この記事のサマリー
・商慣習とは、商業上の取引について長く続いてきた習慣やならわしを指す言葉です。
・「商慣習」と「商習慣」は、ほぼ同じ意味の語として理解して差し支えありません。
・名刺交換やメール文面は商慣習というより、広い意味でのビジネス慣行として捉えると自然です。
「商慣習」という言葉を聞いたことはありますか? 字面から、なんとなく「商業に関する慣習のこと?」と予想がつくかもしれません。「商慣習」はビジネスシーンで使われる言葉のため、正しい意味をおさえておきたいものです。当記事では、「商慣習」について徹底解説していきます!
「商慣習」とは?
「商慣習」という言葉に馴染みのない方は、「なんて読むのかもあやふや…」と読み方にすら自信を持てないかもしれません。まずは、「商慣習」の読み方から見ていきましょう。あわせて、意味や言い換え表現、英語表現も紹介します。
読み方と意味
「商慣習」とは、「しょうかんしゅう」と読みます。意味は、漢字が表す通り「商業における慣習」のこと。わかりやすくいうと、「商業における昔からのやり方」「その地域や国に根付いた、ビジネス上のならわし」です。
なお、社会で繰り返し行われている慣習が、法的効力を持つに至ったものを「慣習法」といいます。「商慣習」は、この「商慣習法」を含む、商取引上のならわし全般を指す広い概念です。詳しくは後述しますが、「商慣習」の代表例は、決済条件などの取引ルール(例:月末締め翌月末払い)です。
また、これに付随する広義のビジネス慣行として、「名刺交換」や「新卒一括採用」などが挙げられます。

類語や言い換え表現
「商慣習」の言い換え表現には、「商習慣」があります。「商習慣(しょうしゅうかん)」も、商取引における習慣・慣行を表す言葉です。日常的な文章では、「商慣習」とほぼ同じ意味で使われることが多いでしょう。辞書に掲載がある言葉ですので、使っても間違いにはなりません。
しかし、厳密に見ていくと「習慣」と「慣習」には、若干の違いがあります。一般に「習慣」は、個人が繰り返し行う行動についても、社会や集団のなかで定着した行いについても使われます。一方、「慣習」は、地域・社会・組織などで長く行われてきたならわしを指す場合に用いられやすい言葉です。
ですから、どちらを使うか迷った場合には、「商慣習」を使った方が無難かもしれません。
英語表現
「商慣習」は、文脈によりcommercialpractice、businesspractice、tradecustom、tradeusage などと表現できます。契約や法律の文脈では、tradeusage や customarybusinesspractice が使われることがあります。
commercial は「商業上の」、practice は「慣行」「実務上のやり方」などを表します。例えば commercialpractice は、「商取引上の慣行」という意味で使えます。
次に、business usageについて。businessは「商業」、usageは「慣行・用法・慣習」という意味です。例えば、We overcame problems with local business usage.(私たちは現地特有の商慣習の問題を克服した。)などと使います。
「商慣習法」とは?
前の項で少し登場しましたが、「商慣習法」についても、概要をおさえておきましょう。商慣習法とは、商取引に関する慣習のうち、法規範として認められ、法的な判断に用いられるものをいいます。
商事に関する法「商法典」や商事に関する事項について、商法(制定法)に規定がない場合には「商慣習法」が適用され、これらは「民法」よりも優先して適用されます(商法第1条)。

日本の商慣習の例は?
「商業における昔からのならわし」という意味の「商慣習」。では、日本の「商慣習」には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか? ここからは、商慣習に近い取引上の慣行に加え、日本のビジネス慣行・ビジネスマナーとして知られる例も紹介します。
月末締め翌月末払い
日本のビジネスシーンでは、当月に発生した代金は月末に締めて、翌月末に支払うのが一般的ですよね。これは「月末締め翌月末払い」と呼ばれますが、これも日本の商慣習の一例です。海外では、「月末締め翌月末払い」が当たり前ではなく、締め日から支払い日の期間は、取引をした双方で決めることが多いようです。
名刺交換
名刺交換は、商取引条件に関する商慣習というより、日本で広く行われているビジネスマナーの一つです。クライアントなど、社外の人と初めて会う時には、まず名刺を交換して、お互いの名を名乗り、「よろしくおねがいします」と挨拶することが一般的です。受け取り方やテーブルの上での並べ方など、細かなマナーもあります。
名刺交換の位置付けやマナーは、国・地域・業界によって異なります。日本ほど形式を重視しない場面もありますが、名刺交換を大切にする文化圏や業界もあるため、相手や現地の慣行に合わせることが重要です。
アポなし訪問
取引先への訪問は、事前にアポイントメントを取ることが一般的です。一方で、地域・業界・既存の取引関係によっては、短時間のあいさつ訪問が行われることもあります。訪問前には、相手先の都合を確認するようにしましょう。
アポイントメントを重視する傾向は多くの国・地域で見られます。訪問の可否や面談の目的については、相手企業の方針、業界、担当者との関係によって異なるため、事前確認が欠かせません。

