「注連縄」とは?
「注連縄」とは、「しめなわ」のことです。「標縄」や「七五三縄」と表記することもあります。
注連縄は神様を祭る道具のひとつで、藁(わら)でよった縄に、紙垂(しで)と呼ばれる白い紙がついています。
注連縄を飾る目的は、神様を祭る神聖な場所と、他の場所とを区別すること。一般家庭では、おもにお正月に玄関や神棚などに飾られます。
しめ‐なわ〔‐なは〕【注=連縄/▽標縄/七=五=三縄】
出典:小学館 デジタル大辞泉
神を祭る神聖な場所を他の場所と区別するために張る縄。また、新年の祝いなどのために家の入り口に張って悪気が家内に入らないようにしたもの。左捻 (よ) りのわらに適当な間隔を置いて紙四手 (かみしで) などを下げる。しめ。しりくめなわ。→四手 (しで)
「紙垂/四手(しで)」とは
注連縄についている紙垂は、目に見えない穢れ(けがれ)を祓い清めるといわれています。注連縄のほか、「玉串(たまぐし)」と呼ばれる小枝にも吊るされる紙です。
本来「しで」は「四手」と書き、古くは木の皮を原料とした「木綿(ゆう)」で作られていました。木綿の四手を「木綿四手(ゆうしで)」と呼ぶのに対し、紙で作った四手が「紙四手(かみしで)」です。
現在は紙の四手が一般的で、その多くが「紙垂(しで)」と呼ばれています。
紙垂の特徴は、稲妻のようにジグザグとした形をしていること。これは、雷には邪悪なものを追い払う力があると信じられていたからだといわれています。
紙垂の作り方や注連縄につける数、つけ方などは地域や神社で異なるのが一般的です。神社によっては、神主や巫女の手によって紙垂が作られていることもあります。
しで【四手/▽垂】
出典:小学館 デジタル大辞泉
《動詞「し(垂)ず」の連用形から。「四手」は当て字》
1 玉串 (たまぐし) や注連縄 (しめなわ) などにつけて垂らす紙。古くは木綿 (ゆう) を用いた。→〆の子
2 白熊 (はぐま) の毛で作った払子 (ほっす) に似たもの。槍の柄につけて槍印とする。
3 カバノキ科クマシデ属の落葉高木の総称。イヌシデ・アカシデ・クマシデなど。

「注連縄」の由来や歴史
注連縄の起源は、日本神話の「古事記」に書かれた「天岩戸隠れ」にあるといわれています。
姿を消し世に混乱を招いた太陽の神・天照大神(あまてらすおおみかみ)が、二度と岩戸へ戻ることのないよう、姿を見せた際に引っ張り出し、「尻久米縄(しりくめなわ)」を張ったのがその始まりだとか。
また、古くから注連縄は正月飾りとして、玄関や神棚、井戸、蔵などに飾られてきました。
現在は家庭で手作りする機会は少なくなった傾向が見られるものの、魔除けの意味をもつ神具として、その風習は受け継がれています。
「注連縄」の漢字の意味
注連縄の「注連(しめ)」には、領有の場所であることを示したり、出入りを禁止したりするための標識という意味があります。
また、中国には「注連(ちゅうれん)」と呼ばれる風習があり、「死者が再び家に入ることのないように」との目的で縄を水で清め、家の入口に張り巡らせていました。この風習が日本の「しめなわ」に似ていたことから、「注連縄」という字を用いるようになったという説もあるようです。
さらに、注連縄には「標縄」や「七五三縄」などの表記があります。「標縄」は、日本最古の歌集「万葉集」に登場する表記です。「七五三縄」の由来には諸説あり、太い縄から「しめの子」と呼ばれる束を7本、5本、3本垂らす作り方からきているというのが、そのひとつ。天文や暦で吉凶を占う「陰陽道」が関係するともいわれています。
「しめなわ」の漢字表記は「注連縄」が一般的です。ただし、そのほかにもいくつか種類があり、漢字により由来が異なることを押さえておきましょう。
「注連縄」の正しい飾り方
注連縄の飾り方には、いくつか決まりがあります。自宅や職場に神棚がある場合、お正月に注連縄を飾る機会が訪れるかもしれません。
ここからは、注連縄を飾る際の注意点について確認していきましょう。

「注連縄」を飾る向き
藁をよって作る注連縄は、「綯いはじめ(ないはじめ)」と呼ばれる始まり部分は太く、「綯い終わり(ないおわり)」と呼ばれる終わり部分に向かうほど細くなっています。
神道では、神様に向かって右側を上位、左側を下位とするのが一般的です。そのため、綯いはじめの太い部分が右側、綯い終わりの細い部分が左側にくるように飾るのが正しい向きとされています。
ただし、向きに関するルールは地域により違いがあることも。不安な場合は、近くの神社などに確認するとよいでしょう。
「注連縄」の種類
注連縄の種類は、大きく以下の2つにわかれます。
・牛蒡型(ごぼうがた)
・鼓胴型(こどうがた)
牛蒡型は、藁を一方向によった注連縄です。そのため、綯いはじめと綯い終わりで太さが異なります。神棚や玄関などには、右側に綯いはじめがくるように飾るのが基本でしょう。
対し、鼓胴型の注連縄は、中央部分が一番太くなっています。左右対称のため、向きを心配する必要がありません。
一般的には種類に決まりはなく、どちらを選んでも問題ないといわれています。
国内有数のスケール「出雲大社」の大しめ縄

国内有数の大きさを誇る注連縄として知られるのが、島根県・出雲大社の大しめ縄です。神楽殿の正面には、長さ約13m、重さ5.2tに及ぶ注連縄が掛けられています。
この大注連縄は、数年に一度新しいものへと取り替えられます。作成するのは、島根県飯南町の住民たちです。
注連縄づくりは、材料となる藁をとるための田植えから始まり、長い月日と大勢の人々の手によって完成を迎えます。近年は、2018年(平成30)に新しい注連縄が奉納されました。
また、出雲大社の分社となる茨城県の「常陸国出雲大社」にも、大しめ縄が飾られています。
こちらは長さ16m、重さ6tと、さらにスケールの大きな注連縄です。大しめ縄が飾られている拝殿内には、出雲の国を治めたとされる神様・大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)の大きな像が鎮座しています。
「注連縄」は新年の季語
「注連縄」は、新年の季語として俳句に用いられます。
季語とは、季節感を表す言葉のことです。俳句は五・七・五の17文字のなかに、季語を取り入れるのが原則とされています。

季語は、春夏秋冬の四季で区切って使用するのが一般的です。
・春の季語(2月~4月頃)
・夏の季語(5月~7月頃)
・秋の季語(8月~10月頃)
・冬の季語(11月~1月頃)
「注連縄」は、冬の間でも新年という限られた時期に適した季語です。ほかにも、新年の季語には以下のようなことばが挙げられます。
・初雀(はつすずめ)
・初水(はつみず)
・初御空(はつみそら)
・初鏡(はつかがみ)
・初湯(はつゆ)
いずれも新年にふさわしい、おめでたい言葉です。季語は俳句だけでなく手紙でも使用できるため、知識のひとつとして押さえておきましょう。
「注連縄」は新年にまつわるめでたい言葉
「注連縄」は、神様を祭る道具として古くから用いられてきました。主にお正月に神棚や玄関に飾ることから、新年の季語として知られています。
日本の歴史と深い関わりをもつ「注連縄」は、新年にまつわるめでたい言葉です。由来や漢字の意味などを理解し、風習も含め、日常生活に取り入れてみるのもよいでしょう。
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