新聞や雑誌で、「辛い」という文字を見たとき、「からい」と「つらい」、2つの読み方が頭に浮かびませんか? 文章の内容から判別できるものの、どう読むか迷うときもあるかもしれません。そこで今回は、「辛い」の2つの意味や「つらい」の表記の仕方、漢字とひらがなを書き分ける言葉について解説します。この機会に「辛い」に関するモヤモヤを解決していきましょう。
「辛い」の2つの読み方と意味
「辛い」という言葉には、「からい」と「つらい」、2つの読み方があります。まずは、2つの意味と使い方をおさらいしましょう。
辛い(からい)
「辛い」のひとつ目の読み方は、「からい」。唐辛子やワサビのように、舌や喉を強く刺激するような味のことを言います。それ以外にも、「塩気が多い、しょっぱい味」のことを「辛い」と表現したり、甘味が少なく、さっぱりとした味わいのお酒のことを「辛い」と言ったりしますね。また、味の表現だけではなく、「辛い採点」というように「評価の基準が厳しい」場合にも使われます。
・この料理は辛いソースが効いていて、大人向きの味だ。
・この漬物は辛くて食えたものではないと父に言われた。
・私たちの先生は怠ける生徒に対して評価が辛い。
辛い(つらい)
「辛い」のふたつ目の読み方は、「つらい」。精神的にも肉体的にも、我慢できないくらい苦しいさまを表します。「他人に対して冷酷で、非常である」という意味もあり、「つらく当たる」「つらい仕打ち」などと表現されることも。また、「その話をされるとつらい」というように、「対処が難しい、困難である」と感じることに対しても使用されます。
・兄は受験に落ちてから家族につらく当たるようになった。
・そのコーチの指導は厳しくて練習がつらい。
・両方のチームの間に立たされて彼はつらい立場にいる。
「つらい」を「辛い」と書くのは間違い?
「辛い」を「からい」「つらい」と読むことは間違いではありません。ただし、国が定めた漢字使用の目安である「常用漢字表」によると、「辛」という漢字は、音読みで「シン」。訓読みで「からい」であるとされています。そのため、新聞や雑誌、公用文書などでは原則「つらい」はひらがなにして書き分けられるようです。
(表記例)
・親元を離れて一人で生活するのは辛かった。→親元を離れて一人で生活するのはつらかった。
他にもある! 漢字とひらがなで書き分ける言葉
「辛い」のように、読み方が2種類あることから、あえて漢字とひらがなで書き分けられている言葉は他にもあります。ここでは、読むときに迷いやすい漢字を3つ紹介しましょう。
1:薪
例えば、「薪」という漢字。「まき」?「たきぎ」? 皆さんはどう読みますか? こちらは先述した「常用漢字表」によると、音読みで「シン」、訓読みで「たきぎ」と読みます。「まき」という読み方も間違いではありませんが、紙面に記す場合はひらがなで表記するか、漢字の横にルビを振ることが多いようです。
(表記例)
・ストーブを使うために、庭で薪を割った。→ストーブを使うために、庭で薪(まき)を割った。
・寒くなってきたので、ストーブに薪をくべた。→寒くなってきたので、ストーブにまきをくべた。
ちなみに、現代の生活では「薪」を使う機会が少ないため、「まきとたきぎって何が違うの?」と思う方も多いのではないでしょうか? 前提として「まき」も「たきぎ」も、燃料用の木材のことを指します。
「まき」は、「薪(まき)割り」「薪(まき)をくべる」という表現に使われることから、すでに加工されたものを指す傾向があります。一方「たきぎ」は、「薪を集める」「山に薪を採りに出かける」というように、自然に手に入るものを「たきぎ」と呼ぶことが多いようです。
2:留
「留」という漢字は、音読みで「リュウ」「ル」。訓読みで「とめる」「とまる」と読みます。「保留」や「留める」など、動いているものを止めるという意味があります。中にはこの漢字を見て「とどまる」と読んだ方もいるのでは? 同じところにじっといる様子や滞在するという意味として「とどまる」という言葉は辞書には載っています。
しかし、漢字で表記すると、「留(と)まる」なのか「留(とど)まる」なのか判別がしにくいため、「常用漢字表」には載っていないようです。
(表記例)
・留まることなく水が流れる。→とどまることなく水が流れる。
・物価の高騰は留まることをしらない。→物価の高騰はとどまることをしらない。
3:埋
「うもれる」? 「うずめる」? 「埋」という漢字は、音読みで「マイ」。訓読みで、「うめる」「うまる」「うもれる」と読みます。「常用漢字表」には、「うずめる」という表現はありません。こちらも漢字表記する場合、「埋(う)める」と「埋(うず)める」の判別が難しいことが理由の一つだと考えられます。
ちなみに、「うめる」と「うずめる」には、意味にも若干の違いが。「うめる」は、「宝を庭にうめる」というように、「穴やくぼみなどを何かでふさいで満たす」というニュアンスが強いです。一方「うずめる」は、「マフラーに首をうずめる」というように、「空いたところを何かですっぽり覆うようにする」という意味合いが強い点が違いといえるでしょう。
(表記例)
・枕に顔を埋めた。→ 枕に顔をうずめた。
・子どもは母親の胸に顔を埋めた。→ 子どもは母親の胸に顔をうずめた。
最後に
今回は、「辛い」の2つの読み方や正しい表記の仕方についてみていきましたが、理解できましたか? 「辛い」は、「からい」と「つらい」どちらとも読むことができます。しかし、誤読を防ぐためにも、公的文書などで「辛い(つらい)」と書く場合には、ひらがなで表記するのが適切です。日本語では、複数の読み方がある言葉がほとんど。どう読むのが正しいの? と疑問に思ったときは本記事を参考にしてみてくださいね。
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