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この記事のサマリー
・「もしくは」は「あるいは」「さもなければ」と同じく選択を示し、副詞では「もしかすると」の意味も持ちます。
・「または」は二者択一や「どちらでもいい」という許容を表す語です。
会議資料や契約書を作成する際、「もしくは」と「または」の、どちらを使うべきか迷うことはありませんか? 日常では同じように使っていても、ビジネスの場では意味が変わってしまうこともある言葉です。
この記事では、「もしくは」と「または」の使い分けを、辞書の定義や具体的な条文例をもとに分かりやすく解説します。
筆者自身、取材や原稿作成の現場で悩んだ経験があるからこそ、すぐに役立つ実務的な使い分けのコツもお伝えしますね。
「もしくは」と「または」との基本的な違いを理解しよう
「もしくは」と「または」は、普段の会話では特に意識せずに使っているかもしれません。ですが、辞書をひもとくと、意味や使い方に細かい違いがあることがわかります。
まずは、それぞれの意味を見ていきましょう。
「もしくは」と「または」の基本的な意味
最初に「もしくは」と「または」の違いを、辞書で確認します。
もしく‐は【若しくは】
《漢文訓読から生じた語》
[接]どちらか一方を選択するのに用いる語。あるいは。さもなければ。または。「行くか、―やめるか」
「賄賂を収受し又は之を要求―約束したるときは」〈刑法・一九七条〉
→又は[用法]
[副]ひょっとして。もしかしたら。
「―御陵の内に犯し穢せる事もやあらむと」〈続後紀・宣命〉
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
また‐は【又は】
[接]似通った二つ以上の事柄のうち、どれか一つを選ぶときに用いる語。あるいは。もしくは。「ペン―ボールペンで記入のこと」「雪―みぞれでしょう」
→或(ある)いは[用法]
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「もしくは」は「あるいは」「さもなければ」と同じように、複数の選択肢から一つを選ぶ際に使う言葉です。また、副詞として「ひょっとして」「もしかしたら」という意味でも使います。漢字表記は、「若しくは」です。
一方、「または」も、複数の異なるものから一つを選ぶときに使います。漢字表記は、「又は」です。
日常会話においては、どちらを使っても意味が通じることがほとんどでしょう。

実務で役立つ使い分けのコツ
筆者自身、会議の日程をメールで相談する際、「金曜もしくは月曜のどちらかでお願いします」と書いたところ、「どちらでもいいのであれば、『または』の方がいいのではないか?」と指摘された経験があります。意味は通じますが、受け手によっては少し違和感を抱かれることがあると気づかされました。
このように、「もしくは」と「または」の意味は同じでも、使う場面に違いがあります。使い分けのルールとしては、以下のように整理すると覚えやすいですよ。
「もしくは」:選択肢が複数あるうち、そのいずれかを選ぶ場合に限って使います。
「または」:二つのうちの一方を捨てて一方だけをとる場合や、どちらでもいいという許容を表わす場合にも使うことができます。
普段の業務で少し意識してみるだけで、文章全体の印象が引き締まりますね。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
例文でチェック! 「もしくは」と「または」の使い方
辞書で意味を確認しても、実際の会話や文章でどう使えばいいのか迷うことがありますよね。ここでは、日常の会話やビジネスメール、そして、「もしかすると」という意味での使い方を紹介します。
「ランチはカレー、もしくはパスタにしない?」
日常で友人との会話の場面です。この例文を「または」に言い換えても意味は変わりません。親しい間柄であれば、どちらを選んでも違和感はないでしょう。
「火曜または水曜のご都合はいかがでしょうか?」
日程を提示する側がどちらを選ばれても都合がいい場合は、「または」を使うといいでしょう。
「もしくは、彼が担当者ではない可能性もあります。」
例文の最後に、「もしくは」の可能性を表す場合を見てみましょう。ここでは「もしくは」を、「もしかすると」という副詞の意味で使っています。
同じ「選択」を表す場合は、「もしくは」と「または」を入れ替えても問題ありませんが、「可能性」を示す場合は、「もしくは」でなければ成り立たない点に注意してください。この例文は「または」に、置き換えることができません。

「あるいは」「ないし」など関連表現との違い
「もしくは」と「または」に加えて、似た意味で使う言葉がいくつかあります。ここでは、「あるいは」や「ないし」との違いを理解しておくと安心です。
「あるいは」との違い
「あるいは」には複数の意味があります。接続詞として「もしくは」「または」と同じく、選択肢を示すこともあれば、副詞として「もしかしたら」と可能性を表すこともあります。
「あるいは」は、二者択一や両方同時に成り立つ場合に使われます。しかし、「どちらでもいい」という場合には、あまり使われません。
例文:
「研究結果を発表、あるいは論文としてまとめる」
「明日はあるいは雨かもしれない」
「ないし」との違い
「ないし」は接続詞で、「あるいは」「または」と同じ意味を持ちます。「ないし」は、選択肢そのものだけではなく、選択肢の中間の範囲も含むことが特徴です。
例文:
「参加者は20名ないし30名程度を想定しています」
参考:『デジタル大辞泉』、『使い方の分かる 類語例解辞典』(ともに小学館)

「もしくは」と「または」 に関するFAQ
ここでは、「もしくは」と「または」の違いに関する、よくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「もしくは」には「もしかすると」という意味もありますか?
A. はい。
「もしくは」は副詞として「ひょっとすると」「もしかしたら」という意味を持ちます。「または」にはこの用法がないため注意が必要です。
Q2. 「あるいは」と「もしくは/または」は同じ意味ですか?
A. はい。
複数のものの中から一つを選択するときに用いる語として共通する意味を持ちます。「あるいは」は、二者択一や両方同時に成り立つ場合に使われます。
最後に
「もしくは」と「または」は、複数のものの中から一つを選択するときに用いる言葉として共通する意味を持つことがわかりました。使い分けのヒントを参考に、これからの会話でお役立てください。
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