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2026.02.09

対立のその先へ「アウフヘーベン」の意味と使い方をヘーゲル哲学から紹介

「アウフヘーベン」とは、ドイツの哲学者ヘーゲルが考えた「弁証法(べんしょうほう)」という基本概念の一つです。「矛盾を含んだまま、次の段階に進む」というプロセスこそが「アウフヘーベン」です。この記事では、「アウフヘーベン」の意味や歴史、実生活での生かし方、「止揚」「揚棄」との違い、よくある疑問と回答を紹介します。

この記事のサマリー

・アウフヘーベンは、対立を統合し、高次へ導く哲学概念です。
・「矛盾を含んだまま、次の段階に進む」というプロセスこそが「アウフヘーベン」です。
・日本語では、「止揚」「揚棄」と訳されます。

「アウフヘーベン」という言葉を聞いたことはありますか? これはドイツの哲学用語です。「難しそう…」と感じるかもしれませんが、知っておくと日常の中でも役立つかもしれません。

この記事では、ヘーゲル哲学の基本概念として知られる「アウフヘーベン」の意味や成り立ち、そして実生活での使い方まで、辞書に基づき見ていきましょう。

「アウフヘーベン」とは? ヘーゲル哲学から生まれたキーワード

一見難解な「アウフヘーベン」も、意味と背景を知れば、自分の思考を整理したり、対立を乗り越える手がかりになります。最初に哲学的な定義を確認し、実生活へのヒントを探っていきましょう。

「アウフヘーベン」の意味と由来をわかりやすく解説

「アウフヘーベン」は、ドイツの哲学者ヘーゲルが考えた「弁証法(べんしょうほう)」の基本概念の一つです。考え方の基本はシンプル。辞書で確認してみましょう。

アウフヘーベン【ドイツAufheben】
ヘーゲル弁証法の基本概念の一。あるものを否定しつつも、より高次の統一の段階で生かし保存すること。止揚。揚棄。→アン‐ウント‐フュール‐ジッヒ →弁証法

引用:『デジタル大辞泉』(小学館)

例えば、意見が対立したとします。そのとき、どちらかを捨てるのではなく、両方のいい部分を残しながら、よりよい答えへと導いていく。

この「矛盾を含んだまま、次の段階に進む」というプロセスこそが、ヘーゲルの言う「アウフヘーベン」です。

参考:『デジタル大辞泉』、『独和大辞典』(ともに小学館)

ヘーゲルの弁証法における位置づけ

ヘーゲルによると、考えの中にある「矛盾」や「対立」は、より高いレベルに進むためのきっかけとしました。

弁証法は、「肯定(定立)」「反対(反定立)」「統合(総合)」という三段階で進む考え方ともいえますが、その中で「アウフヘーベン」とは、対立をまとめて、ひとつ上のレベルに引き上げる役割を果たしています。

つまり「アウフヘーベン」は、どちらかを否定するのではなく、「両方を取り入れた、新しい考え方を生み出す力」といえるでしょう。

また、ヘーゲルは「アン‐ウント‐フュール‐ジッヒ(“an und für sich”)」という言葉も使いながら、ものごとが自分の内面から始まり、他との関係の中で認識され、最後にはより高い段階へと進むという流れを示しています。

こうして見ると、「アウフヘーベン」とは、「ぶつかり合いを、よりいい形に変えるための道筋」を表す考え方であることが伝わってきますね。

参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(ともに小学館)

(c) Adobe Stock

実生活で活かす「アウフヘーベン」思考

「アウフヘーベン」は哲学的ですが、その本質は「否定しつつ、より高い段階で生かす」というもの。これは、日常にも通じる思考法です。

皆さんの身近にある「アウフヘーベン」を紹介します。

意見の対立を次のアイデアへ昇華させる

例えば、仕事で意見がぶつかったとき。相手を否定するのではなく、「自分とは違う考えにどんな意味があるのか?」と、一度その考えを受け止めてみることにより、より良いアイデアや新しい方向性が見えてくることがあるかもしれません。

こうした過程こそが、「否定しつつ、より高い段階で生かしていく」という、「アウフヘーベン」の考え方です。

矛盾する要求の中で新しいバランスを見つける

また、自分の中にある矛盾や葛藤も、見て見ぬふりをするのではなく、向き合って受け止めていくことで、思考や行動に深みが生まれます。

例えば、「仕事」と「家族」の両立に直面したとき、どちらか一方を切り捨てるのではなく、両方を尊重しながら新しいバランスを探すこともまた、「アウフヘーベン」といえるかもしれません。

この考え方は妥協ではなく、「矛盾や対立を通して一段高い答えを見つけようとする前向きな姿勢」といえるでしょう。

(c) Adobe Stock

「止揚」「揚棄」との違いは? 訳語の使い分け

「アウフヘーベン」には、「止揚(しよう)」や「揚棄(ようき)」といった訳語をあてることが多く、これらはいずれもヘーゲルの弁証法で大切な役割を持つ言葉です。簡単に、意味を紹介します。

訳語に共通する意味

「止揚」「揚棄」とは共に、「ひとつの考えを否定しつつも、その中にある意味を残しながら、より高いレベルへと進めていく」という考え方を表しています。

『日本国語大辞典』(小学館)には、「アウフヘーベン」の原義は、「拾い上げる」「保存する」「中止する」「破棄する」など、いくつかの異なる意味が含まれている、と説明しています。

そのため、日本語ではひとつの言葉で置き換えるのが難しく、このような言葉を用い、使い分けることがありました。

使い分け

「止揚」、「揚棄」は、どちらの訳語も「アウフヘーベン」と同義であることに変わりはありません。使い分けのポイントを紹介します。

止揚

哲学や思考の分野でよく使う言葉です。思考の発展や概念の整理など、抽象的なテーマで見かけることが多くあります。

揚棄

社会科学や政治思想など、より現実的な議論の中で使うことがあります。

これらの訳語は、意味の違いというより「どの分野で、どういう立場から語るか」によって選ぶことが多いようです。例えば、作家の小林多喜二や田中英光の作品でも、これらの訳語が登場し、当時の思想的背景の中で用いられてきました。

参考:『日本国語大辞典』、『デジタル大辞泉』(ともに小学館)

会議
(c) Adobe Stock

「アウフヘーベン」に関するFAQ

ここでは、「アウフヘーベン」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。

Q1. 「アウフヘーベン」は日常会話で使えますか?

A. はい。

一般的な会話ではあまり聞きなれないかもしれませんが、「対立する意見を取り入れて前向きに解決する」といった文脈で、「それってまさにアウフヘーベン的だね」と使うことも可能です。ただし、相手が意味を知っている場合に限られるでしょう。

Q2.「アウフヘーベン」の考え方はビジネスにも使えますか?

A. はい。

意見の対立を前向きにとらえ、どちらか一方を否定するのではなく、「いい点を生かして次のアイデアを生み出す」という考え方は、チームでの企画会議や問題解決においてとても役立ちます。

Q3. NGな使い方はありますか?

A. 意味を理解せずに、「なんとなく難しそう」「賢く見えそう」といった理由で乱用するのは避けましょう。相手に伝わらなければ逆効果になる可能性があります。

最後に

「アウフヘーベン」は、ただの難解な哲学用語ではありません。意見の対立や思考の行き詰まりに直面したとき、その矛盾を否定せず取り込みながら、新たな視点へと進む、そんな姿勢を教えてくれる言葉です。

何かに迷ったときには、ぜひ思い出してみてください。「矛盾を乗り越える力」は、すでにあなたの中にあるのかもしれません。

TOP・アイキャッチ画像/(c) Adobe Stock

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