「有給が取れない」と悩んだことはありませんか? 特に、人手不足で忙しい職場の場合、「有給の権利はあったとしても、人がいないから休めない」というお悩みをお持ちの方も、いらっしゃるかもしれません。有給を取りたいと言ったところ、上司から嫌な顔をされたという話も聞きます。また、休みにくい雰囲気の会社では、有給について、何の説明も受けていないということもあるようですね。
そこで、この記事では、有給の権利についての概要や、違法なケース、有給が取れない時の対応法を解説します。有給は、働く上で重要なキーワードですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
有給とは
「有給」とは、「年次有給休暇」という休暇制度を略した言い方です。「年休」と呼ばれることもあるようですね。法律上、有給の権利は、次の要件の全てを満たした人に与えられますよ。
・入社した日から6か月経っていること
・その期間中の働くべき日のうち、8割以上出勤していること
有給の日数は、働く日数によって変わってくるということもポイントです。例えば、週5日、1日8時間のフルタイム勤務の人であれば、通常は、入社半年後に10日分の有給の権利が発生することになりますよ。
パートタイムの人など、働く日数が少ない場合、比例して有給の日数も少なくなります。条件さえ満たせば、正社員でなくとも、有給の権利があるということも、意外と見落とされがちなので、おさえておきたい点ですね。
有給にまつわるよくある誤解3選
残念ながら、有給制度には誤解も多く、正しく認識している会社が全てではないようです。ここからは、有給のよくある誤解を見ていきましょう。
1:アルバイトやパートは有給がない?
「有給は正社員だけの権利」というのは、非常によくある誤解です。まず、有給は、アルバイトやパート、契約社員であっても、一定の条件を満たせば権利があるということを、おさえておきましょう。
なお、所定労働日数に応じて、有給の日数は変わってきます。この仕組みを「比例付与」と言いますよ。比例付与の条件や、有給日数は、厚生労働省のホームページに一覧表がありますので、参考にしてみてくださいね。
参考:厚生労働省ホームページ
2:有給の権利は1年で消える?
「有給は、1年で使い切れなければ、有効期限が切れてしまう」という誤解をお持ちの方もいらっしゃるようですね。あまり労務面に詳しくない会社では、「有給の時効は1年だと思っていた」という話も聞きます。
ですが、正しくは有給の時効は2年ですよ。ですので、仮に、その年中に使い切れなかった有給があったとしても、翌年まで持ち越すことができます。また、条件を満たせば、繰り越した分とは別に、毎年新たに有給が発生するということもポイントですよ。
例えば、10日間の有給がある人で考えてみましょう。この人が、有給を使い切れず、3日分残した場合、この3日は、翌年に繰り越すことになります。そして、新たに11日分の有給の権利を得た場合、繰り越した分と合わせて、合計14日分の権利があるということですね。「有給の時効は、2年」ということを覚えておきましょう。
3:中小企業には有給がない?
「うちは、小さい会社だから、有給はない」と説明されたことがある人も、いらっしゃるかもしれません。ですが、これも誤解です。会社の規模に関わらず、有給は、条件を満たす限りは、権利があるということを、おさえておきましょう。
有給を取れない雰囲気がある時は?
有給を取れない時に、「どこに相談するべきなの?」というお悩みをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。なんとなく、こういった労働問題については、「労働基準監督署に相談するもの」というイメージをお持ちの方も、いらっしゃるかもしれませんね。もちろん、それも間違っていませんが、まずは、上司や人事部など、社内で相談することも考えてみましょう。
例えば、「周りの人が休んでいないので、なかなか有給を取りにくい」という場合や、「新人は有給を取るべきではない」など、「取りにくい雰囲気」があるという場合もありますよね。その場合、まずは上司に、有給を取りたいという意志を、やんわりと伝えてみると良いでしょう。
中には、「有給は取れない」と思い込んでいた人が、「通院のために有給を使いたいのですが、よろしいでしょうか?」などと上司に相談したところ、あっさり休めたという人もいるようです。周囲の人も「みんな取っていないから」と気を遣って、「誰か言い出してくれないかな」と、顔色を窺い合っている職場もあると聞きますよ。
上司に有給を取れないと言われたら?
残念なことですが、有給を取りたいという部下に対して、冷たく対応する上司もいるようです。ひどいケースだと、上司に有給を取りたいと相談したところ、「仕事のやる気がないなら、辞めなさい」と言われたという人もいるようですね。また、「休むのは勝手だけど、ボーナスの査定や、人事評価にはマイナスになるよ」などと脅しをかけて、有給の希望を取り下げさせるというケースも聞きます。
では、このように、上司に有給を拒否された場合はどうなるのでしょうか? まず、大前提として知っておきたいのは、有給は法律で定められている労働者の権利ということ。基本的に、「どうしても、その日に休んでもらうわけにはいかない」という明確な理由がないのに、有給を取らせないということはできません。
最近では、働き方改革などの動きによって、有給が全く取れないという会社は、少なくなってきているかもしれません。ですが、上司の意識によっては、有給を拒否する、圧力をかけるなど、違法なことが行われている職場もあるようですね。
直属の上司がこういうタイプの人の場合、さらにその上の上司や、人事部、場合によっては労働組合など、他に社内で相談できるところがないか考えてみましょう。実際に、上司が部下の有給の申し出をもみ消していて、会社の人事部がそれを聞きつけ、厳重注意をしたというケースもあります。
ただ、社内では、どうしようもない時もあるかもしれません。残念ながら、会社全体に、「有給を取らせない」という空気があることもあり得ます。その場合は、労働基準監督署など、外部の機関への相談を考えてみてくださいね。
最後に
この記事では、有給にまつわるよくある誤解や、有給を取れない時の対応策などを解説しました。仕事を一生懸命にしていると、知らず知らずのうちに疲労がたまっていることも。有給を活用して、リフレッシュするために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン