「共感覚」って何?
「共感覚」という言葉を知っていますか? 文字に色がついて見えたり、音に色を感じたりする感覚のことです。一説には200人当たり1人は持っていると言われる共感覚。一体どういうこと? 詳しく解説してみましょう。
「共感覚」は、「きょうかんかく」と読みます。
共感覚の意味
「共感覚」は「シナスタジア」とも言われ、ひとつの感覚刺激から、複数の知覚が引き起こされることを指します。感覚刺激という言葉、ちょっと難しいですよね。
例えば、視覚。「あ」という文字を見ると、多くの人は文字として認識しますが、共感覚のある人は「あ」という文字であることを認識するのとともに、「赤」や「黄色」といった色も認識します。もちろん、この場合、「あ」という文字には色は付いていません。通常の黒い文字を見て「赤い」と認識するのが共感覚です。
共感覚を持つ人の割合
まれに、後天的に共感覚を得る人もあるようですが、共感覚を持っている人の多くは、生まれつきです。その割合は200人に1人といわれたり、2000人に1人といわれたり、諸説あります。割合にずいぶんと幅がありそうですが、共通していえることは「女性に多い」ということ。
共感覚者は、自分が見ているもの、感じていることを現実だと確信を持っているため、共感覚のない人が見たり感じたりしている世界のことをわかっていません。子どものときには「意味のわからないことを言う子だ」と言われながら育ち、大人になって自分が周囲と違う感覚を持っているらしいことをようやく知った、という人も多いそうです。
共感覚のしくみ
では、共感覚はなぜ引き起こされるのでしょうか? 共感覚の中でも最も多いのが「文字や数字に色がついて見える」という状態なのですが、文字を認識する脳の部位と、色を認識する脳の部位がとても近くにあり、それらが混戦することで共感覚が生じるのではないか、と考えられています。
この考え方を「クロス活性化モデル」と呼びますが、それでもすべての共感覚がこの考え方で説明できるわけではないそうです。
赤ちゃんなら誰でも持っている?
驚くことに、生後3カ月くらいまでの新生児の脳にはみんな、共感覚を持っているといわれています。新生児の五感はしっかりと分かれていないのです。大きくなっていくにしたがって徐々にきちんと分かれるようになり、各感覚野をつなぐ経路が閉じられていきます。
共感覚を持つ人は、この経路の分化が何かの理由で行われず、その感覚を持ち続けたのではないか…という考え方もあります。
共感覚を持つ人の感じ方、表現方法
共感覚者は世の中をどのように見つめ、どのように感じているのでしょうか?
「1192」は「白・白・赤茶色・オレンジ」
まずは、数字に色がついて見える状態。電話番号や部屋番号なども、単なる数字としてだけではなく、色付きの数字に見えているのだとか。数字を細かく書きこむことで、塗り絵ができたりもするそうです。
「猫の鳴き声が青い」
音に色がつく場合もあります。犬の声が赤い、飛行機の音が黄色い…。とてもカラフルな世界が見えているのだそう。
算数の問題が甘い
これは比喩的な表現ではなく、問題文の文字に味を感じるのだそう。匂いを感じる場合もあるようです。
共感覚を持つ人の特徴を知ろう
共感覚を持つ人が見ている世界の一端、想像できたでしょうか? 次に、共感覚者の特徴を調べてみました。
色へのこだわりが強い
例えば、ホテルの部屋番号の数字の配色が気に食わない場合、「なんで、こんなに汚い部屋をあてがわれるのか」と嫌な気持ちになったりするのだそう。共感覚のない人からすれば、色の組み合わせなどは大した問題ではない場合がほとんど。共感覚者は、色に敏感に反応することがあるようです。
記憶力がいい
暗算や暗記などの能力が非常に優れていることで知られるダニエル・タメット氏は、共感覚者。タメット氏は円周率を22,514桁まで暗記しているのだそう。単なる数字の羅列として認識するのではなく、色の感覚がそれらの記憶を助けてくれるのだそうです。ちなみに、色の見え方ですが、「見える」というよりも、「感じる」といったほうが適しているようです。不思議ですね。
共感覚を持つ人のデメリットは?
記憶力が良かったり、色や音への特殊な感覚があることから芸術的センスがあったりする共感覚ですが、一方で悩みのタネにもなるといいます。
わがままだと思われる
色の配列や匂い、音などを「嫌だ」と感じた場合、共感覚者はどうしてもそれを受け入れないことがあります。例えば、先に述べた例のようにホテルの部屋を嫌がったり、人の名前に嫌な顔をしてしまったり…。共感覚のない人にとっては理解しづらいので、わがままだと思われる場合が多くあります。
覚えにくいものもある
例えば、文字としては違う苗字でも、色の配列としては同じ苗字があったとします。共感覚がない人にとっては全く違和感のないことですが、共感覚があると、苗字の区別が難しくなってしまうのです。すると、「なんでそんなこと間違うの??」と呆れられたりしてしまうのです。
まず、理解されない
共感覚の持ち主がいることはわかってきているのですが、それほど広く知られているわけではなく、またそのメカニズムも解明されていません。共感覚は、自身でコントロールできるものではなく、また本人にとってはそれが「普通」で、逆に周囲が「そうではない」と認識する方が難しかったりするくらい。周囲の理解を得るのがたいへん難しいのです。
子どもが共感覚ではないかと感じたら
先にも述べたとおり、大きくなると、いくらか上手に自身の「共感覚」と折り合いが付けられるようになる人も多いのですが、子どもの場合はなかなか難しいですよね。自分の子どもが感覚所持者だった場合、「いつもよくわからないものが見えてるっぽい」と、不安を感じる親も。
子どもが「共感覚」を持っている可能性を感じた場合、どのように接するといいのでしょうか?
否定しない
「1が白、3は青」と、突然子どもが言い出したらびっくりしてしまいますが、否定はしないであげましょう。本人には確かな感覚なので、それを都度周囲が「ちがうよ」「白くないよ」と否定されてしまうと、その子の心にふたをすることになってしまいます。
個性として認めてあげる
「共感覚」を特殊な能力のひとつととらえ、そのまま受け入れるのが大切。走るのが速い、絵を描くのが上手といったことと同じです。
サポートしてあげる
そのうえで、本人が困っていたら助けてあげるのが大事。覚えにくい文字があれば、一緒にゆっくり考えてあげる、嫌なことがあればどう嫌なのか聞いてあげる。それだけで安心するのではないでしょうか?
最後に
共感覚のない人から見れば、共感覚のある人が感じていることは不思議に感じられますが、若干の共感覚は誰にでもあるといわれています。人にはそれぞれ個性があり、違っていて当然です。それぞれの違いを尊重しつつ、楽しんでいきたいものですね。
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