目次Contents
この記事のサマリー
・「言及」とは、ある話題や事柄にまで言い及ぶこと。
・「触れる」は「あることについて少し述べる」というニュアンスがある。
・類語には「言い及ぶ」「論及」「暗示」などがある。
「この件については言及を避けたい」「会議で〇〇に言及があった」──ビジネスの現場や日常会話で、耳にすることのある、「言及」という言葉。正確な意味を問われると、説明に窮してしまう人も少なくありません。
「触れる」とどう違うのか、どのような場面で使うのが適切なのかを知っておくことは、社会人にとって大切な言語スキルです。
本記事では意味を確認し、具体的な使い方や言い換え表現、英語表現をわかりやすく紹介します。
「言及」とは? 意味と「触れる」との違いを確認
まずは「言及」という言葉の意味を正しく理解することが大切です。
「言及」の読み方と意味
「言及」は「げんきゅう」と読み、ある事柄にまで言い及ぶことを指します。『デジタル大辞泉』(小学館)には「あえて古い事件に言及する」といった例文があり、特定の話題を取り立てて述べる場面に使われます。
辞書では次のように説明されていますよ。
げん‐きゅう〔‐キフ〕【言及】
[名](スル)いいおよぶこと。話がある事柄までふれること。「あえて古い事件に―する」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
日常会話からビジネスまで、広く使われるのが特徴です。
「言及」と「触れる」の違い
「言及」と似た表現に「触れる」があります。『デジタル大辞泉』(小学館)によれば、「触れる」は「言及する」という意味を持つと記載されているため、類語だといえます。
ただし、「触れる」は「あることについて少し述べる」というニュアンスにとどまる点が違いだといえるでしょう。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)

「言及する」の具体的な使い方
意味を理解したら、次は使い方です。特にビジネス文書や日常会話での自然な表現方法を知ることで、自信を持って使えるようになります。
「本日の会議では、新しい人事制度についても言及がありました」
特定のトピックが会議の中で取り上げられたことを客観的に伝える表現。議事録にも適しています。
「契約条件の詳細については本メールでは言及を控え、別途ご説明の機会を設けさせていただきます」
ビジネスメールで使える例文です。あえて触れないことを丁寧に伝える用法で、慎重な姿勢を示す際に効果的。
「言及すべきなのは、視聴者が本当に知りたいであろうことだ」
発信側が選ぶべき話題を強調する文。視聴者の関心を中心に据えて「触れるべき対象」を示すのに「言及すべき」が使われています。
「経営陣が会社の負債について言及を避けたため、会場の雰囲気は一変した」
聴衆が知りたい情報を避けた結果、場の空気が変化したことを表しています。「言及を避ける」は単に触れないだけでなく、受け手に不信感や緊張感を与えることもある言い回しです。

「言及」の類語・言い換え表現
「言及」と近い意味を持つ表現はいくつかあります。場面に応じて言い換えができると、表現の幅が広がり、文章や会話に適切なニュアンスを添えられます。以下に代表的なものを紹介しましょう。
「言い及ぶ(いいおよぶ)」
「言い及ぶ」とは、その話題や内容に関係して言葉が及ぶことを指し、「言及する」とほぼ同義で用いられます。
例えば「会議の中で新制度の課題にまで言い及んだ」といえば、話の流れがそのテーマにまで広がったことを表現できます。
「論及(ろんきゅう)」
「論及」は、議論や考察の中でその事柄にまで言い及ぶことを表します。『使い方の分かる類語例解辞典』(小学館)でも「細部にまでわたって論及する」とあるように、より掘り下げて論じる場面で使われます。
専門的な分析や詳細な議論を伴う場合には「論及」を選ぶと適切でしょう。
「暗示(あんじ)」
「暗示」は、はっきりと述べずにそれとなく知らせることを意味します。一見すると「言及」と異なりますが、遠回しに触れる場合には言い換え表現として用いることができます。
例えば「彼の発言は改善点を暗示していた」という場合、直接的に「言及した」とは言わずとも、対象に触れているニュアンスが伝わりますね。
参考:『使い方の分かる類語例解辞典』(小学館)

「言及」の英語表現は?
英語で「言及」を表現する際には、次のような単語やフレーズが使われます。
reference:ある事柄に触れる、言及する
mention:簡単に述べる、軽く触れる
refer to ~:~について言い及ぶ、~に関して言う
speak to ~:~について話す、~に触れる
いずれもビジネスシーンや会議のやり取り、メール文面などで頻繁に用いられる表現です。
「言及」に関するFAQ
ここでは、「言及」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「言及がない」とはどういう意味ですか?
A. ある会話や文章で、その話題に触れられていないことを指します。
例えば「報告書には新制度への言及がなかった」と言えば、その話題が取り上げられていないことを意味します。
Q2. 「言及を避ける」とはどんなときに使いますか?
A. 特定の事柄にあえて触れない場合に使われます。
例えば「経営陣は負債についての言及を避けた」と言えば、そのテーマに触れない判断をしたことを示します。
Q3. 「言及」と「論及」の違いは?
A. 「言及」は一般的な表現で、幅広く使われています。一方「論及」は、より掘り下げて論じ及ぶ場合に使われます。
最後に
「言及」は日常の会話ではあまり使いませんが、ビジネスシーンや報道、論議など使われるシーンはさまざま。意味を正しく理解しておくことで、相手に伝わりやすく、スマートな表現が可能になるでしょう。特に「触れる」「論及」との違いや、英語表現をあわせて身につけておくと、表現の幅がぐっと広がりますよ。
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