ビジネスシーンやスポーツの場面で、「満身創痍の状態」「満身創痍で頑張る」という言葉を耳にしたことはありませんか? なんとなくあまり良い意味ではないのはわかりますが、具体的にどのような状態を指す言葉なのでしょうか。本記事では、「満身創痍」の意味や使い方、言い換え表現などを解説します。意味を誤解して覚えている方も多い言葉なので、この機会にチェックしてみてくださいね。
満身創痍とはどういう状態?
「満身創痍」は、「まんしんそうい」と読みます。意味を辞書で確認しておきましょう。
全身傷だらけであること。転じて、徹底的にいためつけられること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
言葉をより詳しく読み解いていくと、「満身」は「からだじゅう、全身」。「創痍」は、「刃物などで体に受けた傷。または、精神的な痛手」を指します。この2つを組み合わせて、「全身がボロボロで傷ついた状態」を表すのです。また、この意味が転じて、肉体だけでなく精神的にもボロボロな状態にも使われます。
使い方を例文でチェック!
「満身創痍」は、身体的に傷ついている場合と精神的に傷ついている場合の両方の意味があります。そのため、どちらの意味なのか伝わるように話すことがポイントです。適切な使い方を3つのパターンで紹介します。
1:足に怪我をして満身創痍の状態だが、来月の大会には絶対に出場したい。
こちらは、身体的に傷ついているパターンの例文です。「怪我」や「大会」という言葉を入れることで、体にダメージを負っていて大変な状況が伝えられますね。
2:後輩は、慣れない仕事に追われてすっかり満身創痍の状態だ。
こちらは、どちらかというと精神的なダメージを負っていることを強調した例文です。はたから見て、「あの人はひどく疲れていそうだな…」と感じられることもあるはず。そんな時に、このようなやや遠回しな言い方をすることがあります。
3:受験前に徹夜で勉強し、満身創痍で挑んだ。
受験やスポーツでは、「満身創痍で挑む」「満身創痍で頑張る」という表現もよく使われます。心身ともにボロボロになるまで一生懸命頑張るといった気迫が伝わってきますね。相手に自分の努力ややる気をアピールしたい時に使うと良いでしょう。
言い換え表現は?
「満身創痍」によく似た言葉には、「疲労困憊」「気息奄奄」「半死半生」などがあります。違いを理解して、状況に合わせて使い分けてみてくださいね。
1:疲労困憊
「疲労困憊(ひろうこんぱい)」の意味をチェックしてみましょう。
ひどくつかれて苦しむこと。つかれはてること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「疲労困憊」とは、心身ともに疲れ果てること。「疲労」だけでも「疲れる」という意味になりますが、「疲れて困る、苦しむ」という意味を持つ「困憊」がつくことによって、さらに辛い状態を表すのです。長時間活動して、もう動く気力もない… という時に使われることが多いでしょう。
(例文)
・夫は徹夜続きですっかり疲労困憊のようだ。
・一日中重い荷物を持って疲労困憊した。
2:気息奄奄
「気息奄奄(きそくえんえん)」の意味は以下の通りです。
息が絶え絶えになって、今にも死にそうなさま。また、物事が今にも滅びそうな状態にあるさま。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「気息」は、「呼吸」。「奄奄」は、「息も絶え絶えで生気がないこと」。病気や怪我で危ない状態になっている時に使われます。また、人以外にも、倒産しそうな企業や国家が危機に見舞われている時にも使うことがあるようです。
(例文)
・不景気でその会社は気息奄奄としている。
・その患者は気息奄奄だ。
3:半死半生
「半死半生(はんしはんしょう)」の意味は、以下の通りです。
死にかかっていること。もう少しで死にそうなようす。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
言葉の通り、半分死んで、半分生きているような状態のこと。事故やトラブルによって痛手を負い、ギリギリ生き延びているような危機的な状況で使われます。「はんしはんせい」「はんしはんしょ」とも言います。
(例文)
・熊に追いかけられて、半死半生の目に遭う。
・祖父は戦争で半死半生の状態になったそうだ。
英語表現はあるの?
「満身創痍」は、「体や心が傷ついていて、疲れ切っている状態」のこと。英語でそのような状態であることを伝える時にはどのような単語が適切なのでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
1:exhausted
「exhausted」は、「ヘトヘトの」「力尽きた」という意味。他にも容器などがからにになったという意味を持つことから、体力や気力がなくなり抜け殻の状態を表します。頭に「completely」をつけて「completely exhausted(完全に疲れ果てた)」ということもできますね。
・I studied all night before the test and was exhausted.(テスト前は徹夜で勉強したので疲労困憊した)
・I was exhausted from running all the time at soccer games.(サッカーの試合でずっと走り続けていたので疲れ切ってしまった)
2:worn-out
「worn-out」は、「疲れきった」「疲労困憊した」という意味の形容詞です。服や物が「ボロボロになる」という意味でも使えますが、人が疲れた場合にも使用できます。
・I feel worn-out.(私はもうクタクタだ)
・She must be worn-out after coming home from work.(彼女は仕事から帰ってきて疲れ切っているに違いない)
最後に
「満身創痍」は、肉体的にも精神的にもボロボロな状態を表す熟語です。仕事や運動をがむしゃら頑張っていると、気がついた時には疲れ切っていることも珍しくありません。「疲れたな」と思った時には、ヘトヘトになった自分を労ってあげてくださいね。
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