彼岸っていつ? 年に2回あるってご存知?
「暑さも寒さも彼岸まで」という言葉を知っていますか? 手紙の中で使われたり、挨拶代わりに用いられたりすることわざです。決まり文句として昔から浸透しているため、意識して意味を考えたことはないかもしれませんね。
そこで、本記事では「暑さも寒さも彼岸まで」の意味や使い方をおさらいしましょう。そして、関連語もあわせて紹介します。ぜひ語彙を増やす機会として、有効活用してくださいね。
「暑さも寒さも彼岸まで」の意味
「暑さも寒さも彼岸まで」には、「夏の暑さも冬の寒さも、彼岸を境にして穏やかになり過ごしやすくなる」という意味があります。では、彼岸とはいつのことをさすのでしょうか。
彼岸の期間
そもそも「彼岸」とは、仏教に関連する言葉です。「生死のさかいを河や海にたとえ、その向こう側の岸」「悟りの境地」という意味があります。
また、ある期間のことをさして「彼岸」と言うことも。こちらの意味が、本記事で紹介している「暑さも寒さも彼岸まで」の「彼岸」です。「お彼岸」とも言いますが、彼岸には春彼岸と秋彼岸があることを知っていましたか?
「春分(3月21日頃)と秋分(9月23日頃)をそれぞれ中日として、その前後の3日にわたる計1週間」が、彼岸の期間に当たります。
つまり、「暑さも寒さも彼岸まで」とは、「春分の日を過ぎれば寒さも和らぎ、秋分の日を過ぎれば暑さも落ち着いてくるだろう」という意味になりますね。
例文を用いて「暑さも寒さも彼岸まで」の使い方を紹介
続いては、「暑さも寒さも彼岸まで」の使い方について見ていきましょう。ことわざを挨拶や手紙で使えるようになると、粋な雰囲気が出て素敵ですよね。ここで、使い方をばっちり押さえておきましょう。
「『暑さも寒さも彼岸まで』と言うように、最近の酷暑も段々と落ちついてまいりました」
「暑さも寒さも彼岸まで」は、手紙などの文面で用いられることが多いようです。そのため、この例のように引用するかたちで使われます。
「『暑さも寒さも彼岸まで』とは言いますが、明日は今季最大の寒波が訪れるようです」
例文1では、「暑さも寒さも彼岸まで」を肯定する言い回しでした。例文2は反対に否定するかたちで用いられています。
「今は辛いかもしれないが、『暑さも寒さも彼岸まで』だよ。もう少しの辛抱だ」
「暑さも寒さも彼岸まで」は季節の移り変わりだけでなく、時間の経過そのものをさして使われることもあるのだとか。この例文では、「辛い時期もいつかは終わる」というニュアンスで、「暑さも寒さも彼岸まで」が使われています。
「暑さも寒さも彼岸が過ぎれば落ち着いてくるように、辛いこともいずれ終わりがくるはずだ」と相手を励ます表現です。
あわせて覚えたい関連語を紹介
社会人になると、季節に合わせた挨拶をする機会が増えますよね。「暑さも寒さも彼岸まで」のほかにも使える表現があると安心です。そこで、ここでは「暑さも寒さも彼岸まで」に関連する表現を紹介します。
彼岸過ぎまで七雪
「彼岸過ぎまで七雪」とは、「春の彼岸が過ぎても雪が降ること」という意味で「暑さも寒さも彼岸まで」の対義語に相当することわざです。ちなみに「七雪」は、「ななゆき」と読みます。
「彼岸過ぎても七はだれ」と言い換えることもできますよ。「はだれ」とは、「うすく積もった雪やはらはらと降る雪」のことです。「この天気はまさに、彼岸過ぎまで七雪だと言えるだろう」のように使われます。
寒さの果ても涅槃まで
「寒さの果ても涅槃まで」という表現もあります。「涅槃」は「ねはん」と読みますが、この言葉も仏教に関する言葉です。「寒さも陰暦の2月15日にあたる涅槃会(ねはんえ)を過ぎると和らぐ」という意味を持つことわざになります。
「涅槃会」とは、仏教の開祖である釈迦牟尼(しゃかむに)が入滅(にゅうめつ)した忌日(きにち)に行う法会のことです。昔から仏教と日本の四季は深く結びついていたのかもしれませんね。
手紙で使える季節の挨拶を紹介
ここまで「暑さも寒さも彼岸まで」や関連語を紹介してきましたが、ほかにも季節の挨拶はたくさんあります。そこで、手紙で使える季節の挨拶を紹介しましょう。
草木萌動の砌
3月の初旬に使える表現が「草木萌動」です。一般的には「そうもくほうどう」と読みますが、「そうもくめばえいずる」と読むこともあるのだとか。草木萌動は、七十二候のうちのひとつの季節にあたり、「少しずつ暖かくなり草木が芽吹きはじめるようす」を表した言葉です。「萌」は、草木が芽吹くことを表す漢字なので覚えておくと役立つかもしれません。
例えば、「草木萌動の砌(みぎり)、いかがお過ごしでしょうか」などというように使われます。
春の日差しがきらめくころ
プライベートなどで使える柔らかい表現が「春の日差しがきらめくころ」です。「暑さも寒さも彼岸まで」のように寒さが和らいでいることを伝えることができますね。
清涼の候
暑さが落ち着いてきたころにビジネスシーンでも使える時候の挨拶を紹介しましょう。「清涼」とは、「清くさわやかなこと」をさす言葉です。「せいりょう」と読んだり「しょうりょう」と呼んだりします。
ビジネスシーンなど、オフィシャルな場面では「候」や「砌」などと一緒に使うとより丁寧なニュアンスになりますよ。
すがすがしい秋風の吹くころ
親しい間柄の人に宛てた手紙には、口語調のあいさつが向いているかもしれませんね。「すがすがしい秋風」や「秋風がコスモスを撫ぜ」など、情景を想像させるような表現を工夫してみてください。
最後に
本記事では、「暑さも寒さも彼岸まで」の意味や使い方、あわせて覚えたい関連語を見てきました。また、ビジネスシーンとプライベートで使える時候の挨拶もいくつか紹介しています。
日本語の美しい響きを楽しみながら、豊かな表現力を身に付けていきたいですね。
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