「寿退社」の読み方や、意味を知っていますか? 「聞いたことはあるけれど、どういう意味か、実は知らない」という人もいらっしゃることでしょう。特に若い世代ですと、「寿退社を、定年退職のことだと思っていた」という人もいるようです。一方で、世代によっては、「寿退社という言葉が通じないことに、びっくりした」という声も。世代間で認知度が異なる言葉のようですね。
この記事では、寿退社の読み方や意味、寿退社する人へのメッセージの例文や、注意点などを解説します。
寿退社の意味と読み方
まずは、寿退社の読み方と、意味を見ていきましょう。寿退社は、「ことぶきたいしゃ」と読みます。寿退社の意味は、結婚を理由に仕事を辞めること。主に女性が、結婚を機に退職することを指すことが多い言葉です。
最近では、「女性は結婚後に、家庭に入るもの」という意識は、ひと昔に比べると薄れていっているでしょう。ですが、「女性は結婚したら、仕事を辞める」というのが当たり前だった時代も。また、今でも、結婚を機に遠方に引っ越しをする場合や、家業を継ぐなどの理由で、結婚して仕事を辞めるということは、十分あり得ますよね。このような時に、「寿退社」と呼ばれることも。
また、寿退社は、男性にもあることをご存知でしょうか? ここからは、男性の寿退社のパターンも見ていきましょう。
男性の寿退社とは?
まだ割合としては少ないかもしれませんが、男性が結婚後、家事や育児に専念するために、退職することも。ひと昔前であれば、「男性は仕事に専念し、女性は家事や育児に専念するもの」というイメージがあったかもしれません。ですが、最近では、結婚後に女性が仕事を続け、男性がいわゆる「主夫」になる家庭もありますよ。夫婦の在り方や価値観が、多様になってきているとも言えるでしょう。
また、男性の寿退社のもう一つのパターンが、年収や待遇を良くするために、退職すること。例えば、結婚を機に、より高収入な仕事や、安定した仕事へ転職するという男性もいるようです。
寿退社する人へのメッセージはどうする?
寿退社する人へのメッセージの例も、見ていきましょう。次の例文のように、結婚の祝福の言葉から始まり、退社する人との思い出や、感謝の気持ちも書き添えるのがおすすめです。
例文:「〇〇さん、ご結婚おめでとうございます。以前〇〇の業務を丁寧に教えていただき、本当にありがとうございました! 明るく幸せな家庭を築いてください」
また、親しくしていた人の場合、「また飲みに行きましょうね」や、「近くに来たら、ぜひ声をかけてくださいね」などと一言添えるのも良いでしょう。ただ、色紙に寄せ書きなどをする場合は、他の人が書き込むスペースにも気を付けつつ、長く書き過ぎないようにしてくださいね。どうしても長く書きたい場合、個別にメッセージや手紙を書くと良いかもしれません。
寿退社のメッセージの注意点は?
寿退社する人へのメッセージを送る際、注意したい点も見ていきましょう。寿退社というと、「おめでたいこと」というイメージをお持ちの方も、多いのではないでしょうか? 「寿」という漢字から、ポジティブなイメージを持ちやすいですよね。ですが、人によっては、そうではないことも。というのも、結婚を機に退職することを、本人が望んでいないこともあるからです。
例えば、結婚相手の仕事の都合で、遠方に転居するために退職をするという場合や、配偶者や家族からの説得で仕事を辞めるということも。また、配偶者の家業を継ぐためや、結婚後に収入が足らず、自分の好きな仕事を手放さざるを得ないという人も、いらっしゃるようです。
結婚は、様々な事情が絡み合ってくるものですよね。本当は仕事を続けたかった人が、同僚から、「寿退社っていいですね! 憧れます」などと言われ、複雑な気持ちになったという声も。「ご結婚おめでとうございます」と祝福しつつ、退職することに対しては、「いいですね」や「憧れる」などと言わないようにした方が良いでしょう。配慮を持ったメッセージを心がけたいですね。
寿退社という嘘はあり?
寿退社は、円満退職にしやすい退職理由だと思われがち。そのため、「寿退社です」と嘘をついてしまうケースもあるようですね。嘘をついてしまうケースを、パターンごとに見ていきましょう。
1:退職者本人が嘘をつくパターン
寿退社は、角が立ちにくい退職理由ですので、本当は結婚の予定がないのに「寿退社です」と言ってしまうケースもあるようです。もちろん、職場を退職することは、本人の自由ですので、退職すること自体に問題はありません。
ですが、会社の福利厚生等で「結婚祝い金」などが支払われるケースは、注意が必要です。実際は結婚をしていないのに、このようなお金を受け取ってしまうのは、詐取になってしまう可能性も。
また、同僚から、「結婚相手の写真を見せて」や、「結婚式や新婚旅行はどうするの?」など、色々と声をかけられることもあり得ますよね。結婚の予定がないのに、これらの質問に答えるのは、かなり難しいのではないでしょうか?
住んでいる地域が都市部ではない方は、退職後に同僚などと再会する可能性が高いことにも、気を付けましょう。実際に、退職後に街コンで元同僚にばったり会ってしまい、「あれ? 結婚したんじゃなかったの?」と言われ、冷や汗をかいたというケースもあるとか。いずれにしても、本当は結婚しないのに、寿退社だと説明するのは、避けた方が無難でしょう。
2:会社が噓をつくパターン
ハラスメントなどの問題があって退職する場合、会社が体裁を気にして、「寿退社ということにしてほしい」と言ってくることもあると聞きます。トラブルを表沙汰にしたくない上司が、自分の知らないところで、「〇〇さんは寿退社です」と職場に説明していたという話も。事なかれ主義の職場では、退職理由を寿退社だと言って、丸くおさめようとする傾向もあるようですね。
また、結婚後も仕事を続けたいのに、「結婚したなら、寿退社だね」などと会社側が誘導して、仕事を辞めさせようとしてくるケースも。もちろん、最近では、共働き家庭が増えているので、このようなことは少なくなってきたかもしれません。ですが、残念なことに、女性職員が結婚したとたんに、退職を暗に促されることは、まだなくなっていないのが現状です。
もし、今の職場に「女性は結婚したら、仕事を辞めるもの」という暗黙のルールがあったとしても、法的な根拠はありません。また、結婚したからと言って、寿退社を強制してくることは、男女雇用機会均等法違反になるということも、おさえておきたいですね。
参考:e-gov法令検索 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
最後に
この記事では、寿退社の読み方や意味、寿退社のメッセージの例や、注意点などを解説しました。今後、職場で耳にする機会があるかもしれませんので、参考にしてみてくださいね。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン