い方を例文でチェック!
日常会話の中では、「感性が豊か」「感性を育む」などのように使います。それぞれの使い方をチェックしていきましょう。
1:担任から「A子さんは感性が豊かなので、ダンスの表現がとても上手い」と褒められた。
見たり聞いたりしたことから、自由にイマジネーションを膨らませることを「感性が豊か」と言います。自分が感じたことを活かして、歌を歌ったり、絵を描いたり、ダンスを踊ったりできると「表現力がある」と言って褒められることは多いですね。
2:A子がまだ赤ちゃんの頃から、絵本を読ませたりして感性を育んできました。
「育む(はぐくむ)」とは、「大事に育てる、養う」という意味。赤ちゃんや子供を教育するときに、よく使われますね。幼い頃から、様々な体験をさせてあげることで、心が豊かになり、感性を磨くことにも繋がりそうです。
3:その作家は鋭い感性でその大作を書き上げた。
「鋭い」には、「尖っている、頭がいい、勇敢な」などの意味があります。賢い頭脳で、物事の本質を見抜き、それをストレートに表現している人に対して使われる傾向があるでしょう。「感性が豊か」には、柔らかいおおらかなニュアンスがあるのに対して、「鋭い感性」には、他を寄せ付けない孤高な人柄が感じとれます。
「感性」が豊かな人の特徴とは?
あなたは人から「感性が豊かだね」と言われたことはありますか? または、周りに「この人は感性が豊かで羨ましい」と感じる人がいる場合もあるでしょう。周囲からそう言われる人には、どのような特徴があるのか見ていきましょう。
1:想像力が豊か
「感性が豊かな人」と言えば、想像力が豊かなイメージがありませんか? どんどん自分の心の中で想像を膨らませて考えられる心の自由さがありますよね。またその感覚を活かして、手を動かして物を作ったり、絵を描いたりすることが得意な人も多いです。
「想像力が豊かな人」は、他の人が思いもつかないような意外な発想をすることも特徴。「ぼーっとしていると思っていたら、そんなこと考えていたの?」と驚かれることも珍しくありません。
2:オリジナリティがある
「感性が豊かな人」の発言や行動には、オリジナリティがあります。日常の些細なことからインスピレーションを得られるので、頭の中には常にいろんなアイデアが詰まっています。ワクワクすることを生み出したり、企画することも得意でしょう。やりたいことがたくさんあるので、他の人の真似をするという発想はあまりないかもしれませんね。
3:自分の気持ちに正直、素直
「感性が豊かな人」は、ピュアな感性の持ち主。自分の感じたことや考えていることに正直な、子供のような一面があります。その一方で、やりたいことは後先考えずにやってしまったり、つい余計なひと言を言ってしまったりすることもしばしば。自分の心の赴くままに行動する姿が、他の人からすると羨ましく思えるのかもしれませんね。
「感性」を英語で言うと?
「感性」の英語表現は、「sensibility」や「sense」になります。「sensibility」は、刺激を心が敏感に感じ取ることや感じやすさが含まれます。感覚が鋭敏であるため、「感性が鋭い」と同じニュアンスになるでしょう。他人の言動に過敏に反応したり、美的・感情的な刺激に対して用いられます。
(例文)
・She painted with a rich sensibility.(彼女は豊かな感性で絵を描いた)
・That elementary school offers an education that fosters sensitivity.(その小学校では感性を育む教育が行われている)
「sence」は、「(視覚・嗅覚・味覚などの)感覚」「センス」のこと。五感で感じ取ることやその能力、または漠然とした印象や気持ちなど幅広い意味合いがあります。
(例文)
・She showed (an) excellent business sense. (彼女は、素晴らしい経営のセンスを示した)
・I have no sense of direction.(私には方向感覚がない、方向音痴だ)
・She was seized with a sense of urgency.(彼女は只事ではないと感じ取った)
最後に
「感性」とは、「物事を心で深く感じとること」。自分に自信がない人でも、直感で自分が好きだなと思うものを選んだり、興味のあることに挑戦してみることで、感性が徐々に磨かれていくことでしょう。良いものにたくさん触れて、自分自身の感性を育んでみてくださいね。
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