お彼岸とは?
お彼岸は、年2回、春と秋におこなう日本独自の行事です。
春は春分の日を中日(なかび)とした7日間、秋は秋分の日を中日とした7日間にあたります。
仏教が伝わる前から、日本では米や野菜などの農作物の豊作のために、春には山や太陽の神様やご先祖様の力にすがってたくさん実りますようにと祈りました。秋には実りの感謝を込めてお祭りを行いました。やがて仏教が伝わってきて、その春と秋の行事に重ねて、先祖供養をするようになったのです。
「彼岸」とは、「川の向こう側」という意味で、いわゆる「あの世」のこと。そして川のこちら側の岸の「この世」のことを「此岸(しがん)」と呼びます。お彼岸は、あの世のご先祖様が最も近づく時期のため、いつもより供養の思いや言葉がご先祖様に伝わりやすいともいわれています。
お彼岸におこなうこと
お彼岸には、お墓やお仏壇に対して、いつも以上に丁寧に供養をおこないます。春と秋とでおこなうことは変わりません。
お墓参り
いつもより丁寧にお墓とお仏壇に先祖供養を
お彼岸は、お盆とは異なり、祭壇を作って飾り付けをするなど、特別なことはしません。お墓やお仏壇をいつもより丁寧にお掃除した後、いつもより少し多めに、また豪華にお花やお供物をお供えして線香あげ、お参りします。
大事なのは、お墓参りは家族や親族、みなさんで行くこと。お墓でご先祖様に「みんな元気でやっています」と報告し、感謝の気持ちを持ち、供養をおこないます。
「彼岸会法要」で先祖供養を
お寺にお墓がある方は、お寺の本堂で「彼岸会(ひがんえ)」という法要がおこなわれるのが通例です。お彼岸の時期が近づき、お寺からご案内が届いたら、お墓参りの際に参加しましょう。御本尊の前でお坊さんが読経をあげ、先祖供養をおこないます。それほどかしこまった場ではないため、喪服を着る必要はなく、普段着でかまいません。
お布施は特に決まってはいません。地方によっても異なります。お包みする場合は、3千円から5千円などが一般的です。
お供えもの
お菓子や果物など
昔からお彼岸になると、いつもより多くお供えをしたり、特別にこしらえたものをお供えして供養をしていました。
より豪華で心のこもったものを、ということで、春は「牡丹餅(ぼたもち)」、秋は「御萩(おはぎ)」を作ってお供えしていました。どちらも同じものです。「牡丹」「萩」と、その季節に最も美しく咲く花の名を当てています。
この慣習は江戸時代から続いており、庶民は普段は容易に手に入らなかった貴重な砂糖を用いて牡丹餅は御萩を作ることで、今できる最大限、豪華な物としてお供えしていました。
お花
お彼岸でお供えするお花の種類には特に決まりはありません。一般的にお供えのお花には、においの強い「ゆり」や、とげのある「バラ」はやめましょうといわれており、昔から、「菊」中心でした。
ただ、この20~30年で、1年通して咲くお花が容易に手に入るようになりましたので、どんなお花でもかまわないという風潮になっています。
基本のお墓のお参り方法と仏壇のお掃除方法
基本のお墓参りとお仏壇のお掃除方法を確認しておきましょう。
お墓参りの方法
1. お墓を掃除する
墓石の周囲をほうきで掃き、雑草を取り除きましょう。墓石は柔らかい布に水を含ませ、優しく水洗いをします。墓石を傷めないよう、洗剤などは使わないようにしましょう。彫刻文字は歯ブラシなどで優しく汚れを落としましょう。
2. お供え物を捧げる
お花は花立に水を入れて挿し、お水はきれいなものを水鉢に注ぎます。お菓子や果物は、直接置かず、二つ折りした半紙の上に置きましょう。最後にお線香に火をつけ、香炉に置きます。
3. 心を込めてお参りする
心を込めて、手を合わせてお参りをしましょう。お彼岸ですので、いつもより丁寧にご先祖様を供養すると良いですね。
お仏壇のお掃除方法
お仏壇のお掃除の基本は、埃をそっと取ることです。水拭きは避け、柔らかい布でそっと乾拭きします。ゴシゴシこすらないようにしましょう。
もし鳥の羽のようなやわらかい埃取りがあれば、それを用いるのが理想です。
御本尊と御位牌はとても傷つきやすいので、触らないようにし、どうしてもというときだけ丁寧に出して埃を取るのにとどめましょう。
お彼岸のお墓参りとお仏壇掃除のポイント
お墓やお仏壇に捧げた食べ物のお供え物は、供養が終わったら下げて、皆様で少しずつ分けていただきましょう。置きっぱなしにして腐らせてしまうのは、畑の恵みを祈る本来の意味を考えても本末転倒で、供養になりません。お墓のお供えも持ち帰り、食べるまでが供養と捉えましょう。
お彼岸に実家や親戚の家へ行くとき、お香典は必要?
お彼岸に、実家に帰省したり、親戚の家に行ったりするときには何か持っていくべきか、よくご質問を受けます。
結論から言えば、お盆のようにお香典を持っていく必要はありません。
一般的にお彼岸では、お盆の時の「初盆」ような事はありませんが、地域によっては「初彼岸」として供養される場合もあります。その場合、ご先祖様とその年に亡くなった故人の両方の供養をおこないます。そのため、故人の方向けに、お香典を持っていくこともあります。初彼岸ということであれば、お香典としていくらかお包みしてもよろしいと思います。お香典については、地域によって実に様々であり、一概には言えませんので、ケースバイケースでご対応してください。
最後に
お彼岸は、先祖供養をおこなう日本に古くから伝わる伝統行事です。春と秋も同様に、お墓参りなどを通していつもより丁寧に先祖供養をおこないます。ぜひご家族が集まり、ご先祖様を丁寧に心を込めて供養しましょう。
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メモリアルアートの大野屋 終活・仏事アドバイザー 川島敦郎
1956年東京都出身。大学卒業後ブライダル会社に勤務。企画やプランナー育成に携わり、業界資格の試験官も務めたエキスパート。ブライダルの世界から2005年にメモリアルアートの大野屋に入社。葬儀ディレクター、生前相談アドバイザー、セミナー講師としても活躍し、現在「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーとして年間5000件以上の相談に答える。
大野屋テレホンセンター著「もう悩まない! 葬儀仏事お墓ズバリ! 解決アンサー」(二見書房)、監修「小さな葬儀とお墓選び・墓じまい」(自由国民社)
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