「失礼いたしました」の意味
多くの方にとって、ビジネスシーンで「失礼いたしました」という言葉を使うのはよくあることでしょう。一方で、普段からよく使い慣れた言葉であるがゆえに、「失礼いたしました」はお詫びを意味する言葉・フレーズであると思っている人もいるかもしれません。実は、「失礼いたしました」は相手に迷惑をかけて謝る時などに使う表現としては正しくないのです。
この記事では「失礼いたしました」の正しい意味や使い方、言い換え、英語での表現について説明していきます。
そもそも「失礼」とは?
「失礼いたしました」という文には「失礼」という単語が含まれています。よく耳にする言葉ですが、この「失礼」の意味について改めて考えてみましょう。
「失礼」とは、「他者への礼儀を欠いていること」を意味します。そのため、敬語で「失礼いたしました」と伝えることは「私はあなたに対して礼儀を欠いた振る舞いをしてしまいました」ということを認めることになります。そして、自分の無礼を認めた上で「失礼を許してほしい」というニュアンスが込められています。
「失礼いたしました」は謝罪の言葉ではない?
「失礼いたしました」は「礼儀を欠いたことを許してほしい」という意味です。ちょっとした挨拶のようなニュアンスも含んでいて、小さなミスや気配りの不足に対して使われることもあります。
このような理由から、相手に迷惑をかけたこと自体に対する謝罪の言葉として使うことはできません。迷惑をかけたことに対して、お詫びの気持ちを伝えたい時は「申し訳ございません」を使うようにしましょう。「失礼いたしました」と「申し訳ございません」がセットになって使われることはよくあります。
「失礼いたしました」の言い換え表現
「失礼いたしました」の言い換えにはどのような表現があるのか、見ていきましょう。
1:ご無礼をお許しください
「失礼いたしました」をより丁重にしたのが「ご無礼をお許しください」です。「無礼」は、「失礼」よりもさらに礼儀を欠いた状態を指します。「ご連絡が大変遅れてしまったご無礼をお許しください」のように、どちらかと言えばメールや文書などで使われることが多いフレーズです。
2:お詫びいたします
相手に迷惑をかけたことで謝罪したい時など、「失礼いたしました」が使えない時でも使うことができます。「深く」や「心より」をつけることで、謝罪の気持ちが強調されます。取引先や顧客といった目上の人に謝罪をする際に使われるフレーズです。
3:すみませんでした
「失礼いたしました」よりも軽い表現。ご近所さんや同僚など、近しい間柄の相手に謝罪する時に使われます。
「失礼いたしました」の例文
「失礼いたしました」は「失礼を許してほしい」時に使われる他、別れたり依頼をする時にも使われたりします。例文で使い方を見ていきましょう。
1:「お先に失礼いたします」
自分が相手よりも先に退室したり、退社したりする時に使うフレーズです。
2:「失礼いたしますが、会議室への道順を教えていただけないでしょうか」
相手に何かを依頼する時に使う表現です。道を尋ねたい時などに用いられます。
3:「お休みのところお電話をかけてしまいまして、大変失礼いたしました。申し訳ございません」
相手に迷惑をかけたことに対して、お詫びする時に使う表現。迷惑をかけたこと自体への謝罪なので、「申し訳ございません」もセットにして伝えましょう。
4:「乱筆乱文にて失礼いたしました」
メールの文章が長文になってしまった時に使われるフレーズです。「読むのに苦労する文章を伝えてしまった」という失礼をへりくだって詫びる表現になります。
5:「このたびはお礼が遅くなりまして、大変失礼いたしました」
お礼状を出すのが遅れた時に使う表現。「返事が遅れた」という失礼を詫びています。
「失礼いたしました」の英語表現
「失礼いたしました」は英語で表現すると「Excuse me」になります。直訳すると「許してください」。外で道を聞くために相手に声をかける、すれ違いざまに肩がぶつかったことを謝る時などに使われます。
一方、「申し訳ございません」は「I’m sorry」で、直訳すると「私は残念です」。自分の側に非があるのを認める時に使います。英語での表現を見ると、「申し訳ございません」の方が「失礼いたしました」よりも謝罪のニュアンスが強いのがわかります。
海外のレストランで料理を注文するため店員に声をかける際、「Excuse me」ではなく「I’m sorry」を使うと「申し訳ございません」と言っているのと同等なので注意しましょう。他にも、交通事故など裁判沙汰になりそうなケースで「I’m sorry」と言ってしまうと、自分が100%悪いということを認めてしまうので裁判が不利になることもあります。気をつけたいものですね。
ちなみにビジネスシーンといったオフィシャルな場で謝罪の気持ちを伝えたい時は、カジュアルな「I’m sorry」よりも丁寧な表現の「apologize」を使いましょう。英語で記述すると「I apologize」。深く謝罪していることを伝えたいならば「deeply」という副詞も追加して「I deeply apologize」と伝えます。「I deeply apologize for this matter」のように「apologize for」とすると、ある事柄について謝罪することを表現できます。
最後に
「失礼いたしました」は、その文字から読み取れるように「礼を失っている」すなわち「他者への礼儀を欠いている」ことを意味します。あくまで礼儀を欠いたことへの謝罪であって、相手に迷惑をかけたことへの謝罪とは異なります。つまり、お詫びの言葉として十分ではありません。迷惑をかけたこと自体を謝りたい時は「申し訳ございません」などが正しい表現です。間違えないように注意しましょう。
「失礼いたしました」に限らず、普段使い慣れた言葉やフレーズにも正しい意味や使い方を知らなかったということはあるかもしれません。これを機に身近な言葉や言い回しについて調べ直してもよさそうですね。
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