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気持ちをうまく言葉にできずに、もどかしさを覚えた経験はありませんか? そんなとき、「歯痒い」という表現を用いれば、心の奥にある感情を説明できるかもしれません。ですが、「歯痒い」という言葉を耳にしたことはあっても、いざ意味をたずねられると、自信を持って説明するのは難しいかもしれませんね。
この記事では、「歯痒い」の意味や使い方を丁寧に解説しながら、似た表現との違いにも触れていきます。
「歯痒い」とは? 意味を正しく知って、気持ちを言葉にしよう
まずは「歯痒い」という言葉の読み方と意味から確認していきましょう。
「歯痒い」の読み方と意味
「歯痒い」は「はがゆい」と読みます。まずは、辞書に記されている内容を見てみましょう。
は‐がゆ・い【歯×痒い】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[形][文]はがゆ・し[ク]思いどおりにならなくて、いらだたしい。もどかしい。「―・くて見ていられない」
→焦(じ)れったい[用法]
[派生]はがゆがる[動ラ五]はがゆげ[形動]はがゆさ[名]
「歯痒い」は、物事が思いどおりに進まず、苛立ちや、もどかしさを感じるときに使われる言葉です。自分ではどうにもできない状況を前にしたときの心情を表しています。

「歯痒い気持ち」の正体とは?
「歯痒い気持ち」は、自分では手を出せない状況や、思いがうまく伝わらない場面で感じるものです。強い怒りや悲しみとは少し違い、じれったさやもどかしさが入りまじった、複雑な感情ともいえるでしょう。
例えば、大切な人が奮闘するのをそばで見守るしかできない場面などは、「歯痒い」という言葉がしっくりくるでしょう。他人の行為に対して、「こうやったら、いいのに」ともどかしく思う気持ちにも当てはまります。
参考:『角川類語新辞典』(小学館)
「歯痒い」の使い方を具体的な例文とともに紹介
「歯痒い」という言葉は、どんな場面で使えるのでしょうか? 身近な例文を通して、その使いどころや気持ちの動きを見ていきましょう。
「後輩のプレゼンを見ていて、内容は悪くないのに伝え方で損をしているのが歯痒かった」
この例文では、自分が直接手を貸せない状況で、相手の惜しい部分にもどかしさを感じる様子が描かれています。「応援したいけれど、口を出すわけにもいかない」、「もう少し工夫すれば伝わるのに…」と感じたときに、「歯痒い」という言葉がぴったり当てはまります。
「面接の場面で、言いたいことがうまく言葉にできず、そんな自分に歯痒さを感じた」
ここでは、自分自身のふるまいに対して「歯痒い」という言葉を使っています。緊張や焦りのせいで、頭にあったことをうまく言葉にできず、「もっと伝えられたはずなのに」という思いが後から湧いてくることはありますよね。
怒っているわけではない。ただ、もう少し何かできたはず… という、じれったさや悔しさがにじむときに、「歯痒い」という言葉が当てはまります。

「歯痒い」の類語や言い換え表現は?
「歯痒い」と同じように、思うようにならない場面で使える言葉には、「もどかしい」や「じれったい」があります。それぞれ紹介していきましょう。
「もどかしい」
「もどかしい」は、かつて「気にくわない」、「不快だ」といった意味で使われていました。今では「思いどおりにならず、イライラする」、「焦るような気持ち」という意味で使われることが多いでしょう。
例えば、自分の気持ちが相手にうまく伝わらない場面や、思うように進まないときなどに、「もどかしい」と表現されることがあります。
「じれったい」
「じれったい」は、物事が進まないことに対する苛立ちや焦りを表します。「もう少し早く進んでほしい」、「待ちきれない」と感じるときに、自然と口をついて出てくる表現です。
「歯痒い」は英語でどう表す?
英語でまったく同じ言葉はありませんが、「なんとかしたいけれど、できない」、「進めたいのに、進まない」といった場面に使われる表現があります。

“frustrating”
“frustrating”は、「思いどおりにならずにイライラさせる」「がっかりさせる」という意味を持つ形容詞です。
例文:“His silence was frustrating.”
(彼の沈黙には、歯痒さを感じた)
相手に聞きたいことがあるのに伝えてくれない、状況が動かず気持ちが宙ぶらりんになる、そんな場面にぴったりです。
「フラストレーションを与える」、「くじけさせる」といった意味もあり、内心の焦れた気持ちを表現できます。
“irritating”
“irritating”は、「苛立たせる」「不快にさせる」という意味を持ちます。使い方によっては、怒りやストレスのニュアンスが前に出るため、「歯痒い」とは少し意味が離れる場合もあるでしょう。
例文:“His attitude was irritating.”
(彼の態度が歯痒かった)
“irritating”は、相手に対する苛立ちが強調されやすいため、軽い不満を表したい場面では“frustrating”の方が使いやすいかもしれません。
参考:『ビジネス技術実用英語大辞典V6』、『プログレッシブ和英中辞典』
最後に
「歯痒い」という言葉は、思いどおりにならない場面で感じる、微妙な感情を表現できる言葉です。自分が動けないときのじれったさや、うまく伝えられなかったもどかしさ、そんな気持を表します。日常の中で自然に使えるように、意味を理解しておきたいですね。
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