「病欠」という言葉の意味を知っていますか? 学校の出席確認などで、「〇〇さんは今日、病欠です」などと、先生が言っていたのを思い出したという方も、いらっしゃるかもしれませんね。また、会社などでも耳にする機会があるかもしれません。
では、病欠とは、具体的にどのような場合に使う言葉なのでしょうか? 特に、会社での病欠は、どのような扱いになるのか、給料や有給休暇との兼ね合いも気になるところですよね。そこで、この記事では、病欠の意味や、年次有給休暇、給料との兼ね合いなどを解説します。
病欠の意味は?
病欠とは、病気によって学校や仕事、会合などを欠席すること。本来出席するべき義務があったものに対して、病気でお休みをするというようなイメージですね。
ちなみに、「欠席」ではなく、「病欠」というような言葉をあえて使う背景には、「やむを得ない」というニュアンスを伝えたい意図があることも。
例えば、大事な会議で、欠席した人がいた場合で考えてみましょう。この際、「〇〇さんは欠席です」と言うと、「なぜ来ないのか?」と噂されることもあるようです。「まさかこのプロジェクトに不満がある?」や、「やる気がないのでは?」などと誤解されてしまうこともありますよね。
これに対して、「〇〇さんは病欠です」と聞くと、こうした勘繰りや、不信感が和らぐという声もあるようです。
病気はしないに越したことはありませんが、誰しも体調を崩してしまうことはありますよね。特に、ここ数年では、新型コロナウイルスなどの感染症の流行もありました。一昔前では、「熱があっても、咳があっても、絶対に出社してこい」などと根性論の雰囲気がある会社もあったでしょう。ですが、最近では、こうは言っていられませんよね。そのため、病気によってお休みすることは、やむを得ないと考えられることが一般的です。
病欠で有給休暇は使える?
病欠の場合、「欠勤」という扱いになり、賃金が減ってしまうのが原則ということを、ご存知でしょうか? 例えば、1日病欠をした場合、その分が給料から差し引かれるイメージですね。ですが、有給休暇を使えることもあります。ちなみに、有給休暇には、原則以下のような要件がありますよ。
・継続して半年以上雇用されている
・全労働日のうち、8割以上勤務している
参考:厚生労働省ホームページ
この2つの要件をどちらも満たした時点で、フルタイム勤務の人の場合、通常は年10日間の有給休暇の権利が発生します。そして、その後、勤続年数に応じて、年間の有給休暇の日数が増えていきますよ。ただ、会社によっては、入社から半年経っていなくても、有給休暇の権利をもらえることも。
なお、有給休暇の残日数は、給与明細や、勤怠システムから確認できる会社もありますので、一度確認してみてくださいね。それでも分からない場合、有給休暇の申請方法などと合わせて、直属の上司に聞いてみると良いでしょう。
また、「病欠の時に、有給休暇を使いたくない」という人もいるようですね。例えば、有給休暇の残り日数が少なく、あえて欠勤扱いにしてほしいということもあると聞きます。
原則、有給休暇の権利を使うか使わないかは、本人の自由。ただ、まずは会社に相談するのがおすすめですよ。というのも、欠勤扱いになると、お給料が減るだけでなく、人事評価や昇給、ボーナスの査定にマイナスになるなど、色々な影響があり得るからです。
中には、よかれと思って、上司や人事担当者が「有給休暇扱い」として処理してしまうケースも。「勝手に有給休暇を使われた」とトラブルになることもあるようです。「有給休暇の日数を残したい」と安易に考えず、人事評価や給料との関係などを会社に確認して、冷静に考えるのが安心ですね。
メールで病欠連絡はあり?
病欠の連絡方法に悩むという方も、いらっしゃるのではないでしょうか? 会社への病欠連絡は、直属の上司に電話で連絡するのが一般的です。メールでは、迷惑メールフォルダに入ってしまっていることや、誤送信、見落としなどの可能性があるからですね。ですが、最近では、テレワークなどで事情も変わってきているようです。
上司も在宅勤務の場合、家族との兼ね合いで、早朝に電話されると対応しにくいこともあり得るでしょう。そのため、メールやチャットツールでの連絡が許されている会社もありますよ。
また、最近では、「仕事のペースを乱さられるので、電話自体を控えてほしい」という上司もいるようですね。価値観が多様化していますので、会社のルールや社風に合わせて対応するのがおすすめですよ。
なお、メールで連絡する際、気をつけたいのが、文章の書き方です。極端な例ですが、「体調が悪いので今日休みます」などと、謝罪も挨拶もなしの文面だと、印象は良くないですよね。
また、受け取った上司からすると、業務への影響も気になるところです。何か代わりに対応してほしいことや、緊急で行わなければいけない業務がある場合は、その旨もしっかりと共有しましょう。
とはいえ、あまりに長々と文章を書いてしまい、結論が分からなくなってしまうことも気をつけたいところ。体調不良でお休みをしたいということと、業務の引き継ぎの有無など、要点をまとめて書くように意識してくださいね。有給休暇を使えるのかどうかなど、確認したいことがある場合は、その旨も合わせて、簡潔に記載しましょう。
一文はあまり長くせずに、箇条書きなどで、「以下事項を確認させてください」などと書くと、分かりやすくなりますよ。
病欠の注意点は?
病欠で注意したいことも見ていきましょう。まず、あまりにも病欠が相次ぐ場合は、注意が必要です。いくら体調不良でも、連続すると、だらしない印象を抱かれてしまうことも。また、ボーナスや昇給の査定に響いてしまうこともあります。体調管理は、日ごろから気をつけたいですね。
ただ、会社に行こうとすると身体が動かない、吐き気や頭痛が止まらないなどの場合、精神的な疾患の可能性もあります。長引くと悪化してしまうこともありますので、医療機関の受診も考えてみてくださいね。
また、病欠した後に出社した場合、上司や同僚にしっかり挨拶をしましょう。病欠の後に、何事もなかったかのように出勤していると、印象は良くありませんよね。仕事ですので、お休みをすることによって、少なからず業務に影響があるのは確かです。もちろん、過度に謝罪する必要はありませんが、周囲への感謝や、気遣いの言葉が一言あるだけでも、かなり印象が変わりますよ。
最後に
この記事では、病欠の意味や、年次有給休暇、給料との関係、注意点などを解説しました。病気はなるべく避けたいところですが、誰しも体調を崩してしまうことはありますよね。知っておくと、いざという時に役立つでしょう。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン