「重複」の読み方は「ちょうふく」?「じゅうふく」?
「重複」の読み方は、「ちょうふく」と「じゅうふく」どちらで読んでも間違いではありません。文献によると、「ちょうふく」という読み方は室町時代から、「じゅうふく」は明治時代ごろから使われていたことが確認されています。
とはいえ、2つも読み方があると、どちらの読み方で読んだほうが良いのかと迷ってしまうこともあります。はじめに、NHKやビジネスシーンでの読み方や「じゅうふく」の読み方、それ以外の読み方に悩みやすい言葉をチェックしましょう。
NHKやビジネスシーンでの読み方はどっち?
ビジネスシーンなどの改まった場では、とくに間違えないように気をつけたいものです。重複という言葉は、ビジネスシーンでもよく使われています。
NHKでは、「ジューフク」でも間違いではないものの、伝統的な読み方にならって「チョーフク」と読んだほうが望ましいとしているようです。ビジネスシーンでも、もともとの読み方の「ちょうふく」を使ったほうが間違いはないでしょう。
「じゅうふく」も間違いではない
先述のとおり、「じゅうふく」も間違ってはいない読み方です。「ちょうふく」と「じゅうふく」は、現在ではどちらとも一般的に使われている読み方であり、国語辞典にも掲載されています。
とはいえ、「重」を「じゅう」と読む漢字は、「体重」などのように重さを表すことが多いです。「ちょう」と読む場合には、「慎重」などのように重ねることを表します。意味や由来からすると「ちょう」と読むのが正しく、「じゅうふく」を誤用だと考えている方もいるため、口に出す場合には気をつけると良いでしょう。
重複以外の読み方に悩みやすい言葉
重複以外にも、たとえば以下のように、読み方に悩みやすい言葉があります。あわせてチェックしておきましょう。
・施策……「しさく」が正しいが、行政関連では「せさく」と読まれている。
・早急……もともとは「さっきゅう」だったが、現在では「そうきゅう」も一般的になった。
・世論……本来の読み方は「せろん」で、慣用読みは「よろん」。
・貼付……もともとは「ちょうふ」と読んでいたが、慣用読みでは「てんぷ」と読む。
このように、本来とは異なる複数の読み方がある言葉は、いろいろあります。
「重複」の基礎知識を解説
読み方だけではなく、「重複」の意味や使い方・例文、類語・言い換え表現、対義語などの基礎知識もあわせて解説します。
重複は、「ひとつあれば十分であったが、同じものが余計にある」という意味が込められていて、どちらかといえばネガティブなニュアンスの言葉です。また、人を主語にして行動などの繰り返しを表現する場合には、重複は使わないと気をつけましょう。
それでは、基礎知識を解説していきます。
重複の意味
重複とは、同じ物事が何個か、または何度か重なること、もしくはその様子を意味する言葉です。「重」と「複」、どちらも「重なる」という同じ意味の言葉で、それらをあわせることでさらに意味を強調しています。
「重複がある」や「重複になった」といったように、重複は名詞として使用可能です。また、「重複する」「重複した」など、サ行変格活用の動詞の活用形としても使われます。
重複の使い方・例文
重複には、「重複した」などのように単体で使う場合と、「重複立候補」のように言葉を組み合わせて使う場合があります。また、重複の使い方には、「重複表現」「データの重複」などのように名詞で使う場合と、「重複している」といったように動詞として使う場合があることも特徴です。
たとえば、以下のように使いましょう。
・データの重複があります。いかがなさいますか?
・先ほどの話と一部重複した内容がありますが、……にご注意ください。
なお、人を主語にして行動などの繰り返しを表現する場合には、重複ではなく「反復」などを使うと良いでしょう。
重複の類語・言い換え表現
重複と似た意味を持つ類語・言い換え表現の例は、以下のとおりです。
<繰り返す(動詞)><繰り返し(副詞)>
同じことを何回もおこなうこと。
<重なる>
同じような物事が繰り返すこと。
<ダブルブッキング>
予定が重なってしまうこと。
<ダブる><ダブり>
2つ、もしくはそれ以上あること。基本的には俗っぽい表現である。
重複の対義語
一方、重複の対義語・反対の意味を持つ表現は以下のとおりです。
<MECE(ミーシー)>
日本語に訳すと「漏れなく」「重複なく」など。コンサルティング用語としても使われる。
<単一>
混じりのない、1種類のもののみのこと。
また、単独や固有なども重複とは反対の意味だといえます。反対の意味で表現したい場合に、重複という言葉を使って「重複しない」と表現したほうが良い場合もあるでしょう。
「今現在」など、意味が重複しても良い?
「今現在」など、意味が重複している言葉を使う場合があります。一般的には重複表現が好ましくないとはされているものの、一概に良くない表現だとまではいえません。意味が重複していてもあえて使うとわかりやすくなったり、伝えたいことを強調できたりするメリットもあります。
ただし、「山の中の山中で」など、見聞きするときに気になってしまうような重複は避けると良いでしょう。「歌を歌う」や「掛け声を掛ける」などの重複は、耳ざわりにはなりにくいと考えられています。
重複を正しく理解しよう
「重複」の読み方は「ちょうふく」と「じゅうふく」の2つがあり、どちらで読んでも間違いではありません。「ちょうふく」のほうが本来の読み方であるため、ビジネスシーンなどのかしこまった場面では「ちょうふく」を使うと良いでしょう。
重複とは、同じ物事が重なること、もしくはその様子を意味する言葉です。重複表現は一般的にあまり好ましくないとされているものの、わかりやすくなるなどのメリットもあります。重複していてもあまり気にされないような表現であれば、あえて使う場合もあるようです。
言葉の読み方や意味、使い方、類語表現、対義語などをあわせて確認し、多くの言葉を正しく使えるようになりましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock