人事異動について、悩んだ経験はありますか? 人事異動は、「キャリアアップや、新しい人脈作りのチャンス」と捉えることもできますよね。ですが、中には、「せっかく仕事を覚えたのに、人事異動で、また振り出しに戻った」などの悩みをお持ちの方も、いらっしゃるようです。また、「仕事のモチベーションが下がってしまった」という声も。
この記事では、人事異動によってモチベーションが下がるパターンや、やってはいけない人事異動のケースなどを、解説します。異動が多い職場で働いている方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
人事異動でうつになる人も
人事異動は、昇進や、部署替え、担当業務の変更など、いろいろありますよね。人事異動には、組織の活性化や、社員個人の経験値アップなど、様々なメリットがあります。ですが、「一体どういうからくりで、こんな人事異動が決まったの?」という疑問を感じたことがあるという声も。
特に、望んでいない異動の場合、そう思ってしまう方もいらっしゃることでしょう。実際に、「人事異動で、仕事へのモチベーションが下がってしまった」という悩みもよく聞きます。
また、これまでがんばってきた社員が、人事異動で新しい仕事になったとたん、うつになって休職してしまったというケースなどもあるようですね。中には、会社を辞める人も。人事異動は、こういったリスクも伴うと言えるでしょう。
モチベーションが低下する人事異動3選
プラスの効果ばかりではない人事異動ですが、特にどのような人事異動が、モチベーションを低下させやすいのでしょうか? ここからは、モチベーションが低下する人事異動のパターンを解説します。
1:穴埋めの人事異動
欠員補充など、単なる穴埋めとしての人事異動に、モチベーションが低下するというケースは多いようです。これは「玉突き人事」と呼ばれることもあるようですね。
自動車の玉突き事故のようなもので、「巻き込まれた」という声も。人によっては、これをきっかけに、仕事のやる気が無くなってしまい、いわゆる「腐る」という状態になってしまうこともあるようです。
例えば、仕事で大きな問題を起こして、クビになった人の代わりの要員として、異動になるというのは、典型的な穴埋めの人事異動でしょう。実際、辞めた人と、たまたま「年齢が近いから」や、「その業務を経験したことがあるから」などの理由で、異動になったことがある人もいるようです。
本人のキャリアプランや、スキルアップ、適性などを考えない異動をさせられると、なかなかモチベーションが上がらないというのも、仕方ないかもしれませんね。
2:遠方への転勤
本人が望んでいないのに、遠方に転勤になった場合も、モチベーションが下がってしまうという話をよく聞きます。特に、引っ越しをしなければならない人事異動に、憂鬱な気分になるという人は、多いようですね。
家族や恋人、友人と気軽に会えないような距離に転勤になってしまうことで、孤独になり、心のバランスを崩してしまう人も。悪化すると、うつ病などになることもあり得ます。また、「どのみちまた地元に戻るから」と、転勤先での仕事に身が入らないという人もいるようですね。
3:希望と違う部署への異動
自分の希望と違う部署や、仕事内容になってしまったというのも、モチベーション低下の原因になります。もちろん、「新しい業務にチャレンジしよう」という前向きな姿勢で捉えられる人もいるかもしれません。ですが、やはり自分がやりたかった仕事ではない場合、「こんなはずでは」と思ってしまう人も、いらっしゃることでしょう。
会社としては、本人のスキルアップや将来のために、任せている仕事でも、なかなか前向きになれないという人も、少なくないようです。
やってはいけない人事異動とは?
基本的に、きちんとルールに沿っていて、業務上必要な場合は、人事異動は正当なものと判断されますよ。ですが、残念なことに、人事異動のシステムを悪用するケースや、正当ではない人事異動もあるようです。ここからは、「やってはいけない人事異動」のケースを見ていきましょう。
1:不当な理由の人事異動
「人を減らすため」や、「辞めさせたい」というような、不当な理由での人事異動は、やってはいけない人事異動の典型例です。
例えば、女性社員が妊娠したとたんに、遠方に転勤命令をするなど、追い出すことが目的と思われるようなケースも。また、辞めさせたい社員に対して、わざと望まない部署へ行かせるということもあるようですね。さらにひどいケースでは、上司からセクハラをされて、抵抗したところ、逆恨みで急な異動をさせられたという話も聞きます。
このような、人を辞めさせるためや、嫌がらせのためなどでの人事異動は、後から無効になることもありますよ。
2:職種や勤務地が限定されている場合
雇用契約を結んだ際に約束した仕事内容と、全く異なる業務へ一方的に変更することは、基本的にはできません。例えば、看護師という業務限定で雇っていた人を、本人が同意していないのに、洗濯の仕事に変えるなどは、不当になります。
また、「勤務地限定採用」などで雇った人に、いきなり遠方へ転勤命令をするというのも、同様ですよ。働く人が同意していないにも関わらず、約束を一方的に破るということは、できないということになります。
では、雇用契約を結ぶ際に、仕事内容や、勤務地が限定されていない場合は、どうなのでしょうか? いわゆる「総合職」と呼ばれるような働き方もありますよね。この場合、人事異動が合理的なものであれば、通常は拒否できないと思っておくと良いでしょう。
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 雇用関係紛争判例集
3:特別な事情がある場合
例えば、高齢の両親を、一人で介護しているなど、事情がある人もいらっしゃいますよね。このような人に、引っ越しをしなければいけないような人事異動があると、かなり難しいかもしれません。こういった特別な事情がある場合は、人事異動の命令が無効になることもあります。
もちろん、特別な事情というのは、このような「病気や介護など、どうしても難しい事情がある」ということですよ。単純に「今の仕事内容を変えないでほしい」や、「引っ越しが面倒くさい」というだけでは、特別な事情とは言えませんので、注意が必要です。
最後に
この記事では、社員のモチベーションが下がる人事異動のパターンや、やってはいけない人事異動のケースなどを解説しました。新しい仕事や環境に慣れるには、それなりのエネルギーを使いますよね。時には、自分が望んでいなくても、人事異動があることも。働く上で重要なテーマですので、参考にしてみてください。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン