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「贔屓の引き倒し」という言葉を聞いたことはありますか? 皮肉な場面で使われることの多い言葉ですが、「意味の理解は曖昧」という人も多いかもしれません。
そこで、この記事では、「贔屓の引き倒し」の意味や例文、関連する表現まで紐解いていきます。
「贔屓の引き倒し」とは? 基本の読み方と意味を確認
まずは「贔屓の引き倒し」の読み方と意味から確認していきましょう。

「贔屓の引き倒し」の読み方と意味
「贔屓の引き倒し」は、「ひいきのひきたおし」と読みます。辞書では次のように説明されています。
贔屓(ひいき)の引(ひ)き倒(たお)し
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
ひいきし過ぎて、かえってその人を不利にすること。
「贔屓の引き倒し」とは、「贔屓する(特定の人物を引き立てること)」という行為が、期待とは反し本人に不利益をもたらす結果になることを指しています。「贔屓の引き倒れ」ともいいますよ。
贔屓が度を越したときに、批判的に使われます。身内びいきや身勝手な支援が、かえって状況を悪化させるようなときに使われることが多いでしょう。
「贔屓の引き倒し」が表すもの
応援や肩入れといった好意的な行動も、度が過ぎると逆効果になることがあります。「贔屓の引き倒し」という言葉は、そうした状況を頭韻を踏んだかたちで表しています。
行きすぎた好意が、かえって相手の立場を悪くしてしまうこともある─そんな微妙な関係性への注意を含んだ表現だといえるでしょう。
「贔屓の引き倒し」の使い方を例文で確認
実際にどのような場面で使われるかを知ることで、言葉がより明確になります。具体的な例文とともに確認していきましょう。
新人を贔屓した上司の行動が、周囲の反感を招き、チーム全体の雰囲気を悪くしてしまった。まさに贔屓の引き倒しだ。
好意的な扱いが裏目に出て、組織全体の雰囲気が悪化したケースです。結果的に、贔屓された本人にも不利益となる構図が描かれています。

母親が長男にだけ特別なお小遣いをあげていたら、兄弟の関係がぎくしゃくし始めた。贔屓の引き倒しとはこのことだろう。
家庭内での贔屓が人間関係のバランスを崩す例です。「よかれと思って」が不和を生む点が際立ちます。
作家の最新作を絶賛するあまり、批判を封じるようなコメントばかりが目立った。それが読者離れを招いたのは、贔屓の引き倒しだったかもしれない。
評価が過度に偏ることで、第三者の信頼や興味を損ねてしまう構造を描いています。文化的な場面でも使えることがわかります。
「贔屓の引き倒し」の類語や言い換え表現とは?
類語や似た表現を知ることで、「贔屓の引き倒し」がより幅広い場面で使えるようになります。ここでは、意味の近い言葉をいくつか紹介します。
ごり押し
無理やり物事を進めることです。例えば「ごり押しタレント」という表現は、特定のタレントを芸能事務所が強く推すあまり、視聴者の反発を招く場合に使われます。行き過ぎた応援が、かえって逆効果になる様子を表しているといえるでしょう。
過保護
必要以上に世話や援助をしてしまうことです。応援や支援のつもりでも、相手の成長や自立を妨げる場合に用いられます。

過度な肩入れ
特定の人や立場に偏って力を貸すことを指します。相手が求めていなくても、関わりすぎることで、かえって負担や迷惑になる場合もあるでしょう。
「贔屓の引き倒し」の英語表現は?
英語では “kill … with kindness” という表現がよく使われます。直訳すると「親切で殺す」となりますが、親切や好意が度を越して、かえって相手のためにならない場合を指します。イギリス英語では、「子どもや動物を甘やかしすぎて駄目にする」という意味でも使われることがありますよ。
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
最後に
「贔屓の引き倒し」は、好意がもたらす思わぬ結果を表現したことわざです。応援の気持ちは大切なものですが、ときには冷静な距離感も必要かもしれませんね。
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