バイアスとは?
「あの人は明るくて元気がいいから仕事ができる」「この人は体育会系だから営業に向いている」。こんな風に考えたことがある方も、多いのではないでしょうか?
バイアスは、誰もが多少は持っているものだと言えます。一方で、バイアスが強すぎると、誤った判断をしてしまう恐れも…。本記事では、バイアスの意味や種類、ビジネスに及ぼす影響を紹介します。
バイアスとは、偏見や先入観を言います。アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とも呼ばれ、そうとは意識していなくても、物事の捉え方に偏りが生まれることです。
普段の生活やビジネスにおいては、誰もが自分の経験や知識をもとに判断を行います。知らないうちに、偏見や先入観を持ってしまうのも無理はありません。しかしながら、そのままでは、適切な判断はくだせないのではないでしょうか?
特にビジネスでは、バイアスが従業員のモチベーションの低下や、ハラスメントの発生、新入社員の早期離職など、多くの弊害が生まれる要因にもなります。バイアスに関する考え方や対処法を知ることは、企業の組織運営に必要なことと言えるでしょう。
ファーストステップとして、自分が持っているバイアスについて気づき、公平で客観的に物事を捉えることが重要になります。
バイアスの種類
バイアスには、いくつか種類があります。これを機に覚えてみてください。
1:ハロー効果
その人が持つ目立った特徴をもとに、その人の評価が歪められてしまうこと。特定の能力の評価が高いと、関係のないところについても高く評価してしまうことを「ポジティブ・ハロー効果」、その逆で、特定の能力が低いとそれ以外の部分についても評価を低くしてしまうことを「ネガティブ・ハロー効果」と言います。
相手の目につく印象だけで全体を評価すると不公平な人事評価になりかねず、社員のモチベーションが低下することも考えられます。
2:同調性バイアス
行動を起こす時に、今までと同じ方法や、多くの人と同じ行動をとること。ビジネスにおいて、同調性バイアスが働くと、今までと同じことが踏襲されやすくなります。また、新しい考えが出にくく、多数派の意見が通りやすくなるようです。その結果、チャレンジ精神やイノベーションが育たない組織環境に陥ることが考えられます。
3:生存者バイアス
成功経験ばかりに目が行き、失敗事例に目が行かないこと。起業して成功している人を見て、安易に起業しようとしたり、他社の人材育成の成功例を見て、自社でも取り入れたらうまくいくに違いないと、拙速に取り入れたりすることも、生存者バイアスと言えます。
成功事例を参考にしながら、失敗事例も考慮しつつ、現在の市場状況も見極めて、戦略を練ることが大切と言えます。
4:正常性バイアス
想定外の事態や危機的状況にあっても、過小評価してしまう傾向を言います。身近な例で上げると、仕事が忙しく睡眠不足で体調も悪いけど、大丈夫と思ってしまうようなことです。
ビジネスにおいて、同業他社の経営不振を見て「わが社は大丈夫だろう」と根拠もなく、そう思い込んでしまうのは危険です。客観的な判断が乏しくなると、企業運営に大きな影響を及ぼすことになります。
5:確証バイアス
自分にとって都合の良い情報ばかりを集め、都合が悪い情報を無視してしまうような状態を言います。いろんな情報があっても、都合の良い考えやデータばかりを重視してしまうことが多いでしょう。
採用面接において、応募者に多少気になる言動があった際に、「一流大学を出ているから大丈夫」と確証バイアスがかかったまま採用した結果、採用ミスマッチが起こり、その結果、早期離職に発展することも考えられます。
ビジネスに及ぼす影響
バイアスを改善しないままだと、企業の成長にとって、大きな障害となる可能性があります。一緒に見ていきましょう。
1:モチベーションが低下する
バイアスがかかった言動が日常的に起こると、健全な企業風土を保つことができなくなり、人間関係の悪化が進行するでしょう。従業員の働くモチベーションが低下し、離職が増え、慢性的な人手不足に陥り、企業運営の大きな妨げとなることが考えられます。
バイアスは誰もが持つものです。しかしながら、個々人がそれを認識し、改善していくことが大切ですね。
2:ハラスメントを引き起こす
現在は一昔前とは異なり、働き方や考え方が多様化しています。強いバイアスがかかった従業員が、組織全体のやる気や社外の評判に悪影響を及ぼすことも考えられるでしょう。
例えば、「上司が残業しているのに部下が先に帰るのはいかがなものか」「お客様がいらしたら、女性がお茶を出すのが当たり前」といった考え方があげられます。改善しないまま見て見ぬふりをしていると、ハラスメントが起きやすい温床になりかねません。自身を含め、周りの言動を普段からチェックすることも大切です。
バイアスを克服する対処法
誰もが持つバイアスですが、ちょっとした工夫で改善できそうです。押さえておきましょう。
1:客観的な意見を取り入れる
自分の考えに自信を持つのはいいことですが、自分のバイアスには気づきにくいと言えます。第三者の意見を聞き入れ、客観的に判断することが大切です。自分とは異なる意見や視点を知ることで、自分の成長にもつながりますし、いいアイデアや解決策が得られることにもなるでしょう。
1対1で話を進めると、対立してしまった時に感情的になったり、平行線をたどったままになることもあるので、3人以上で意見交換することをおすすめします。
2:今までの前提を見直す
バイアスがかかった考え方や意識を改善するためには、自分の考えを疑い、自身のバイアスに気づくことが大切です。
人の脳は、情報処理の際、脳の働きを軽減させるために、今までの経験をもとにした直感的判断を行います。この習性がバイアスを引き起こす要因になるわけです。多くの情報と照らし合わせ、今までの自身の経験や考えを疑い、見直すことが重要と言えます。
最後に
当記事ではバイアスについて解説しました。思い込みや偏見は、誰もが持ってしまうものですよね。自身の考え方や周囲の意見に「本当にそれでいいのか」と客観性を持ち、バイアスに気づくことがポイントとなるようです。
積極的に他の人の意見や考え方に興味を持ち、「みんな違って、みんないい」と多様性を認める意識改善も必要となるでしょう。
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