ズキズキと頭が痛む… 頭が締め付けられるように痛む… こんな症状に悩まされる女性は少なくありません。厚生労働省による国民生活基礎調査(平成28年)によれば、女性が悩まされる身体症状の中で最も多いのが肩こり、そして頭痛は5番目に高い割合を占めていることが分かりました。
頭痛が生じる頻度や痛みの程度は人によって異なりますが、定期的な頭痛に悩まされる方も珍しくなく、中には日常生活に大きな影響を及ぼしているケースも…。しかし、日々忙しく、なかなか病院に行けないという方も少なくないでしょう。
そこでおすすめしたいのが副作用も少なく手軽に購入できる漢方薬です。今回は、頭痛に効く漢方薬について詳しく解説します。
【目次】
・そもそも漢方薬と頭痛薬はどう違う?
・頭痛におすすめの漢方って?
・漢方薬はどこで手に入る?
そもそも漢方薬と頭痛薬はどう違う?
慢性的な頭痛に悩まされる「頭痛持ち」の女性は少なくありません。30代以降の女性の20%以上は片頭痛をはじめとした「頭痛持ち」であるとの報告も。
しかしながら、頭痛が起こるたびに病院へ行く方は少ないのが現状です。寝込んでしまうようなひどい頭痛や発熱などの症状を伴わない限り、市販薬でセルフケアを続ける方も多いでしょう。
セルフケアの強い味方である「市販薬」ですが、頭痛を予防・改善する市販薬には漢方薬と頭痛薬があります。それぞれどのような特徴があるのか見てみましょう。
主な原料は天然成分の漢方薬
漢方薬とは、古代中国の時代から漢方医学の分野で使用され続けてきた薬で、主な原料は天然成分の生薬です。
漢方医学は、不調の原因となる体質を改善していくことを重視するというのが基本的な考え。このため、頭痛など特定の症状そのものにスポットを当て、痛みを取り除くことに重きを置く現在の西洋医学とは方針が異なります。
頭痛に効果がある漢方薬も同様の考え方に基づくもので、頭痛の原因となる血行の悪化、冷え、過剰な水分貯留、ホルモンバランスの乱れなどの体質を整えることで頭痛を予防・改善する効果が期待できます。
そのため、強い頭痛が起こっている時に服用を開始しても即効性は高くなく、効果を実感できないことも少なくないでしょう。しかし、服用を続けることで頭痛が起こりにくい体質に整えてくれるため、結果として頭痛が起こりにくくなった、頭痛が軽くなった、という方も多いのです。
定期的に頭痛に悩まされる方は体質改善を目指して漢方薬に頼るのも一つの方法ですね。
西洋医学で用いられる医薬品が頭痛薬
一般的に「頭痛薬」と言えば、現在の西洋医学で用いられる医薬品のことを指します。
漢方薬のように頭痛の原因となる体質を改善する効果ではなく、痛みの原因となるプロスタグランジンの産生を抑えるなど痛みをピンポイントでブロックする効果を持つのが特徴です。このため、即効性が高く、効きやすい・効きにくいといった個人差も少ないのがメリットの一つと言えるでしょう。
現在市販されている代表的な頭痛薬には、ロキソニンなどのロキソプロフェンナトリウム製剤、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの非ピリン系鎮痛剤、イソプロピルアンチピリン配合剤などのピリン系鎮痛剤が挙げられますが、いずれも誤った使用を続けると思わぬ副作用が起こる可能性があります。
さらに、これらの頭痛薬は長期間服用することで薬自体が頭痛を引き起こすケースもあります。このような頭痛を「薬剤の使用過多による頭痛(薬剤乱用頭痛)」と呼び、自己判断で頭痛薬を高頻度で飲み続け、さらに頭痛がひどくなることで頭痛薬が手放せなくなってしまうという悪循環に陥ることがあるので注意が必要です。
頭痛におすすめの漢方って?
では、頭痛に対して効果のある漢方薬にはどのようなものがあるのでしょうか? ここではいくつかのおすすめ漢方薬をご紹介します。
風邪による頭痛には…
風邪による頭痛には次のようなものがおすすめです。ただし、風邪の頭痛に対して漢方薬を使用するときは本格的に症状が悪化してからではなく、「風邪のひきはじめ」から服用を開始するようにしましょう。
・麻黄湯(まおうとう)
微熱や咳、関節痛、だるさなど風邪のひきはじめのような症状が出たときは麻黄湯が効きます。
麻黄湯には発汗作用があるため、痛みや熱を発散作用があるとされています。近年では、インフルエンザにも効果があるとして広く用いられています。
ただし、麻黄湯にはエフェドリンと呼ばれる成分が含まれており、神経を過剰に刺激することがあるため高齢者や体力が著しく低下している方には向きませんので注意しましょう。
・柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
身体の中に溜まった熱や炎症を鎮め、胃腸の調子を整えてくれる効果があるとされる漢方薬です。
微熱や悪寒、関節の痛み、頭痛などのほか、下痢は吐き気などの胃腸症状を伴う風邪のひきはじめに服用すると効果があります。
また、体力が低下した方や疲れが溜まっている方でも安心して服用することができるとされています。ただし、長く服用すると高血圧やむくみなどの症状を引き起こすことがありますので注意が必要です。
血行の悪化などが原因の頭痛には…
女性の頭痛の原因の多くは冷えや姿勢の悪さなどによる血行の悪化が原因の「緊張型頭痛」です。普段から冷えや肩こりに悩まされている方には次のような漢方薬がおすすめ。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷えやむくみを改善する効果があるとされる漢方薬です。また、ホルモンバランスを整えて生理周期を整える効果もあるとされているため、生理の前後に頭痛がひどくなりやすいタイプの方におすすめです。ただし、まれに食欲不振や胃部不快感などの副作用が現れることがありますので胃腸が弱い方は様子を見ながら服用を開始してください。
・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
身体の中心であるお腹をあたためながら血行を改善する効果のある漢方薬です。頭痛や冷えと共にお腹の張りや吐き気、下痢などの胃腸症状が現れやすい方によいとされています。胃腸が弱い方も安心して服用することができます。
原因がよく分からない慢性的な頭痛には…
はっきりした原因が分からないのに、定期的に頭痛が起こる人は次の漢方薬がおすすめです。
・釣藤散(ちょうとうさん)
片頭痛や緊張型頭痛など一般的に「慢性頭痛」と呼ばれるタイプの頭痛に効果があるとされる漢方薬です。そのほか、めまいや肩こりも改善してくれます。
特に血圧が高めの方に効果があるとされています。
漢方薬はどこで手に入る?
上でご紹介した以外にも頭痛に効くとされる漢方薬は多数あります。これらの漢方薬は薬局やドラッグストア、インターネットなどで自由に手軽に購入することができますので、頭痛に悩んでいる方は一度試してみてはいかがでしょうか?
漢方薬は種類が多いので、どれを選べばよいか迷ったときは薬剤師に相談しましょう。
しかし、慢性的な頭痛は副鼻腔炎など思わぬ病気が背景にある可能性も否定できません。長く続く頭痛に悩んだときは第一に病院を受診して医師の診察を受けることをおすすめします。
また、漢方薬は医療機関で処方してもらうこともでき、保険適応となるので市販薬よりずっと経済的に購入することが可能ですよ。
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成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。