「自虐風自慢」とは? 例文も解説

自虐風自慢とは、一見すると自虐しているようで実はさりげなく自慢している様子です。
自分を卑下しているように見せかけているので最初は謙虚に感じたとしても、「結局は自慢したいんだな」と聞き手に伝わってしまい、不快感を抱かれる例が少なくありません。
昨今では日常会話だけでなくSNSでもよく見られ、特にSNSでは相手を褒めさせる“仕掛け”として使われるケースも増えています。
♦︎自虐風自慢のよくある事例
実際に、よく見聞きする自虐風自慢のパターンをまとめました。
「昨日は残業で夜中まで働いちゃってさ、頼られるのも困るよね」
… 夜中まで働いたという自虐かと思いきや、実際には「仕事を任されるほど信頼されている」という自慢調。
「肌荒れ気味なのに、肌がきれいって褒められるの」
… 自分では肌荒れしていると思っているのに周囲からはきれいに見えているという、自慢的な本音が垣間見えるパターン。
「友達が少ないのに、誕生日にプレゼントがたくさん届いた」
… 自分を卑下するように見せて、実は「自分には人望がある」とアピール。
「自虐風自慢」をしてしまう心理とは?

自虐風自慢をする人の心理に迫ってみましょう。
自虐風自慢は意図的に行われている場合もあれば、無意識に口をついて出てしまうケースもあります。
♦︎謙虚な自分を装いたい
日本には「自慢は嫌われる」という文化が根強く、ストレートに「私は優秀です」「こんなにすごいことをしました」と言ってしまえば、角が立ちやすいと感じる人は少なくありません。
そこで“自虐”を混ぜることで「謙虚な自分」を演出し、聞き手に不快感を与えないようにする心理が働き、自虐風自慢を口にしてしまう場合も…。
♦︎承認欲求を満たしたい
誰しもが「認められたい」「褒められたい」という欲求を持っているもの。けれど堂々と「私すごいでしょ?」と言うのは恥ずかしいうえに嫌われるリスクも高い行動です。
そこで「私なんて全然ダメなんだけど…」と卑下しながらも実際には自慢になる内容を伝えて、相手から「いやいや、すごいよ!」と褒めてもらう仕掛けをしている心理も典型です。
♦︎劣等感や不安の裏返し
本当は自分に自信がない場合も、自虐風自慢をしがちです。
劣等感を抱えている人ほど、自分の強みを相手に遠回しに伝えたうえで「自分には価値がある」と再確認したくなる心理が強く、自虐風自慢が「弱さを隠すための防衛本能」になっているパターンも見受けられます。
自虐風自慢へのモヤモヤ・不快感の悩みを解決したい…

自虐風自慢は、真の意図が透けて見える発言なので聞いている側にモヤモヤや不快感を抱かせます。
そのため職場の同僚など身近な人が自虐風自慢好きだと、ストレスを生むきっかけにも…。
自虐風自慢にまつわる実例のお悩みから、解決策を模索します。
♦︎悩み1:「聞いていてモヤモヤするだけでなくイライラしてくる」
「先輩が、すぐに自虐風自慢をします。
卑下しているようで実は自慢しているから、聞いていると『結局は自慢したいんだな』と感じてしまいますし、返答にも困ります。
最初はモヤモヤ程度でしたが、最近では先輩が話すたびにイライラしてしまい、先輩のことが嫌いになりそうです」(33歳女性)
解決策>> 感情的な反応はしないでOK
感情的な反応はしないでOK!
あえて「へぇ、そうなんですね〜」と、軽く受け流してしまいましょう。
真剣に受け止めてしまうたびに不快感が増すので、“相手の承認欲求を満たすための一言”と割り切って、角の立たない相づちを選ぶと気持ちが軽くなります。
♦︎悩み2:「返答に困ってしまう」
「同期から『全然努力してないのに、上司から褒められちゃった』と言われて、褒めるべきか否定すべきか迷って、会話がぎこちなくなりました。
自虐風の自慢に間違った返しをすると、相手を助長させてしまうのも悩みの種です。どういう返しをするのが正解なのか、よくわかりません」(31歳女性)
解決策>> ユーモアを交えて返してみて
ユーモアを交えて返してみましょう。
今回の例であれば、たとえば「じゃあ私も努力しない作戦にしようかな(笑)」など、軽く冗談で返せば場が和みます。
相手を褒めすぎず、でも否定もしない“中立の返し”を意識すると、会話がスムーズに流れやすいでしょう。
♦︎悩み3:「知り合いのSNSを見るたびに疲れる」
「つながっている友人のSNSには『忙しすぎて倒れそう… でも仕事任されるのはありがたい』などの自虐風自慢投稿が目立ちます。
私はそれを見るたびに、自分と比較して落ち込んだり反感を抱いたりしてしまってストレス。
相手にしないほうがいいってわかっていますがSNSを開くと出てくるし、友人との関係を考えると完全にミュートにするのも違う気がするので、悩んでいます」(32歳女性)
解決策>> 見ないよう設定変更を
見るたびにモヤモヤを生むならば、投稿を無理に目に入れ続ける必要はありません。
SNSのフォローを外すのが難しいならば、せめて「ミュート」や「非表示」機能を上手に活用して。デジタル上の距離を取れれば無駄なストレスを回避できますし、気持ちが落ち着いたらミュートや非表示を解除する「一時的なもの」と割り切ってしまえば罪悪感も大きくなりません。
自虐風自慢は「認められたい」気持ちのあらわれ
自虐風自慢をしてしまう背景には「謙虚に見せたい思い」の裏に、承認欲求を満たしたい・劣等感を隠したい・他人より優れていると感じたいといった心理が隠れています。
つまり、その根底にあるのは「自分を認めてほしい」という気持ちでしょう。
身近に自虐風自慢をする人物がいても、相手を変えることはできません。円滑な人間関係をキープするには、彼らの承認欲求を傷つけないよう配慮をしたうえで、こちら側の受け止め方を変えて心理的負担にならない返しを身につけていきましょう。
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並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。