「探す」と「捜す」、どちらも「さがす」と読み、似たように思える言葉ですが、実は微妙なニュアンスの違いがあります。ふだん何気なく使っている言葉だからこそ、違いを知っておくと表現力がぐっと高まります。
この記事では、「探す」と「捜す」の意味や使い分けをわかりやすく紹介していきます。
「探す」と「捜す」とは? 意味を確認
まずは、「探す」と「捜す」の基本的な意味を整理していきましょう。ふたつの言葉は似ていますが、ニュアンスに少し違いがあります。その違いを知っておくと、自然な言葉選びに役立ちます。
「探す」の意味
最初に、「探す」の意味を辞書で確認してみましょう。
さが・す【捜す/探す】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[動サ五(四)]見つけ出そうとして方々を見たり、歩きまわったり、人に聞いたりする。尋ね求める。「職を―・す」「落とし主を―・す」「あらを―・す」
[可能]さがせる
[補説]ふつう、見えなくなったものをさがす場合には「捜」、欲しいものをさがす場合には「探」を用いる。
「探す」は、まだ手に入れていないものや知らないことを見つけようとする行動を指します。例えば、仕事を探す、新しい趣味を探す、情報を探すといった場面で使われます。具体的なものに限らず、目に見えないものを求めるときにも用いられるのが特徴です。
また、漢字の「探」は、「わからない事柄を奥深くまで得ようとする」という意味を持っています。「探検」「探求」「探索」など、未知のものに迫ろうとするイメージが込められていますよ。

「捜す」の意味
次に、「捜す」の意味を見てみましょう。
「捜す」は、失くしてしまったものや、行方不明の人などを、見えなくなったものをさがす動作を表します。焦りや切迫感を伴う場面で使われることが多く、警察が行う「捜査」の「捜」と同じ字ですね。
漢字の「捜」は、「人や物を求めてすみずみまで見つけようとする」という意味を持ちます。「捜査」「捜索」「博捜」など、徹底して探し求める様子が感じられる言葉ですね。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「探す」と「捜す」の使い分けは? 場面別に解説
意味の違いを知ったら、次は使い分け方を見ていきましょう。言葉を状況に合わせて選べるようになると、文章に自然な深みが生まれます。ただし、「捜す」を使う場面で、「探す」を使っても誤りではありません。
日常的な場面での違い(例文付き)
「探す」は、旅先でお土産を探したりするときに使われます。「いいカフェを探している」というように、まだ見ぬものを求める場面にもなじみますね。
一方で、「捜す」は、例えば失くした財布を捜すような状況で使われます。
人を対象にするときの違い(例文付き)
人を探す場面でも、ニュアンスの違いがはっきりと現れます。
「探す」は、「結婚相手を探す」というように、今はいない存在を探すときに使われます。一方、「捜す」は、例えば迷子になった子どもを捜すような場面で使われます。
「探す」「捜す」の類語・言い換え表現
ここでは、場面に応じて使い分けられる類語や言い換え表現を紹介していきます。

探索
「探索」は、「探る」とも近い言葉で、未知の事柄を探り調べることを意味します。「秘境を探索する」、「子どもが草むらを探索する」など、少し探求心を感じさせる場面で使われます。
捜索
「捜索」は、「捜る」と同じく、行方不明の人や物を捜し求める行動を指します。「犯人の捜索」、「遭難者の捜索」といったように、緊急性や切迫感をともなう場面で使われることが多い表現です。
「探す」「捜す」を英語でどう表す?
日本語での微妙な違いを意識できると、英語に置き換えるときもより自然な表現が選べるようになります。ここでは、それぞれに近いニュアンスをもつ英単語を紹介していきます。

look for
“look for”は、「探す」「捜す」のどちらにも使える、最も一般的な表現です。ものを探したり、人を探したりと、日常会話でも幅広く活躍する言葉です。
例文:I’m looking for my keys. (鍵を捜しています。)
search for
“search for”は、対象をより慎重に、または徹底的に探すニュアンスを含んだ表現です。警察の捜査や、資料をくまなく調べるといった場面で使われることが多いでしょう。
例文:The police are searching for the missing person. (警察は行方不明者を捜索しています。)
最後に
「探す」と「捜す」は、似ているようで、使う状況が微妙に異なります。日常のなかで何気なく使う言葉だからこそ、ほんの少し意識を向けてみるのも楽しいですね。
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