挨拶文の書き方
最近では、メールやLINEなどで挨拶を済ませることも珍しくありません。しかし、お世話になった方へのお礼状や、学校やビジネスシーンで提出する文書などは、やはりきちんとした挨拶文を書きたいもの。そこで、本記事では、挨拶文(特に6月の挨拶文)をどのように書けばいいのか、見ていきましょう。
構成・ルール
そもそも、手紙や文書とは相手に用件を伝えるためのもの。日本独自の文化として、次のような構成・ルールがあります。
【前文】(ぜんぶん)
1:頭語(とうご) 「拝啓」「謹啓」「前略」など手紙で用件を伝える前の挨拶言葉です。
2:時候の挨拶
3:相手の健康を気遣う挨拶
4:感謝やお礼の気持ちを伝える
【主文】(しゅぶん)
いわゆる本文です。本題に入る前に「さて」「ところで」など書き起こしの言葉を使います。
【末文】(まつぶん)
1:結びの挨拶。相手の健康を祈る言葉など慣用句があります。
2:結語(けつご)。「敬具」「草々」など 前文の頭語と対応する結語があります。
【後付け】
日付、署名、宛名の順に書きます。
時候の挨拶とは
先に述べたように、時候の挨拶は「前文」の「頭語」のあとに書く文言です。
「漢語調」と「口語調」
時候の挨拶には、「向暑の候」や「万緑の候」など簡潔に表した「漢語調」と「紫陽花の花が美しさを増す季節となりました」といった柔らかい表現の「口語調」があります。
これらは、相手や場面によって使い分けるもの。一般的に「漢語調」は改まった印象を与えるので、ビジネスシーンや学校に提出する文書などに使われます。一方の「口語調」は柔らかい印象を与え、プライベートなお礼状などに使われますよ。
6月の時候の挨拶
時候の挨拶は季節を表した言葉。同じ6月でも、上旬と下旬では季節感が違いますね。送付する日がいつなのかを確認し、それぞれの時期に適した時候の挨拶を使うようにしましょう。
上旬に使う時候の挨拶と例文
上旬に使う「漢語調」と「口語調」のそれぞれの挨拶と例文を見ていきます。
漢語調
1:麦秋(ばくしゅう)の候
「麦秋」は初夏の季語。麦の穂が実り収穫を迎える時期で、5月31日頃~6月4日頃を指します。
2:薄暑(はくしょ)の候
「はくしょ」は、うっすらと暑さを感じる頃を指します。
「~の候」は「~の折」や「~のみぎり」とも言い換えることができます。いずれも「~の頃」という意味です。
例文:
「麦秋の候、貴社ますますご清栄のことお慶び申し上げます」
「薄暑の候、貴社にはますますご繁栄のことと心よりお慶び申し上げます」
口語調
1:清々しい初夏の季節となりました。
2:衣替えの季節となりました。
例文:
「清々しい初夏の季節となりましたが、皆さまお変わりなくお過ごしのここと存じます」
「早いもので今年も衣替えの季節となりました。ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」
中旬に使う時候の挨拶と例文
中旬に使う「漢語調」と「口語調」のそれぞれの挨拶と例文を見ていきます。
漢語調
1:入梅(にゅうばい)の候
雑節(ざっせつ:季節の変化をつかむ目安として日本で補助的につくられた暦で、「節分」「彼岸」など)。「入梅」の6月11日頃以降、もしくは実際の梅雨入りに合わせて使います。
2:黄梅(おうばい)の候
梅の実が色づく頃を指します。
例文:
「入梅の候、貴社にはますますご繁栄のことと心よりお慶び申し上げます」
「黄梅の候、貴社にはご清栄の段、何よりと存じます」
「長雨の候、平素は格別なご高配を賜り厚く御礼申し上げます」
口語調
1:梅雨の時期を迎えました
2:紫陽花(あじさい)が咲く季節となりました
例文:
「梅雨入りの時期を迎えましたが、ご一同様にはますますご健勝のことと存じます」
「美しい紫陽花が咲く季節となりました。皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます」
「長雨が続きますがお元気でお過ごしのことと存じます」
下旬に使う時候の挨拶と例文
下旬に使う「漢語調」と「口語調」、それぞれの挨拶と例文を見ていきます。
漢語調
1:夏至(げし)の候
一年で昼が最も長く、夜が最も短くなる日で、6月21日頃。
2:梅雨晴れの候
そろそろ梅雨が明けて晴れ間を見せる頃を指します。
例文:
「夏至の候、貴社におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申し上げます」
「梅雨晴れの候、貴社にはご清栄の段、何よりと存じます」
口語調
1:梅雨明けが待ち遠しいこの頃
2:蛍の舞う季節となりました
3:はや半年が過ぎようとしており
例文:
「梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ですが、その後お変わりございませんか」
「蛍の飛び交う季節となりました。ご一同様には、ますますご壮健のことと存じます」
「今年も半年が過ぎようとしており、時の早さを感じるこの頃、皆さまお変わりなく過ごしのことと存じます」
6月全般に使える時候の挨拶
これまで、用途に合わせ、使用時期を上旬・中旬・下旬で分類してきました。しかし、中には複数時期にわたって使用できる時候の挨拶もあります。例えば「向暑の候」などは「暑さに向かう頃」という意味ですので、その時の気温の上がり具合などでいつでも使える挨拶です。
まとめ
6月というと、一般的に雨が多い梅雨をイメージしますね。しかし、北海道ではほとんど雨は降りません。時候の挨拶は、相手の季節感に合わせたものを選ぶようにしましょう。また、雨がちで、憂鬱な時期ではありますが、紫陽花が咲いたり、梅雨空の合間に出る日差しがまぶしかったりするので、なるべく前向きな文言にしたいものですね。
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武田さゆり(たけださゆり)さん
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
ライター所属:京都メディアライン