「語るに落ちる」の誤用に要注意!
小説やドラマなのでたびたび見聞きする「語るに落ちる」。この言葉を知っている人も多いと思います。しかし、実は間違った意味で使われることも多い言葉です。
本記事では、「語るに落ちる」の意味や正しい使い方、類語表現などについて見ていきましょう。友達など、気心の知れた相手に、キリッとした表情で「語るに落ちたな…」と言って一笑いとることにも使えます。
「語るに落ちる」とは?
「語るに落ちる」とはどういう意味で使うことができるでしょうか? 言葉をそのまま受け取ると解釈が難しいですよね。まずは、正しい意味について説明します。
「語るに落ちる」の意味
「問い詰められると用心してなかなか口を開かないが、勝手に話させるとうっかり秘密を白状してしまう」ことを「語るに落ちる」と言います。
「語るに落ちる」が一般的に知られていますが、実は「問うに落ちず語るに落ちる」を省略した言い方です。
人に命令されたり問い詰められたりすると、なんだかやる気が削がれてしまったり反抗する気持ちが芽生えてしまったりすることってありませんか? それが「問うに落ちず」ということですね。
ところが、自分の意志で自由に話すことができるようになると、それまで何度聞かれても言わなかったこともうっかりポロッと話してしまうことがあります。これが「語るに落ちる」です。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「語るに落ちる」の間違った使い方
「語るに落ちる」は、言葉の通り受け取ると解釈が難しいことから、しばしば誤用されることがあります。
たとえば、「彼を何度も問い詰めて、とうとう真実を口にした。ようやく語るに落ちた」というような使い方。「語るに落ちた」には、「うっかり話してしまった」という意味合いが含まれているため、強制的に引き出した内容は、「語るに落ちた」「語るに落ちる」とは言いません。
もうひとつ、ありがちな誤用として「語る価値がない」「つまらない」という意味で使われる場合が挙げられます。たとえば、「彼女が話していた情報は、すでに周知の事実で語るに落ちている」のようには使いません。また、「つまらない」という意味で「この番組は語るに落ちている」などと用いるのも誤用になります。
「語るに落ちる」の正しい使い方を例文で紹介
誤用されやすい「語るに落ちる」。間違った使い方を押さえたうえで、ここでは正しい使い方について、例文を交えながら紹介します。
1:「上司の長話には説得力が感じられず、語るに落ちると感じて興味を失った」
「語るに落ちる」にはネガティブなニュアンスが含まれています。この例文のように、自らペラペラと話した内容に説得力がなく、信頼を失ってしまうというようなケースで用いられがちです。
2:「語るに落ちた。彼女はごまかしたつもりだろうが、言葉の端に本心が透けて見える」
ごまかしやフォローのつもりで重ねた言葉が、かえって本当の気持ちを浮き彫りにさせてしまうことも。「語るに落ちる」は、小説のような表現になりがちですが、この例文のように冒頭に「語るに落ちた」と持ってくるだけで相手への信頼や好感がなくなったことを表現することができます。
3:「相手が語るに落ちるように、うまいこと話を誘導できるかが今回の成功のカギだ」
「語るに落ちる」は、「問い詰められると口を開かないが、勝手に話させるとうっかり秘密を白状してしまう」という意味の言葉。なかなか話してくれない相手に話をしてもらうためには、自分から話したくなる環境を作ることがポイントになります。
「語るに落ちる」の類語表現を紹介
「語るに落ちる」の例文を紹介してきましたが、「会話のなかでは少し使いにくい言葉だなぁ」と思った方も多いのではないでしょうか? そこで、ここでは「語るに落ちる」の類語表現について紹介します! ぜひ、会話の中で活かしてみてくださいね。
1:口走る
「無意識のうちに話してしまう」「調子に乗ってうっかり話してはならないことを言ってしまう」ことを「口走る(くちばしる)」と言います。
たとえば、「あまりに無遠慮な物言いに思わず悪態を口走ってしまった」のように使うことができますよ。また、会話のなかでも「秘密だったのに口走っちゃった~」など、カジュアルな雰囲気で使うことができます。
2:口を滑らす
「口を滑らす」とは、「うっかり話してはならないことを口に出してしまう」行為のこと。「問うに落ちず語るに落ちる」の「語るに落ちる」の部分が強調された言い方。「口を滑らせて相手の反感を買ってしまった」のようにネガティブなニュアンスで使われることも多いです。
また、「口が滑る」という言い方もありますね。会話のなかでは、「サプライズしようとおもっていたけど、口が滑った!」と言ったりします。
3:口を衝いて出る
「口を衝く」や「口を衝いて出る」という表現もあります。「次から次へと言葉が出てくる」というニュアンスです。「つく」は「突く」や「付く」などではなく「衝く」です。ちなみに、「衝く」は、「とがったものや棒状の下で強く推す」「急所や予想していないところを鋭く指摘する」「感覚や心を刺激する」などたくさんの意味を持っています。「彼女への思いが口を衝いて止まらない」というように、自然と言葉が出てくるさまを表します。
最後に
「語るに落ちる」とは、「問い詰められると用心してなかなか口を開かないが、勝手に話させるとうっかり秘密を白状してしまう」こと。自分の話を聞いてくれると、嬉しくなってどんどん饒舌になりがちです。そうなると、語るに落ちて言わなくてもいいことを言って周りからの信頼を損ねてしまう恐れがあります。それだけでなく、思ってもいないところで相手を傷つけてしまうことも。冷静かつ客観的でいることを意識し、語るに落ちないように気を付けていきたいですね。
TOP画像/(c) Adobe Stock