咳は、気管に入り込んだホコリやチリ、細菌やウイルスなどの病原体を体外へ排出するために生じる反射の一種です。
それだけでなく、風邪などによって気道粘膜の炎症が長引くことで粘膜が敏感になり、乾燥や温度差などの些細な刺激で咳が引き起こされることも少なくありません。
咳が長引くと声がかすれたり喉が痛んだりするだけでなく、無駄な体力を消耗して疲労感や倦怠感をまねくこともあります。特に夜間の咳は、良質な睡眠を妨げることも多く、なるべく早く改善したいものです。
ここでは、夜の咳がひどくなる原因と対処法について、詳しく解説します。
【咳】夜になるとひどくなるのはなぜ?夜間に咳がひどくなる主な原因
咳は様々な病気によって引き起こされますが、夜にひどくなるケースも多々あります。
夜に咳がひどくなる病気には気管支喘息や咳喘息、副鼻腔炎などの喉や鼻の病気もありますが、中には逆流性食道炎や心不全など、呼吸器官とは関連しない病気が原因のこともあります。
副交感神経の働き
睡眠中は自律神経の中の副交感神経が優位な状態となっています。副交感神経には気管の筋肉を収縮させて気管を細くする作用があるため、咳が出やすくなることがあります。気管支喘息の咳発作が夜間に集中するのは、このためと考えられています。
鼻水や痰が気管に流れ込む
鼻炎や副鼻腔炎、咽頭炎では、横になった状態になると鼻水や痰が気管に流れ込むことによって咳を引き起こすことがあります。
特に慢性化した副鼻腔炎ではドロドロした鼻水が長期間にわたって気管を刺激するため、気管の炎症も慢性化して気管支喘息に移行することが知られています。

空気の乾燥
咳喘息などのように、気管粘膜の炎症によって粘膜が過敏な状態になると些細な刺激で咳が出るようになります。特に空気の乾燥は気管粘膜を強く刺激することがあり、睡眠中の口呼吸などによって粘膜が乾燥することで咳が止まらなくなるケースもあります。
ハウスダストやダニ
咳は気管に入り込んだ異物を体外へ排出するための反射運動です。睡眠中は寝具などから舞い上がるハウスダストやダニなどを吸い込みやすいため、これらが刺激となって咳が出ることがあります。

身体の冷え
喉や気管の粘膜には異物をキャッチする「線毛」と呼ばれる構造が密生しています。線毛は乾燥や冷えによって働きが悪くなるため、睡眠中に首回りが冷えると異物が気管に入りやすくなって咳を引き起こすことがあります。
【咳】夜、咳が止まらないときはどうしたら?
夜は様々な原因で咳が出やすくなることがわかりました。咳が止まらなくなると、良質な睡眠をとることができずに疲れがたまったり、体調が悪化したりすることで、咳がさらにひどくなるという悪循環に陥るケースも少なくありません。
夜の咳に悩んだ場合は、咳が出やすくなる原因をひとつずつ改善していきましょう。
例えば…
・加湿器などを使用して室内の湿度を適度に保つ
・掃除・空気の入れ替えをこまめに行って室内の空気を清潔にする
・寝具は定期的に天日干ししてダニの発生を防ぐ
・首回りも暖かくして寝る
などの対策が有効です。

そして、気管支喘息や副鼻腔炎など夜間の咳を引き起こす病気を罹患している場合は、適切な治療を受けて発作の予防や症状の改善を図ることが大切です。
また、これらの対策を行っても夜間の咳が改善しない場合は、逆流性食道炎や心不全など呼吸器官以外の病気や肺がんなど肺に発症する何らかの病気の可能性も考えられます。
咳はありふれた症状であるため、軽く考えられがちですが、思わぬ病気が原因の場合もありますので、一度病院で診察を受けることをおススメします。
【咳】が止まらず寝れないときの速効性のある対処法3
夜間の咳は睡眠不足を引き起こすことも少なくありません。咳が止まらず眠れないときは、以下のような速効性のある対処法を講じてみましょう。
温かいドリンクを飲む
適度に温かいドリンクを飲むことで首回りが温められて線毛の動きが活発化するとともに、ドリンクの湿気でのどが潤され咳が止まりやすくなります。
ドリンクは、殺菌効果のあるカテキンを多く含む緑茶やのどの粘膜を優しく保護するはちみつ入りのものがおススメです。

首回りを温める
首にタオルなどを巻いたり、首回りまで覆われるようなパジャマを着用して首を温めると咳が止まりやすくなります。
ただし、過度に温めすぎると汗をかくことでかえって眠りが妨げられることもありますので注意しましょう。
空気を入れ替える
ハウスダストやダニなどにアレルギーのある人は、アレルゲンを除去するために空気を入れ替えれば咳が止まることがあります。
ただし、寒い時期は空気の入れ替えによって体を冷やすこともありますので、空気清浄機を利用するとよいでしょう。

成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。