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「すいません」と「すみません」の違い
結論から言ってしまえば、意味はほぼ同じです。
どちらも「謝罪」「感謝」「呼びかけ」に使われている実態がありますが、一方で場面次第では「丁寧な言い回しではない」「不適切な表現である」と捉える人も少なくないフレーズです。
強いていえば「すいません」は口語的で、「すみません」は標準的な言い回しという違いがあります。
なお、辞書的な意味は次のとおりです。
《動詞「す(済)む」の連用形+丁寧の助動詞「ます」の未然形+打消しの助動詞「ん」》
「すまない」の丁寧語。相手に謝罪・感謝・依頼などをするときに用いる。
(出典:デジタル大辞泉/小学館)
ただし「すいません」「すみません」のいずれもフォーマルな表現ではないため、格式のある場での使用は避けるのが賢明でしょう。
「すいません」「すみません」でトラブルが悪化… アラサーの残念エピソード

「すいません」や「すみません」は誠意を込めて使ったとしても、相手からは軽すぎると捉えられてしまい残念な展開を呼ぶこともあります。つまり、使うときにはよくよく注意を払ったほうが確実です。
筆者が見聞きした事例から、アラサー世代が失敗したエピソードを紹介しましょう。
♦︎取引先への謝罪で連呼して上司に怒られた
「私のミスで取引先への遅延が発生してしまったときに、とにかく謝らなくちゃ! と必死になって『すみません』『すみませんでした』を連呼しました。
最終的に取引先は『まぁ仕方ないですね』という雰囲気で収めてくれたのでホッとしたのですが…。
直後に上司から『謝罪をするときは“すみません”ではなく“申し訳ありません”が適切。最初からきちんと謝っていれば、ここまで時間がかからなかったかもしれない』と指摘を受けました。
フォーマルな場面で『すみません』は相応しくないと、そのときに初めて知りました」(30代前半)
♦︎感謝の気持ちが薄いと思われた
「先輩が私の仕事を代わりにやってくれたので、感謝の気持ちを伝えるために『ご対応いただき、すみません!』とチャットでお礼を送ったんです。
でも、先輩からの返事が既読のまま来なくて…。何か失礼があったのかなと心配になって帰宅後に彼氏に相談をしたら『先輩に“すみません”はマズイんじゃない? “ありがとうございました”って言わないと』とアドバイスをされ、ハッとしました。
軽いお礼に聞こえてしまったのかもしれず、先輩の気分を害したのだろうなと反省しました」(20代後半)
♦︎責任感がないと誤解された
「私が原因の大きなトラブルを上司に報告するときに『すみませんでした』と伝えたところ、その言い方が気に入らなかったみたいでした。
『こんなに大きなトラブルなのに、責任感がないように聞こえる。なんでも“すみません”で済ませないほうがいい』と改めて注意をされ、冷静に考えたらそのとおりだなと思いました。
仕事では、“すみません”では済まない場面があると勉強になりました」(30代前半)
「すいません」「すみません」を使う際に注意したいポイント

アラサーの失敗経験も参考にしながら「すみません(すいません)」をビジネスシーンで使うときに注意すべきポイントを整理しましょう。
♦︎ポイント1:謝罪の重みが軽くなるのを心得る
「遅れてすみません」「ミスをしてすみません」など、日常的な謝罪に「すみません(すいません)」は便利なフレーズだと思いがち。
しかし謝罪のニュアンスが軽く受け取られやすい表現ですので、誠意を伝えたい場面では避けるべき言い回しです。
「申し訳ありません」を用いるべきシーンで「すみません(すいません)」を使わないように心がけ、もしも使うならば謝罪の重みが意図しているよりも軽くなる可能性を心得て用いるべきでしょう。
♦︎ポイント2:感謝が伝わりにくい点を考慮する
「ご対応いただき、すみません!」など、ビジネスシーンでも時折り“感謝”の意味で「すみません」を用いている文章を見かけます。
しかし本来は「ありがとうございます」と伝えるべきところを「すみません」で済ませてしまうと、感謝の気持ちが弱く響くだけでなく、場合によっては相手がバカにされているのかと不快に思うことも…。
ビジネスシーンで誠実なコミュニケーションを心がけるなら、感謝の言葉は「ありがとうございます」を用いるほうが丁寧でしょう。
♦︎ポイント3:相手との関係性を考えて使う
上司や取引先など自分より立場が上で配慮をすべき相手に「すみません(すいません)」を使うのは、よくよく考えてからにしたほうが賢明です。
柔らかい響きの言葉の丁寧語ではありますが、正式な敬語だと捉えない人も少なくないことから「申し訳ありません」や「ありがとうございます」の言い換えとして用いると、マナー違反や無教養な印象を与えかねません。
一方で、同僚や日頃からラフな会話をする関係性の相手ならば「すみません」で十分なことも。
つまり、その場に応じて相手との関係を考えて使いたい言葉です。
「すみません(すいません)」に代わる言葉のバリエーション

「すみません(すいません)」に代わる言葉をチェックして、適切に使い分けができるようにしておきましょう。ビジネスシーンでは、言葉選びひとつで印象が大きく変わります。
♦︎謝罪をするならば…
謝罪をするならば「申し訳ございません」や「申し訳ありません」「ご迷惑をおかけしました」を用いるほうが誠意が伝わりやすくなります。
♦︎感謝を伝えるならば…
感謝を伝えるならば「ありがとうございます(ありがとうございました)」や「助かります(助かりました)」と言い換えたほうが、丁寧な印象を与えます。
♦︎呼びかけならば…
呼びかけに使うときには「恐れ入りますが」や「失礼いたします」を用いると、フォーマルな言い回しに聞こえやすいでしょう。
「すいません」「すみません」一択から抜け出してコミュニケーション上手に!
「すみません(すいません)」は、謝罪・感謝・呼びかけと複数の場面で使える便利な日本語です。
しかしビジネスシーンでのコミュニケーションでは、“意味が通じる”ことに加えて丁寧で洗練された会話が求められます。
そのため「すみません(すいません)」一択では、教養に欠ける印象を与えがちなのも事実でしょう。
信頼されるビジネスパーソンとして、語彙力はとても大切。カジュアルな会話なら「すみません(すいません)」でも許容されても、フォーマルな場面では適切な言葉を使えるよう意識していきましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。



