「望む」「臨む」「挑む」の違い、知っていますか?
「望む」「臨む」「挑む」はなじみ深い言葉ではありますが、「あら? どちらを使うんだったけ?」などと一瞬迷ってしまうこともあるのではないでしょうか? そこで改めて、それぞれの正しい意味を解説します。
「望む(のぞむ)」の意味
そうありたい、そうなってほしいと心に思うことや欲すること。つまり「願望」です。遠くを見る、眺める、見渡す意味もあります。遠くを眺めるための「望遠鏡」にも「望」の字が使われていますね。
「臨む(のぞむ)」の意味
ある状況に直面している、そして、そこに身を置く、参加するという意味です。さらに、その状況を乗り越えるという覚悟を表すときも「臨む」を使います。ある場所や風景が何かに面している場合も「臨む」。たとえば授業で習ったような「臨海工業地帯」は、海に面している工業地帯という意味です。
「挑む(いどむ)」の意味
「挑む」は、挑戦する、立ち向かう、あるいは相手にしかけるという意味。たとえば「試合に挑む」は試合をすることであり、勝利へと「挑戦する」わけです。
【まとめ】「望む」「臨む」「挑む」の違い
ロケーションの場合、「望む」は遠く、「臨む」はすぐ目の前。また心情的には、「望む」は願いや期待、「臨む」は現実の状況、それに対する真剣さや意欲を表すなど、同じ読みでも使い方は正反対ともいえます。
「臨む」と「挑む」はどうでしょう。試合を例にとれば、「臨む」は試合に参加する、試合の現場に身を置く、試合に対する覚悟を表します。よく試合前のアスリートにインタビュアーが、「どんな思いで試合に臨みますか?」などと聞きますが、これは覚悟のほどを聞いているわけです。「挑む」は「試合で勝利することに挑戦する」「相手に立ち向かう」などチャレンジするという意味合いになります。このあたりは、例文を参考にうまく使い分けてくださいね。
「望む」の使い方を紹介
心情とロケーション、2つの意味で使われる「望む」の例文を紹介しましょう。
1:「私はあなたの成功を望んでいます」
あなたに成功してほしい、という「願望」を表しています。また、類義語として「祈る」「願う」「欲する」「求める」などがあります。
例文の言い換えとしては、
・「私はあなたが成功することを祈っています」
・「私はあなたが成功することを願っています」
・「私はあなたたに成功してほしいと思っています」
などがあげられ、「望む」が願望であることがよくわかります。
2:「部屋から富士山を望むことができます」
富士山は遠景です。近景の場合は「富士山が目の前に見えます」という風になります。ロケーションの場合の類義語は「見渡す」「見晴らす」「一望する」など。言い換えると、以下のようになります。
・「部屋から富士山を見渡すことができます」
・「部屋から富士山を見晴らすことができます」
・「部屋から富士山が一望できます」
「望む」とは遠めに全体を悠々と見るイメージです。
「臨む」の使い方
目の前の状態や風景、場所などを指す「臨む」の例文です。
1:「今から会議に臨みます」
「臨む」を使うことで、会議の重要性を認識していることを伝えられます。言い換えると「今から会議に出席します」。
2:「この難局に全力で臨みます」
難しい状況に直面している場合で、それを乗り切るために、「自分の能力を最大限に発揮します」という意欲や覚悟を伝えることができます。
類義語には「全力を尽くす」「力を発揮する」などがあります。言い換えると「この難局を乗り切るため全力を尽くします」。「臨む」には真剣さ、覚悟、意欲等が含まれます。
3:「別荘は海に臨んで立っています」
別荘は海のすぐ近く、「海と向き合って立っています」という意味です。
海に近いけれど海沿いではなかったり海に面していない場合には、たとえば「別荘は海のそばに立っています」と言うほうが適切でしょう。
「面する」や「沿う」という言葉で言い換えることができます。
・「別荘は海に面して立っています」
・「別荘は海に沿って(あるいは、海沿いに)立っています」
「臨む」の距離は自分から見てごく近くである、というのがポイントです。
「挑む」の使い方
「挑む」は、相手や物事への挑戦を意味します。その使い方を紹介しましょう。
1:「今、新しい商品の開発に挑んでいます」
「挑む」を使うことで、「商品の開発に挑戦中」という状況とチャレンジ精神の両方を表すことができます。類義語は「挑戦」のほか「立ち向かう」「努力する」「試す」「試みる」など。
言い換えると、以下のようになります。
・「今、新しい商品の開発に立ち向かっています」
・「今、新しい標品を開発するために努力しています」
・「今、新しい商品の開発を試みています」
など。「挑む」はチャレンジやトライする、とも言い換えられますね。
2:「彼との論戦に挑む」
彼との論戦を前にして、挑戦者としての気持ちを伝えているイメージです。
類義語には「しかける」「競う」「戦う」などがあり、状況に応じて、
・「彼に論戦をしかける」
・「彼と議論を戦わせる」
・「彼と論戦を競う」
などと表現できます。「挑む」はしかける場合も、競い合う場合にも使うことができるのです。
最後に
「望む」と「臨む」、「臨む」と「挑む」を対比しながら紹介してきました。使い分けのコツのひとつは熟語を作ってみること。望むなら「願望」「遠望」「一望」、「臨む」は「臨海」、その場に行くという意味の「臨場」や「臨席」など。ふたつの「のぞむ」の距離感や使い方の違いが掴めますね。「挑む」は「挑戦」「挑発」など、チャレンジしたり相手にしかけるということがよくわかります。試してみてくださいね。
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