「モノローグ」の意味や役割とは?
モノのログ? 聞いたことはあるけれど、意外とすぐ意味を言えない言葉のひとつに、モノローグがあります。英語でMonolog、Monologueと書かれるこの言葉について、本記事で深掘りしていきます。
モノローグの言葉の意味
「モノローグ」は直訳すると「独白」という意味を持つ言葉。演劇・舞台用語のひとつで、「登場人物が相手との会話なしに心情や考えを述べるセリフ」のことです。人物の「心の声」などと呼ばれることもあり、自身の感情や場面に対する感想を観客にもわかるように述べる、という演出技法です。
語源は英語の「monologue」。ラテン語の“mono”「ひとつ、単」と、“logue”「話、談話」が組み合わさった言葉であり、「ひとりの話、ひとりごと」という意味になります。
モノローグ自体は古くから知られている演出方法で、「登場人物が自分の心の声を伝える」「天や神が語りかける声」「その場にいない登場人物の声」など、さまざまなパターンがあります。現代では演劇のほか、映画、ドラマ、文学作品、漫画まで、さまざまなメディアで使われていますね。
演出技法を表す言葉から拡大解釈して、演者ひとりで行う舞台、いわゆる「ひとり芝居」を指すことも。「独演劇」「モノドラマ」「ワンマンショー」などと同じように使われることもあります。
物語においてモノローグが果たす役割
一般的に「モノローグ」は、劇中人物の思考・感情・心理など、表面に表れにくい人間的な「内面」を描き出し、それを観客に伝えるために使われます。
「相手との対話がない」ことがモノローグの条件ですが、演劇、映画、文学問わず、基本的に「観客という相手」が想定されるため、観客に劇中人物の胸中を伝えるのがモノローグの役割。
心理描写と言い換えるとわかりやすいかもしれません。観客に感情の矛先を向けたり、問いを投げかけたりする形のモノローグもあります。
いずれにしろ「モノローグ」には、登場人物がひとり語りをすることでキャラクターの内面が表現され、「観客側が作品に感情移入しやすくなる」という効果があるのです。
モノローグの正しい使い方は? 3つの例文をご紹介
1:シェイクスピアの『ハムレット』には、王子が自問自答する有名なモノローグがある
ハムレットの第三幕第一場の冒頭シーンに、主人公が殺された父親の復習を果たすべきか自問するシーンがあります。
それが、かの有名な「生きるか、死ぬか、それが問題だ」から始まる、長い長いひとり語りのセリフ。この世にある不条理や矛盾を観客に問いかけているとも解釈できるものです。演劇内の「独白」を指している用い方です。
2:死に別れた母親が、天から幼い主人公に語りかけるモノローグは、見ている人の涙を誘った
舞台上にはいない登場人物が、舞台上の人物と対話はできないものの、心の声として語りかけるモノローグもあります。観客は、その場にいないキャラクターの心情を聞くことで物語の背景を知ることになり、さらに深くストーリーに入り込むことになります。
3:話題の役者のモノローグとあって、大勢の観客が詰め掛けた
これは上記2つの例文とは意味合いとは違って、「ひとり舞台」のことを指します。セリフすべてが演者ひとりから繰り出されるため、テクニックが必要とされます。登場人物が多くいるなかでの「独白」とはまったく違った雰囲気を楽しめます。
モノローグの類義語とは?
1:ソリロキー
演劇技法として細かく分類すると、思想や感情を独白することは「soliloquy」と言います。ラテン語が語源の英語で、読みは「ソリロキー」。意味はこちらも同様に「独白」です。
「モノローグ」と比べると、「ソリロキー」は聞き手がいなくても感情が思わずあふれ出てしまうような形のセリフです。モノローグよりも意味が狭く、自問自答しているような場合の独白を意味します。
2:アサイド
舞台上に登場人物が何人か存在するなかで、観客に向かってひとりで喋るセリフのことは「傍白」と言います。これが「アサイド」で、英語では「aside」。
ほかの登場人物には聞こえていないという設定のもとで、観客に心情を伝えたり、他人のバックボーンを説明したりします。日本では馴染みが薄い言葉ですが、演劇の本場、イギリスなどではよく使われています。
モノローグの対義語とは?
ダイアローグ
「モノローグ」と対義語関係にあるのが「ダイアローグ」。英語では「dialogue」で、「対話、会話」という意味になります。語源は、“dia-”「横切る」と“logue”「話、談話」を合成したもの。
劇中における「対話」のセリフという意味で使用されます。ふたり以上の登場人物同士が対話を交わすという意味の演劇用語ですが、現代の作品ではこのダイアローグを中心にストーリーが描かれ、展開していくことがほとんどです。
演劇や映画などの作品に使用される言葉ですが、人材教育や組織開発の分野にて用いられることも増えています。
『自由な雰囲気で行われる真剣な話し合いで、互いに共感し、相手の意見を尊重しつつ、行動の変化を引き出し合う、そんなコミュニケーションの取り方』という意味でも使用されているので、ビジネスシーンで使う機会があるかもしれません。
ダイアローグによってまとめられた著作は「対話篇」とも呼ばれます。モノローグと一対の言葉として覚えておくとよいでしょう。
最後に
「モノローグ」について、理解できましたか? 対義語として解説したダイアローグだけでなく、プロローグやエピローグなど似た言葉もあります。
日常シーンではあまり使わない言葉ですが、舞台や映画を楽しんだあと、「あのモノローグ、効果的だったよね」など感想を語り合うなかで使ってみると、一目置かれるかもしれません。
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