メールの定型文
メールの定型文は、商取引条件に関する商慣習というより、日本のビジネス文書で広く用いられる表現上の慣行といえるでしょう。
社外向けメールでは「お世話になっております」が広く使われます。「お疲れ様です」は社内や親しい相手とのやり取りで使われることが多く、初めて連絡する社外の相手には、状況に応じて「お世話になっております」「突然のご連絡失礼いたします」などを選ぶといいでしょう。
文末には「よろしくお願いします」を使いますよね。ビジネスメールの構成やあいさつ表現は、言語、国・地域、組織文化、相手との関係によって異なります。簡潔さが好まれる場面もありますが、相手の慣行に合わせた文面を選びましょう。
押印
日本では、契約書や社内文書などで印鑑を用いる慣行が長く見られました。近年は電子契約の普及などにより、押印を省略する手続きも増えています。
日本では印鑑を用いる書類が多くありましたが、契約の有効性が常に押印の有無だけで決まるわけではありません。契約の成立要件や必要書類は、契約内容や関連法令によって異なります。
接待
「接待」とは、もともと「お客さんをもてなすこと」という意味。取引先との会食やイベント参加は、商取引そのものの条件ではなく、営業活動や関係構築に関するビジネス慣行として行われることがあります。取引先との関係づくりを目的として行われることがありますが、相手企業の規程や法令、コンプライアンス上のルールを確認することが重要です。
取引先との関係性を重視するか、価格・品質・契約条件などをどの程度重視するかは、国籍だけでなく、業界、企業文化、取引の内容によって異なります。海外取引では、現地のビジネス慣行と相手企業の方針を確認しましょう。
その場で決断せず、一旦持ち帰る
商談において、その場では返事をせずに、「持ち帰って、社内で検討させていただきます」と言うことがあります。商談の場で即答できるかどうかは、担当者の決裁権限、取引金額、契約内容、社内の承認手続きによって異なります。重要な契約ほど、社内での確認や法務審査が必要になる場合もあります。
海外の取引先とやり取りする際は、結論、条件、対応期限を明確に伝えることが求められる場面があります。ただし、コミュニケーションのスタイルは国・地域・組織・個人によって異なります。
新卒一括採用
新卒一括採用は、商取引上の商慣習ではなく、日本で長く見られてきた雇用・採用慣行です。卒業予定者を対象に、一定の時期に採用活動を行い、卒業後に入社する形態を指します。
在学中に選考を完了し、卒業後すぐに入社できるようなスケジュールで行われます。採用時期や新卒採用の位置付けは、国・地域・業界・企業によって異なります。通年採用が一般的な地域もありますが、卒業時期に合わせた採用活動を行う企業や業界もあります。
「商慣習」に関するFAQ
ここでは、「商慣習」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 商慣習とはどういう意味ですか?
A. 商慣習とは、商業上のしきたり、商取引上のならわしを指す言葉です。
Q2. 「商慣習」と「商習慣」に違いはありますか?
A.一般的な文章では、ほぼ同じ意味の語として使われることが多いでしょう。ただし、法律や契約書では用語の定義が置かれている場合もあるため、文書内の表記に合わせることが大切です。
Q3. 商慣習の具体例にはどんなものがありますか?
A. 例えば、締め日と支払日の設定、請求書の発行方法、検収の手順、振込手数料をどちらが負担するかといった、取引条件・取引手続きに関する慣行があります。
最後に
今回は、「商慣習」という言葉の意味から、日本の「商慣習」の具体例まで紹介しました。商慣習は、国や地域だけでなく、業界、企業、継続的な取引関係によっても異なる場合があります。自社の慣行だけを前提にせず、取引先との契約内容や相手方のルールを確認することが大切です。
海外などでビジネスを行う場合には、あらかじめその国の「商慣習」を調べておくと安心です。
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武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
ライター所属:京都メディアライン



