「柔らかい」「軟らかい」の違いとは?言葉の基礎知識をまとめて解説
「柔らかい」「軟らかい」の読み方は、どちらも「やわらかい」です。また、言葉の意味も、どちらも「ふんわりとした状態」などを指すものです。
これは、もともと「やわらかい」という同じ言葉に対して、複数の漢字をあてたものだといわれています。そのため読み方も意味も似ていて、放送の現場などでも使い分けに悩んでいるとか。
それでは「柔らかい」と「軟らかい」それぞれの意味や例文・使い方を確認していきましょう。あわせて、使い分ける際のポイントも紹介します。
柔らかいの意味
柔らかいとは、「ふんわりしていること」「しなやかで弾力性がある様子」「穏やかであるさま」を指す言葉です。「柔」という漢字自体、木の板が曲がっても折れずに元通りになろうとするさまを表します。
「柔」は「剛」の対義語であると理解することでも、意味をイメージしやすくなるでしょう。
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柔らかいの例文・使い方
柔らかいという漢字表記は、力を加えても元に戻るものに対して使われます。よく使われる表現は「柔らかい布」「柔らかい毛」「体が柔らかいこと」などです。
さらに、相手を包み込んだり受け止めたりするようなイメージでも使用されます。たとえば「発想が柔らかい」「柔らかな表情」「物腰が柔らか」「柔らかな光」「柔らかな手触り」などの表現です。
柔らかいを実際に使用した例文は以下のとおりです。
・お手柔らかにお願いします
・職場に持ってきたひざ掛けは柔らかく、触り心地がよいため気に入っている
・彼は物腰が柔らかくて紳士的で、多くの部下から慕われている

軟らかいの意味
一方で、軟らかいとは「手応えがない」「歯応えがない」「緊張や硬さがない」「弱々しい」ことを指す傾向にある言葉です。「軟」の漢字には、もともと「車がやわらかく動いて手ごたえがない」という意味があります。また、軟らかいの対義語は「硬い」です。
軟らかいの例文・使い方
軟らかいという漢字表記は、力を加えると簡単に変形して元に戻らないような、形がくずれやすいものを表す際によく用いられます。使われることが多い表現は、たとえば「軟らかく煮込んだ野菜」「軟らかい豆腐」「土質が軟らかい」などです。
タコやイカなどの軟体動物の体の性質を表す際にも、軟らかいを用い、さらに「堅苦しくない」という意味でも使用されます。たとえば「文章が軟らかい」「軟らかい内容の本」などの表現です。
軟らかいを実際に使用した例文は、以下のとおりです。
・忘年会の会場はあのお店にしよう。前に行ったときに食べた軟らかく煮込んだお肉が美味しかったからね
・お店のブログを書くときは、軟らかい文章にするように気をつけています
やわらか・い〔やはらかい〕【柔らかい/軟らかい】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[形][文]やはらか・し[ク]《形容動詞「やわらか」の形容詞化》
1 ふっくらとして堅くない。また、しなやかである。「―・い食べ物」「―・い毛布」「足腰が―・い」⇔かたい。
2 おだやかである。柔和である。「人当たりが―・い」「―・い物腰」「―・い光」
3 堅苦しくない。融通がきく。「―・い話」「頭が―・い」⇔かたい。
[派生]やわらかげ[形動]やわらかさ[名]やわらかみ[名]
柔らかいと軟らかいの違い・使い分けるポイント
柔らかいと軟らかいを使い分けるポイントは、以下を参考にしてみてください。
〈使用する対象〉
・柔らかい…力を加えても元に戻るもの
・軟らかい…力を加えると簡単に変形して元に戻らないもの、形がくずれやすいもの
〈対義語〉
・柔の対義語…剛
・軟の対義語…硬
また、調理前の素材のやわらかさは「柔」で、調理後のやわらかさは「軟」で表記するという考え方も。ただし、料理したものを表現する際に、軟らかいだと「あまり美味しそうじゃない」「柔らかいを使ったほうが美味しそう」というイメージを持つ人が多いようです。
一般的には、文脈や対象によってどちらを使うか決まりますが、最終的には書き手の感覚や表現意図に委ねられる場合もあります。これは、柔らかいと軟らかいどちらも似た意味を持っていることが理由と考えられます。
柔のほうが使用できる範囲が広いため、どうしても迷った場合には柔らかい、もしくはひらがなで書くとよいでしょう。
「柔らかい」「軟らかい」以外の2つの異字同訓の言葉
異字同訓の言葉は、今回紹介した柔らかいと軟らかい以外にもあります。たとえば「かたい」であれば「固い」「堅い」「硬い」、「まわり」であれば「回り」「周り」という漢字表記があります。
一般的に「かたい」と「まわり」の書き分けとされているポイントもあわせて確認しましょう。

1. かたい
「かたい」の異字同訓の言葉とそれぞれの意味は、以下のとおりです。
・固い…結びつきが強い。揺るがない
・堅い…中身が詰まっていて強い。確かである
・硬い…外力に強い。こわばっている
硬いは「軟らかい」の対義語です。ほかの2つには明確な対義語が少ないものの、固いは「緩い」の、堅いは「もろい」の反対の意味として考えるとイメージしやすいでしょう。
基本的な書き方を例に挙げると「頭がかたい」「かたい握手」「かたい信念」などは固いと表記します。また「かたい守り」「かた苦しい」「義理がたい」の漢字表記は堅いです。「かたい石」「かたさがほぐれる」「態度がかたい」は硬いを用います。
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2. まわり
「まわり」と読む言葉とその意味の例は、以下のとおりです。
・周り…あるものの外側の縁の部分。周辺
・回り…まわること。順に巡ること。ある地点を経由すること。遠くなる道を通ること。行き渡ること
基本的に、回転したり巡ったりなど、動的な動きを示したいときは回りを用いる傾向にあります。一方で、周囲を表したいときは周りを使います。これらを意識すれば、書き分けを判断しやすくなるでしょう。
柔らかい・軟らかいを理解しよう!
読み方も意味もほとんど同じである「やわらかい」は、使い分けがわかりにくい表現です。力を加えても元に戻るものには「柔らかい」、形がくずれやすいものには「軟らかい」を使うとよいでしょう。また、柔の対義語が「剛」、軟の対義語が「硬」であることも知っていると、漢字表記を判断しやすくなります。
この記事を参考に、「やわらかい」や関連表現である「かたい」「まわり」の使い分けの理解を深めましょう。
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