自律と自立の違いは?
先輩や上司から、「ジリツテキに業務にあたるように」と、促された方もいらっしゃるのではないでしょうか? この場合の「ジリツ」とは、自律と自立のどちらか。よく耳にする言葉でも、間違った捉え方をすれば、仕事に影響を及ぼすことが考えられます。本記事では、自律と自立の違い、自律を身につけるコツや効果、注意点を解説しますね。
自律とは、他からの支配や制約を受けず、自分の規範に従って行動すること。自立とは、他からの支配や助力を受けずに、行動することを言います。
わかりやすく言うと、自律は考え方や価値観といった内的要因に関して、他からの支配や制約を受けずに行動できること。つまり、精神的に独り立ちできている状態です。自立は、経済力や身体といった外的要因について、他に依存せず自分の力だけで行動することを指します。社会的・経済的な行動に対して使われる言葉と言えるでしょう。
「彼は自律的に仕事に取り組んでいる」「彼女は親元から離れ、自立した生活を送っている」という使い方をします。
ビジネスシーンにおいて、自律している人とは、自分で仕事の意義や価値を見い出し、目標を定めて業務にあたる人のこと。指示されなくても、自ら考えて行動できます。他方、自立している人とは、仕事の方法を習得し、仕事をすることで生活を維持している人を指すのです。
似たような言葉に、自主性がありますが、こちらは、自分から率先して行動することを指します。自律のように、自らの規範に従うといったニュアンスはありません。間違った使い方をしないように、注意しましょう。
自律を身につけるには?
自律した精神を培うには、どのようなことが必要なのでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
1:自分を知る
自分という人間がどんな人間なのか、深堀することが大切です。どんなことに興味があるのか、どんなことが得意なのか、どんなことが好きなのか。もしくは、苦手なことはどんなことか、どんなことで失敗しやすいのか、などです。
ポジティブなこともネガティブなことも、自分という人間をしっかり把握することで、自分の規範が出来上がっていくと言えます。自分の取説を作ると、イメージすればわかりやすいかもしれませんね。
2:他人と比較しない
「あの人に比べて自分はダメだ」「この人のようにうまくできない」。他人と比較して自分を卑下しているようでは、自律した精神は生まれにくいと言えます。
自分よりできる人を羨ましく思ったり、嫉妬してしまったりする気持ちは、誰もが少なからず持っているもの。それでも、「他人は他人、自分は自分」と強い気持ちを持つことが重要です。
キャリア自律の効果と注意点
「キャリア自律」とは、従業員が仕事の意味を見い出し、キャリアの目標と計画を描き、社会の変化を捉え、主体的に学び、自身のキャリアを開発することを言います。
今までのように、長く会社に勤めることで、業務や経験を通して自然にキャリアが形成されるという考えでは、個人の成長や企業の発展は難しいかもしれません。
今後は、従業員一人ひとりが自分の能力を発揮できるように、主体的にキャリアを選択することを企業側も研修などで、サポートすることが必要になってきます。ここでは、キャリア自律の効果と注意点について解説。
1:キャリア自律の効果は?
・業務の効率化が進む
従業員にキャリア自律の考えが根付くと、自らの考えに沿って目標を立て、何をすべきかを考えて行動に移すので、無駄なことは省いていき、業務の効率化につながります。
また、自分の行動に責任感を持つことになり、目標が達成できなければ、修正・改善を行います。結果的に、生産性や仕事の質の向上、企業の好業績にもつながるでしょう。
・会社への愛着がわく
企業がキャリア自律をサポートすることで、従業員は「自分を大事にしてくれている」と、自社に対して、魅力を感じることになります。このような企業風土が広がっていけば、優秀な社員も集まりやすくなるでしょう。社員のレベルアップが期待でき、企業力も上がることになります。
・臨機応変な行動をとれる
今までの踏襲や上司の指示で動くのではなく、自らの考えや価値観に沿って行動することにより、柔軟な行動がとれると言えます。
例えば、リモートワークになった場合でも、自分の規範に基づいて仕事ができるので、その都度、状況に応じた対応をとることができるでしょう。自分で仕事を進める充実感も味わえるので、モチベーション向上も期待できます。
2:キャリア自律の注意点
・転職する社員が増える
企業がキャリア自律のサポートをすることにより、従業員が自身のやりたいことや特性などに気づき、社内で実現できそうにないと判断した場合、転職を促進してしまうことも考えられます。
副業や兼業を認めるなど、会社を辞めずに従業員の能力を発揮できる機会を設けるなど、企業側も柔軟な対応をとることが必要になってきます。
・社内体制の充実・整備
キャリア自律に積極的な従業員は、社内でのポジションに対しても高い望みがあると考えられます。自ら身につけたスキルを相応のポジションで発揮できなければ、モチベーションのみならず、社内エンゲージメントも低下しかねません。
従業員が、自身のスキルや能力で活躍できるようなポジションや、場の提供をできる社内体制を構築しておくことも大切です。
最後に
本記事では「自律」と「自立」について、解説しました。自分で考えて行動できる人材は、今後ますます必要になってくるでしょう。今までのように、指示待ちで言われたことをやるだけの人材は淘汰されていくと考えられます。
社内でキャリア教育を受ける機会がない場合は、自ら外部でさまざまな研修に参加し、その場で出会う人々から刺激や学びを得ることが重要ですね。
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