新しい命を授かった時、つわりは、多くの女性が経験しますよね。つわりの症状や重さには、個人差があるものの、吐き気や腹痛など、少なからず体調に異変を感じる方が多いでしょう。症状が重い時には、仕事に行けない場合も。
ですが、「つわりで仕事を休むことに、罪悪感がある」という方も少なくないようです。「つわりで休むのは、迷惑に違いない」と思い、無理をして出勤をしているという声も。また、「辛すぎるので、できれば休職したい」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、この記事では、つわりで仕事を休む時に知っておきたいポイントや、休職の基準も解説します。つわりが辛いという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
つわりで休むのは、甘えではない
「つわりで休むのは、甘えでは?」などと悩むこともあるでしょう。また、心無い言葉をかける人も、残念ながら、いらっしゃるようです。というのも、つわりは個人差があるため、必ずしも妊娠を経験した人全員が、同じ辛さを味わっているわけではありません。また妊娠を経験したことがない人や、男性からは、分かってもらえないことも。
理解のない人が、「つわりで仕事を休むのは甘えだ」と言うこともあるようです。ですが、実際には、つわりがひどい場合は、働ける状態ではないという人も。ここからは、法律で定められた産前休業前に、休職になるケースを解説します。
つわりによる休職の基準は?
労働基準法では、産前6週間(多胎の場合14週間)が産前休業の期間とされていますよ。なお、この産前休業は、労働者本人が「休みたい」と請求した場合、仕事をさせてはならない期間とされています。ですが、これより前に休職になることもありますよ。
つわりなどの症状がひどい場合、医師が「仕事を控えるように」と診断をすることも。本人が「気合いで乗り切ります」と言っていても、ドクターストップがかかることもあるようです。
なお、こういった医師の診断や指示を、会社にスムーズに伝えるために、「母健連絡カード」というものがあるのをご存知でしょうか? これは、妊娠後、定期的に受ける健康診査に基づいて、医師が仕事上で配慮すべきことを書いてくれるカードです。例えば、「自宅療養が必要」や、「長い時間立ち作業をするのは、控えるように」などのイメージですね。
このカードには、医療機関名や医師の名前も記載されるので、「ただ仕事をさぼりたいだけじゃないの?」などの、心無い疑いをかけられることも防げるでしょう。なお、会社は、この母健連絡カードに書かれた医師の指示に従って、必要な措置をする義務があるというのも、おさえておきたいポイントです。
参考:厚生労働省ホームページ 母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について
産前休業前に休職した方が良いケース
人によっては、「つわりがひどくても、仕事を休むべきではない」と思い込んでいることもあるようですね。仕事に行けない日が多くなると、「私って休みすぎでは?」と不安になることもあるでしょう。「職場に迷惑をかけたくない」という思いから、本当は辛いのに無理をして出社してしまうこともあるかもしれません。ですが、無理をする方が、かえって職場が混乱することもあるのです。
例えば、シフトに組み込まれている人が、急に休んだ場合、他の人を探す必要や、残った人で業務を回す必要が出てきますよね。最初から休職していた場合に比べて、「やっぱり今日はお休みします」という方が、影響が大きいことも。
実際に、「つわりで何度も急な欠勤や、早退をする社員がいて、できれば休職を促したい」という会社の声も聞きます。とはいえ、本人の意思を尊重する必要があるので、「妊娠したのだから、休職しなさい」と強制することは、難しいでしょう。
ですので、会社側は、「休職した方が良いのでは」と思っていても、言い出すことに慎重になっていることも。無理に休職をさせて、「マタハラだ」と言われないかと、気にしている可能性もあります。
また、無理をしすぎて、職場で業務中に倒れてしまったというケースも。「接客中だったので、お客様にも心配をかけてしまい、後悔した」という人もいらっしゃるようです。妊娠は、少なからず体に負担がかかるものですよね。気合いでどうにかなるものではありません。つわりが辛い場合は、「休むことは迷惑」と思わず、医師や会社と相談して、休職を考えてみると良いでしょう。
職場で気まずくならないポイント
つわりがひどくて、お休みが多くなる場合、気まずい思いを抱えている方も、多いのではないでしょうか? 特に真面目な人ほど、「申し訳ない」という気持ちになってしまうでしょう。ここからは、職場で気まずくならないように意識したいポイントを解説します。
1:感謝の気持ちをしっかり伝える
まず、周囲がフォローしてくれることに対して、感謝の気持ちをしっかり伝えるようにしましょう。人によっては、「職場にフォローしてもらうのは当然」という態度を取る人もいらっしゃるようです。「どうして感謝なんてしなければいけないの?」という意見もあるようですね。
たしかに、妊娠中の女性は、残業や休日出勤をしないことを請求できるなど、様々な権利があるのは事実。ですが、あまりにも感謝や配慮がないと、周りの人から良く思われない可能性が高いでしょう。「休みますから」と当然のような言い方をされるより、「サポートしてくださり、ありがとうございます」という言葉があった方が、印象は良いのではないでしょうか。
2:すぐに業務を引き継げるようにしておく
妊娠中は体調が不安定ですので、いつ休んでも良いように、自分しか分からないことは、なるべく減らしておくと良いでしょう。急な欠勤や早退になった時に、代わりの人が対応しやすいようにしておくのが重要です。
特に、担当業務が多い場合や複雑な場合、口頭だけでは引継ぎが難しいこともありますよね。しっかり業務の内容や進め方、現在の状況、次にやることなどを、書面にしておくのがおすすめです。
これは、つわりに限らず、病気や介護など、今後何かがあった時にも役立ちますよ。ちなみに、このように業務を整理してマニュアル化することで、無駄を省けることも。「妊娠をきっかけに、抱え込んでいた業務を見直して、仕事が以前より効率的にできるようになった」という人もいらっしゃるようですね。
最後に
この記事では、つわりで仕事を休む時に気を付けたいポイントや、休職の基準などを解説しました。つわりがひどいと、なかなか通常通り働くのが難しいということも、ありますよね。そんな方は、ぜひ参考にしてみてください。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン