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「子会社」とは?
会社法では、「子会社」を「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」としています(第2条第3号)。
わかりやすく言うと、「子会社」とは「自社の意思決定機関を特定の他社(=親会社)に支配されている」状態にある会社のこと。ちなみに、ここでいう意思決定機関とは、おもに株主総会を指しています。
株主総会で決定されることには、決算の承認や配当金の金額、取締役・役員の報酬などがありますが、子会社は、自分たちでそれらを決定することができず、親会社によってそれらが決定されるということです。
どうやって子会社をつくるの?
まずは、議決権(株式)50%以上を保有するしなければなりません。議決権とは、株主総会の決議に票を入れるための権利のこと。この議決権を半分以上保有することで、その会社の意思決定を支配することができます。つまり、その会社を子会社とすることができるのです。
議決権の保有率が50%に満たない場合でも、子会社とすることができます。親会社から子会社へ役員が出向している場合、子会社は実質的に意思決定機関を掌握されていることになりますね。ゆえに、議決権が50%以下であっても子会社となります。
子会社と完全子会社はどう違うの?
子会社とは、議決権の50%以上を親会社が保有している場合と解説しました。この子会社のうち、親会社が議決権を100%保有しているものが「完全子会社」です。
また、議決権の20%以上を特定の会社に保有されている場合には「関連会社」と呼ばれます。親会社、子会社、関連会社をまとめて、グループ会社と呼ぶこともあるようです。
子会社のメリットとは?
子会社化のメリットは親会社、子会社双方にあります。
1:税金が軽減される
規模の小さい会社を設立し、子会社にすれば、資本金額に応じて消費税や法人税などの面で、免税・軽減といった措置を受けられます。
2:経営リスクを切り分けることができる
「親会社」「子会社」という関係であっても、別会社であることには変わりがありません。ゆえに、何かあったときに経営的なリスクを切り分けることが可能となります。
3:親会社の社名やブランドを利用することができる
子会社側から見たメリットとして、親会社のもつ知名度やブランドを活用できることが挙げられます。顧客や取引先の信頼も得られやすいでしょう。また、大企業の一部を子会社化したような場合では、業務フローがシンプルになり、スピードアップにもつながります。
「子会社」のデメリットとは?
デメリットについても、「親会社」「子会社」双方にあります。子会社化を検討している場合には注意が必要です。
1:事務作業が増える
子会社として企業や事業を買い取ることで、会社としての規模が大きくなり、多くの事務作業が発生することとなります。たとえば、従業員の増加に伴う業務。給与計算や人事手続きをはじめ、事務作業などが増えることになるでしょう。
また、管理作業に留まらず、子会社の経営面についてもフォローしなければなりません。
2:子会社の責任を取る必要がある
親会社になることで、子会社への管理監督責任を負うことになります。もし、子会社がコンプライアンス違反などの不祥事を起こした場合、親会社が連帯責任を負うことになるのです。
「親会社」「子会社」、それぞれは別会社ではありますが、親子関係がある以上、親会社が主体的に子会社のリスク管理を行わねばなりません。
また、親会社には経営上の責任も発生します。親会社の連結決算の対象になる子会社を「連結子会社」と言いますが、その場合、子会社の損益は親会社の決算に計上されることになります。つまり、子会社の赤字や債務は、親会社が補填しなければならないのです。
3:社名変更を要求される場合がある
皆さんが突然、自分の名前を変更するように言われたらどんな気持ちになりますか? 「親が一生懸命考えてつけてくれた名前なのに」と思うでしょう。会社の名前も同様で、創業者たちの思いが込められているものです。しかし、子会社化によって、親会社は社名を一存で変更することができます。子会社側は、議決権を半分以上持たれていますから、その決定には従うしかないのです。
子会社化を成功させるには?
メリット、デメリットが「親会社」「子会社」双方にあることがおわかりいただけたかと思います。そんななか、「子会社」化を成功させるにはどのようにすればいいのでしょうか。
1:Win-Winの関係を構築する
子会社化を成功させるには、親会社と子会社双方にメリットを見出し、主従関係ではなく、グループとしてシナジー効果が出せるような関係を築くことが大切です。お互いのビジョンがマッチしているかどうかなども重要なポイントとなるでしょう。
ビジョンの方向性を共有できれば、多少のデメリットもメリットに変えることが可能でしょう。子会社化を成功させるためには、お互いを仲間としてみられるかどうかをじっくり、正直に検討しましょう。
2:デューデリジェンスを実施する
「デューデリジェンス(DD)」とは、「M&Aや投資用不動産の取引などの時に行われる、詳細かつ多角的な調査」のことです。
デューデリジェンスの導入には、双方が基本合意書を締結が必須。合意ができれば、「財政状態」「税務状況」「納税状況」「業務状況」などについて、専門家に依頼して調査を進めます。
また、デューデリジェンスによって問題が発覚した際は、基本合意契約を破棄することができるのです。もし子会社化の完全合意後であれば、問題が発覚してしまっても契約を破棄できず、手遅れになってしまうことも。
最後に
子会社化を検討している場合には、自社による判断だけでなく、M&Aの専門家などにも協力を依頼しましょう。慎重に進めることが大切です。
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