「有終の美を飾る」とは?
「有終の美を飾る」という言葉を聞いたことはありますか? 「ゆうしゅう」という響きも「有終の美」を「飾る」という漢字も、とても美しい日本語らしさが出ていますよね。この言葉は、退職や引退などに際して使われることが多いです。
本記事では、「有終の美を飾る」の意味や英語表現、使い方、類語表現などを紹介します。ぜひ、美しい日本語のレパートリーを増やすきっかけにしてみてくださいね。
「有終の美を飾る」の意味
「有終の美を飾る」とは、「物事を最後まで立派にやり通す」ことを指します。また、「結果が立派である」という意味もありますよ。読み方は「ゆうしゅうのびをかざる」です。ですので、「優秀の美を飾る」と書き間違えないように気を付けてくださいね。
「有終の美を飾る」の「有終」という言葉についても少し深堀りしてみましょう。言葉の出典は、中国に古くから伝わる古典『詩経』の「初め有らざるなし克(よく)く終わり有る鮮(すくな)し」という文です。「有終」とは、「終わりを全うすること」という意味があります。
つまり、「有終の美を飾る」は「最後を全うして美しく締める」というポジティブなニュアンスです。
「有終の美を飾る」の英語表現
「有終の美を飾る」というニュアンスを英語で表現するにはどうしたら良いのでしょうか? 直訳ではなかなか難しそうですよね。
「有終の美を飾る」は、「最後までやり通す」というニュアンスがあります。このニュアンスは英語だと「to perfection」で表現することができますよ。例えば、「She worked her tasks to perfection」で「彼女は自分の仕事を有終の美で飾った」と表現可能です。
「有終の美を飾る」の使い方を例文で紹介
「有終の美を飾る」の意味や英語表現は押さえられましたか? これらを踏まえて、続いては「有終の美を飾る」の使い方を紹介します。
1:「彼女は今回の大規模プロジェクトを成功させ、有終の美を飾って退職した」
「有終の美を飾る」は退職や引退、卒業などを締めくくる言葉として用いられることが多いです。「飾る」という言葉があるので、締めくくりにふさわしい出来事と並べて使われる傾向にあります。この例文では、大規模プロジェクトがそれに当たりますね。
2:「お世話になった先輩方はみなさん有終の美をもって引退された」
「有終の美を飾る」は「有終の美をもって」と変化させて使うこともできます。これらの言葉は目上の方に対して使うことのできる便利な表現です。オフィシャルな場面や敬意を伝えたい相手に対して使うことができます。
3:「私ひとりでは決して達成することはできませんでした。みなさんの協力のおかげで有終の美を飾ることができました。御礼申し上げます」
「有終の美を飾る」は、スピーチなどの場面でも使うことができます。「成功を収めることができました」といった表現でも良いですが、「有終の美を飾る」と言うと知的でより魅力的に感じられるのではないでしょうか?
「有終の美を飾る」を使うときの注意点
退職や卒業などの一大イベントに使える汎用性の高い言葉ですが、いくつか押さえておいた方が良いポイントがあります。注意すべき場面は、人が亡くなったときと結婚式です。
「有終の美を飾る」には「終わり」に対してポジティブなニュアンスがあるため、死に際して悲しみを表現する言葉としては良くありません。同じ理由から、結婚式での使用も避けましょう。
「有終の美を飾る」の類語表現にはどんなものがある?
最後に、「有終の美を飾る」の類語表現について紹介しますね。「有終の美を飾る」をサラッと使えたら格好良いですが、繰り返してばかりいるとくどくなってしまいます。
そこで、別の表現も押さえておきましょう。
1:掉尾を飾る
「掉尾を飾る」の「掉尾」とは、「最後に物事の勢いが盛んになる」「最後」という意味を持つ言葉です。読み方は「ちょうび」ですが、慣用句読みで「とうび」とも読みます。
つまり「掉尾を飾る」とは、「物事が良い方向で終わること」という意味になるのです。「数々の伝説を生みだしたあのサッカー選手は、引退試合でも見事なプレーを見せて掉尾を飾った」のように使います。「有終の美を飾る」と置き換えることができる表現です。
2:最後を飾る
「最後を飾る」は読んで字のごとく、「物事の最後にふさわしい事柄」を指します。「有終の美を飾る」と置き換えることができますが、「有終の美」には「立派な」や「すばらしい」などのニュアンスが強調されている点が「最後を飾る」との違いだと言えるでしょう。
「最後を飾るのにふさわしい展示だった」のように使います。
3:ハッピーエンド
「有終の美を飾る」はややかたい印象がある表現です。友人に対してなど、カジュアルな場面では「ハッピーエンド」を使うのがおすすめ。「幸せな終わり」という意味で、とどのつまり「有終の美を飾る」ということですね。
「最初はどうなるかと思ったけど、なんだかんだハッピーエンドになったね」などと使います。
最後に
本記事では、「有終の美を飾る」について詳しく見ていきました。「有終」そのものの意味や、英語表現、使い方は押さえられましたか? 「有終の美を飾る」とは、「物事を最後まで立派にやり通す」というポジティブなニュアンスの言葉で、ビジネスシーンや目上の人に対して使うことができます。
その一方で、お葬式や結婚式など使うのにふさわしくないシーンもあるので注意しましょう。記事の後半では類語表現も紹介していますので、場面に合わせてぜひ応用してみてくださいね!
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