「鹿毛(かげ)」とは馬の毛色のこと
「鹿毛(かげ)」は、馬の毛色の一種です。「鹿(しか)の毛」と書くように、茶褐色のことを指しますが、明るい褐色から濃い褐色まで、色合いは個体によりさまざまといえるでしょう。
さらに、鹿毛の馬はたてがみや尾、足の下部などが黒いという特徴があります。栗色の「栗毛」と似た、馬の毛色に多いとされる一般的なタイプです。
か‐げ【鹿毛】
馬の毛色の名。体は鹿に似た褐色で、たてがみ・尾、足の下部などが黒い。
「鹿毛」の種類
毛色の種類には、色の深さで「青鹿毛(あおかげ)」や「黒鹿毛(くろかげ)」なども。いずれもサラブレッドの毛色として定義されている色です。
そもそもサラブレッドとは、競馬の主流とされる馬の品種のこと。イギリス在来種とアラブ種の交雑によってつくられた競走馬で、体質・体形ともにすぐれた馬とされています。おもに、連続8代にわたってサラブレッド同士を交配した馬を指すという見方もあるのだそう。
ここでは、その色として定義されている「青鹿毛」、「黒鹿毛」の特徴についてみていきましょう。

「青鹿毛(あおかげ)」
「青鹿毛」の馬は、ほぼ全体が黒色の毛でおおわれています。「鹿毛」とついているものの、褐色なのは目や鼻の周辺、腋(わき)のあたりのみのようです。
「ひばら」と呼ばれる胴体の一部分が褐色の青鹿毛も。いずれも褐色の度合いは薄く、見た目から黒馬のような印象を受けるケースが多いかもしれません。
「黒鹿毛(くろかげ)」
「黒鹿毛」は、全体が黒みがかった赤褐色の毛色のこと。なかには、黒馬と思えるほど黒が深い馬もいるようです。鹿毛のように褐色なのは、眼の周辺や腋、ひばら、下腹、内股など。
黒鹿毛の代表馬として挙げられるのが、数々の成績を残した「ナリタブライアン」です。色の濃い黒鹿毛のナリタブライアンは、鼻の上に視界を遮るためのシャドーロールを付けていたことから「シャドーロールの怪物」として親しまれました。
「鹿毛」以外にも! 馬の毛色をチェック
サラブレッドには、鹿毛や青鹿毛、黒鹿毛を含め全8種の毛色があるとされます。いずれも「公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」で認められたものです。
こちらでは毛色の特徴とともに、それぞれの代表馬などについてみていきましょう。

「芦毛(あしげ)」
「芦毛」の馬は、成長とともに色合いが変化します。ベースとなる原毛色は栗色や鹿毛、青毛などです。生まれたときは灰色や黒色、もしくは母馬と同じ色をしているそう。
成長を重ねると、毛色は徐々に白くなっていきます。年齢とともに、色素を作る細胞が減少するからです。度合いは個体によりさまざまですが、なかには純白に近い見た目に変化する馬も。
また、芦毛の馬は、両親どちらかが芦毛でないと生まれないといいます。「ゴルシ」の愛称で親しまれた芦毛の「ゴールドシップ」の母、「ポイントフラッグ」も同じ芦毛馬です。
ポイントフラッグの父「メジロマックイーン」も芦毛馬で、そのキャラクター性と勝負強さは、代々に渡り競馬ファンを魅了しました。
「青毛(あおげ)」
「青毛」の馬は、体全体が黒い毛でおおわれています。たてがみや前髪、尾なども黒色ですが、季節によって毛先が褐色に変化する点も特徴です。そのため、青鹿毛や黒鹿毛などに間違われやすいとか。
青毛の代表馬である「シーザリオ」は、わずか3歳でアメリカのレースを制した名馬です。故障により短い活動期間で引退するものの、6戦5勝の輝かしい成績を残した牝馬として知られています。
「栗毛(くりげ)」
「栗毛」は、明るい黄褐色の毛色です。鹿毛と異なり、足元の黒さは問いません。また、たてがみや前髪、尾の色は濃い色から淡い色まで多岐にわたるようです。
栗毛は鹿毛と並ぶ一般的な毛色で、多くの競走馬が存在します。2010年台に活躍した「オルフェーブル」もそのひとつです。
また、馬具工房から始まったブランド「エルメス」は、2024年に栗毛馬に着想を得た香水を発表しています。香りやボトルデザインに栗毛馬のエッセンスをちりばめた香水は、「ウード・アルザン」と名付けられました。
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「栃栗毛(とちくりげ)」
「栃栗毛」は、栗毛に比べ深みのある落ち着いた色合いです。栗毛より色合いが深いものの、青毛ほど真っ黒ではないといえます。
代表馬の「ノンコノユメ」は、愛らしい名前で競馬ファンに親しまれた牝馬です。栗毛の両親から生まれ、父と母の夢でもあったGI制覇を見事成し遂げました。
「白毛(しろげ)」
「白毛」は、サラブレッドのなかでも出現率が少ないといわれる毛色です。芦毛と違い、生まれたときに大半が白色の毛でおおわれています。
個体によっては、皮膚の一部に黒や茶などの斑点があることも。白毛の代表馬「ブチコ」も斑点があるタイプです。
白毛というと真っ白な馬をイメージしがちですが、ブチコには体全体に「ブチ」が入っています。母の「シラユキヒメ」も白毛ですが、こちらは全身真っ白な馬です。
同じくシラユキヒメから生まれた「ユキチャン」や「シロニイ」なども、白毛馬として知られる競走馬です。ブチコとシロニイは鹿毛の「キングカメハメハ」、ユキチャンは芦毛の「クロフネ」を父にもちます。
「鹿毛」はサラブレッドの毛色のひとつ
「鹿毛」は「かげ」と読み、馬の毛色のことです。サラブレッドの毛色には、鹿毛のほかに青毛や栗毛などがあります。
毛色の特徴は馬の大きな特徴であるとともに、魅力のひとつです。馬車をロゴにしている「エルメス」は、馬の毛色から着想を得た香水をリリースしています。
競走馬の世界には「ブチコ」や「シロニイ」など、見た目の特徴を名前の由来とする馬もいます。鹿毛をきっかけに毛色の違いを知り、知見を広げていきましょう。
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